熊本の未来をつくる経営者
働きやすさの追求と挑戦できる人事制度を整備し、次世代の経営人材を育成するハイコムウォーターの甲斐社長
甲斐文祥(かいふみよし):ハイコムウォーター株式会社 代表取締役社長。熊本市出身。明治大学政治経済学部卒業後、1996年にNTT西日本入社。コンシューマー向け営業・法人営業を経験。99年に㈱ハイコム入社。携帯ショップ、通信法人営業、不動産営業など現場経験を経て、06年に副社長就任。ハイコムモバイル株式会社・ハイコムビジネスサポート株式会社・グルービズ株式会社の代表取締役社長も兼務。
宅配水(天然水)生産量西日本トップシェア。おいしさと徹底した品質管理が支持される南阿蘇の天然水。
ココクマ編集部(以下、編集部):2021年11月にコールセンターの移転拡張など、業績も順調ですね。
甲斐文祥社長(以下、甲斐社長):お陰様で宅配水事業のユーザー数は年々増えています。20万顧客を突破し弊社南阿蘇村工場からの出荷する12ℓの宅配水が年間500万本になっています。この数字は宅配水業界(天然水)で西日本トップシェアとなります。
編集部:すごいですね。ここまで伸びた要因はどんなところがあったのでしょうか?
甲斐社長:やはり水の品質ですね。阿蘇外輪山のふもと地下100mより採水した天然水を非加熱製法にこだわっていて生産しています。加熱してしまうと天然水独自の味わいはなくなってしまいますが、非加熱のままでは品質管理が難しい。当社では徹底的に品質管理、検査体制を整えており、美味しさと安全面の両方を満たしていることがお客様の支持をいただけている要因だと思っています。また、商品の良さに加えて全国の販売店、パートナーなどの販路網が築けているのも順調にユーザーが増えてきた要因として挙げられるかなと思います。
編集部:今後の生産計画は?
甲斐社長:今のペースだと2,3年後には現有工場で生産量が限界に達する見込みです。そこで南阿蘇に次ぐ生産拠点の検討を開始しています。候補としては同じ九州内で災害リスクや物流面の利便性なども考慮に入れて、これまで同様よい水を生産できる場所を見つけていきたいと考えています。
編集部:ウォーターサーバーの設置も一般的になってきたのでしょうか?
甲斐社長:東日本大震災の際に家庭内にウォーターサーバーを置くことが注目され、一気に利用者数が増えたと思います。そこから徐々に普及が延び続けており、現在の世帯普及率は8.3%くらいと言われています。宅配水業界としてはさらにこれを15%、20%と伸ばしていきたいと啓発に取り組んでいるところです。
働きやすい職場環境の整備とともにリーダー教育に注力
編集部:コールセンター事業はいかがですか?
甲斐社長:宅配水のカスタマーセンターを立上げて6期目となりました。現在、110名体制で全国のお客様からのご要望をお受けしています。
コールセンターは2021年11月に下通から新屋敷の新拠点に移転しました。オフィスや休憩室が綺麗になるなど心地よく、働きやすい職場環境になってきたと思っています。オフィス自体も広くなり、研修のためのスペースもしっかり取れるようになりました。移転して3か月後の2月からは、さっそく新たな研修カリキュラムをスタートしています。入社時の研修は、実務以外にもキャリア研修なども増やしており、働く目的や意義などを考える機会も増え、取り組み姿勢など、良い効果が出始めているのかなと思っています。
編集部:一般的にコールセンターは定着がよくないと聞きますが?
甲斐社長: そうですね、当社では定着率向上の社内プロジェクトも進めて課題解決に取り組んできました。様々な施策を実施してきましたので、徐々に働きやすい職場環境ができてきているかなと思っています。
具体的には、入社直後の導入研修を手厚く行っています。ストレスケアやリーダーに対してスタッフをサポートするための研修も行っています。上司との人間関係が良好で、スタッフを適切にサポートできることがリーダーに求められる姿だと思いますので、リーダー育成にも力を入れているところです。
これはハイコムグループ全体に共通するリーダー像でもあります。数年前からリーダーのあるべき姿、果たすべき責任を定め、評価制度の評価項目とも連動させています。また、評価するだけでなく、不足している知識やスキルを身に着けてもらうための研修を準備し成長に向けた支援も行っています。
研修以外でも処遇の改善を行いました。業界平均以上の待遇を提示したいと考え、2022年10月に全社員9,000円のベースアップを行いました。コールセンターの席にまだ余裕がありますので、今期は20名ほど増員したいと考えています。
編集部:人への投資に力を入れてらっしゃるのですね。
甲斐社長:すべてがそこに行きつくと考えています。社員が同じ方向を向いて話をすることが基盤になりますので、そこに対して投資は惜しみません。コールセンター業界は他の業界と比較して離職が多い傾向がありますが、当社がよい状態で事業を行えているのは現場の関係性がよいおかげだと考えているところです。
事業を経験することで人が育つ。新規事業を任せられる人材を育成。
編集部:ウェブ関連の新規事業が立ち上がりましたね。
甲斐社長:新規事業としては、21年にグルービズ株式会社を立上げてウェブソリューション事業を開始しました。ピックトップという商品名でMEOというサービスにまずは取り組んでいます。飲食店や不動産、塾、美容室など、地域に密着して店舗来店型ビジネスを展開する企業を対象に、GoogleMAPの口コミ対策や予約管理などのマーケティング支援を行う事業です。
当社はこれまで直接人と人とが対面してコミュニケーションをする分野で事業を展開してきましたが、これら既存の事業とWEB系のソリューションを連携させることで、よりよいサービスの提供につなげたり、社内のDX化を推進していきたいと考えています。
また、グループで多様な事業を行っているため、クロスセル、アップセルにもつなげていくべく社内のデータ管理体制も強化しているところです。
編集部:どのような経緯でスタートされたのですか?
甲斐社長:実はグルービズは社員からの発案でスタートした会社なのです。コールセンター事業を行っているハイコムビジネスサポートのセンター長が、後進も育ってきたので以前より興味のあったWEBサービスをやりたいという申し出がありまして。社内で検討し、投資が決定したという経緯です。
編集部:社員の発案なのですね。まずはやってみようと…。
甲斐社長:本人も経験のない分野ではありますが、当社では事業を経験することで人は育つと考えています。そのため挑戦は大歓迎なのです。もちろん期限を設けて収益化にこだわっていくつもりですが、試行錯誤しながら、ノウハウをためて将来的にグループに還元してもらいたいという期待もありますし、グループの経営を任せられる経営人材を育成する場だとも捉えていますので、必要な投資だと考えているところです。
編集部:今後のビジョンを教えてください。
甲斐社長:現在グループ会社含め7社ありますが、さらに増えていく予定ですので、ゆくゆくはその中の1社を今の社員が社長を務めてくれるという体制になっていくことが理想です。それが実現できるよう人材育成に力を入れていきたいと思います。