熊本の未来をつくる経営者
熊本の馬油文化を世界へ! 原料から一貫製造でこだわりのものづくりを続ける 肌美和株式会社の小柳社長
小柳茂寛(こやなぎしげひろ):肌美和株式会社・代表取締役社長。福岡県出身。大学卒業後、熊本市内の税理士事務所を経て2011年肌美和株式会社入社。2016年8月社長就任。
本物を本場熊本から
ココクマ編集部(以下、編集部):事業内容について教えてください。
小柳茂寛社長(以下、小柳社長):馬油(マーユ)・馬プラセンタを原料としたスキンケアやヘアケア商品、健康食品の製造・販売を展開しております。「安心・安全なものを、自分たちの手で作り販売したい」という想いから、現会長が新たに馬油の製造・販売事業を1982年にスタートさせ現在に至ります。選び抜いた素材を自社で原料に加工し、商品化まで一貫して行っているのが当社の特徴です。肌や髪に直接つけるものだからこそ、原料や製造方法にこだわり、本物の品質を追求しています。
商品ラインナップとしては、ベーシックな馬油商品でお土産品としても人気の「肌馬油シリーズ」、様々なお肌のお悩みにお応えするスキンケアシリーズ「きみわシリーズ」「マーユプラセンシリーズ」「マーユプレシャスシリーズ」、選りすぐりの馬油オイルのみを使用した完全受注生産商品「プレミアムマーユオイル」のほか、プラセンタドリンクやサプリメントなど・・・。また、OEM生産も多く手掛けています。ソラシドエアでの機内販売限定商品の開発・製造等も弊社が関わっています。
編集部:なぜ馬油を手掛けていらっしゃるのでしょうか?
小柳社長:元来馬刺しを食べる文化のある熊本では、肉屋で馬油も販売しており、切り傷や肌荒れに塗るなど民間薬として広く使われていました。馬油特有の匂いやべたつきなどがあり、県外での認知が広まりませんでしたが、熊本の文化である馬油をより良い形で全国に広めていこうと、効能はそのままに、匂いやべたつきを少なくする当社独自の製法を確立。その後東京の百貨店等でも扱って頂ける商品となりました。
2011年からは馬プラセンタの展開もスタート。プラセンタとは母親と胎児を繋ぐ「胎盤」のことで、主に細胞を活性化させる効果があり、何千年も前から漢方として使われてきました。一般的な健康食品に使用される安価な豚プラセンタに比べ、馬プラセンタはペプチドやアミノ酸が豊富に含まれ、プラセンタの中では最高級とされています。
この馬プラセンタを化粧品だけではなく、サプリメントとしても使用して頂くことで、体の内側と外側の双方から、お客様の肌トラブルやお悩みの解決に役立つことができればと考えており、併せて当社では研究機関と共同で馬プラセンタの健康や美容に関する効果検証等も行っています。
妥協を許さない素材選び
編集部:原料にこだわっていらっしゃいますが、当初からその仕入れルートはあったのですか?
小柳社長:馬油製品の素材は、地元の熊本で馬肉専門牧場から独自契約で仕入れています。一般的な馬油は、どこのどんな馬のものかわからない原料を、製油メーカーがまとめて精製します。一方弊社では、新鮮で質の高い馬脂を仕入れることはもちろんのこと、馬脂の中でも脂質がとても良い脂のみを厳選。もともとは食用として厳しい管理の中で飼育されているものを原料にしています。
プラセンタは、北海道の国産サラブレッドと県内国産馬の胎盤を使用しています。生育環境と健康管理が行き届いているため安全安心です。
質の担保を前提に原料素材を仕入れていますが、さらに自社でも品質管理を行い、基準に満たないものは処分しています。お客様の体に直接使用するものだからこそ、素材に関しては一切の妥協を許さず、最高の品質と鮮度にこだわっています。
編集部:製造方法にもこだわりがあるとのことですが・・・
小柳社長:馬油は基本手づくりです。原料の選別は人の目や嗅覚によって行い、蒸気によって低温で溶かし、不純物を取り除くろ過作業まで手作業で丁寧に。さらに熟成させる期間を長く設け、ゆっくりとクリームとオイルに分離させます。手間と時間をかけることで、高品質の製品づくりにつながっています。
プラセンタエキスの素材である胎盤は、栄養豊富な有機質のものなので、高度な技術を用い、微生物からの汚染を防ぐ工夫を行っています。酵素分解処理製法によってエキス化し、さらに凍結乾燥することでエキスを粉末にします。原料づくりは料理と同じ。素材のパフォーマンスを最大に引き出す製法を日々研究しています。
編集部:自社製品が多いのですか?
小柳社長:精製した原料自体の供給は行っていませんが、実は売上の多くはOEM生産なのです。主に専門店や通販会社のコンセプトに合わせて受託生産を行ってきました。
でも、中小企業ではあるもののメーカーですから、自社ブランド商品は作っています。自社にしか作れないものを作ろうと、日々研究・開発を重ね、生産者から消費者まで一貫して繋がることのできる安心・安全な商品づくりを続けてきたのです。
開発における想いやストーリーを伝える
編集部:今後のビジョンについて教えてください。
小柳社長:「一家に一つ、肌美和の馬油」と言って頂けるような、熊本を代表する商品をつくっていきたいですね。そして名実ともに世界一の馬油・馬プラセンタメーカーを目指します。商品の良さは世界一だと自負していますが、残念ながらまだ認知されていない現状があります。最近では流通チャネルの多様化に伴い、商流も変化しています。そのため、販売の仕方やプロモーションの仕方一つにしても、私たちの馬油・馬プラセンタのブランディングが非常に重要です。消費者に対し分かりやすくエビデンスを開示しながら、商品の背景にある想いや商品が生まれるまでのストーリーなどを一緒に伝えていかなければ当社の良さが伝わりません。
当社では素材や原料にこだわり、製造まで一貫しておこなっている技術力を強みとし「想いをカタチにする商品づくり」によって付加価値を付けることができます。ただ物を作って売る「モノ売り」ではなく、様々な方の想いを大切に形にし、販売する「コト売り」を今後は大事にしていく必要があります。
現在、積極的におこなっている取り組みは国内の異業種とのコラボレーションです。一つはロアッソ熊本様とパートナー契約を結び、『肌美和×ロアッソ熊本』コラボ商品を開発しました。ロアッソ熊本のエンブレムを使用した特別仕様の馬油クリームや化粧水、アルコールミストなどホームゲーム会場で販売しております。
また、御船町在住の方々と一緒にスキンケアブランド『Epona エポナ』を立ち上げました。妊娠・出産を経験した3名の女性とともに、妊娠中の女性の想いや声をカタチにして生まれたものが、高品質のマタニティ美容クリーム『Epona エポナ』になります。妊娠中でも安心して使用できる鮮度と品質を追求した原材料と、手づくりの精神を大切にし、自社工場でつくっています。御船町で母子手帳を交付された方には、御船町役場からプレゼントされますし、最近では県内の産婦人科にも置いていただいています。
また、ユニバーサルデザインを考えた商品開発も行っています。これは、17歳の時に不慮の事故で手足が不自由になり車いす生活をされている高橋しょうこさん(山都町出身)との出会いから生まれたプロジェクトになります。高橋しょうこさんは心のバリアフリーを広める「くまバリ(熊本バリアフリープロジェクト)」という活動もされていますが、「化粧品やスキンケアに興味があるものの、使用できるものが限られている」という悩みを聞くことがありました。そのため、彼女でも使用できるものを当社で一緒に作ってカタチにしていくことで、ユニバーサルデザインの取り組みやくまバリの活動の発信にもつながるのではないかと考えました。まだ開発段階ではありますが今回のプロジェクトを通して、商品に付加価値を付け、利用いただく方の想いを形にすることが私たちメーカーの役割でもあると改めて気付かされました。
多くの人が無理なく使えるデザインや品質で商品をつくることは、私たちが大事にしていきたい「コト売り」でもあり、SDGsの考え方にも共通しています。今後もこのように、消費者の方と一緒に良いものをつくる取り組みを続け、私たちの想いやこだわりを直接お客様へ届けてしていきたいと思います。
編集部:求める人材について教えてください。
小柳社長:設立39年目を迎えた当社ですが、組織としてはまだまだベンチャー企業と同じです。今から入社する人は、会社を自分たちで作っていける環境があります。ですから求める人材としては、貪欲にチャレンジし、能動的に仕事に取り組む人がいいですね。
私たちは社員の成長が会社の成長と考えます。そのため社員教育に時間とお金は惜しみませんし、社員それぞれのやる気と想いを大切にしています。
編集部:休みの日の過ごし方を教えてください。
小柳社長:家族と過ごすことが多いですね。可愛い盛りの小さい子供が2人いますので、休日はなるべく一緒に過ごしたいと思っています。御船町の恐竜博物館は子どもたちが好きでよく行きますね。吉無田高原も気持ちよくて、子どもたちものびのびと遊べるのでお勧めです。
※写真撮影時のみマスクを外しています。