熊本の未来をつくる経営者
常識を打ち破り 住宅ビジネスにイノベーションを起こす 株式会社LibWorkの瀬口社長
瀬口力(せぐちちから):株式会社LibWork(リブワーク)・代表取締役社長。山鹿市出身。熊本大学大学院法学研究科修了。1999年、同院在学中に同社の前身㈱瀬口工務店入社。翌年現職就任。
東証マザーズへの上場は全国展開への一里塚
ココクマ編集部(以下、編集部)東証マザーズへの上場で、変化したことはありますか?
瀬口力社長(以下、瀬口社長) 正直、全く変わりましたね。これまでも「全国展開」や「インターネットで家を売る」と発信し続けてきましたが、熊本の小さな住宅メーカーの想いは中々伝わりませんでした。東証マザーズに上場して、ようやく私たちの本気度が浸透してきたように感じています。知名度や信頼度が上がったことにより、これまで接点のなかった企業からお声がけいただき、事業提携などもスムーズに進められるようになりましたし、機関投資家との関わりも増えました。更には、資金調達面です。これまでもほぼ無借金経営で強固な財務体質をつくり上げてきましたが、キャッシュフローがよくなることでチャレンジの幅が拡がります。全国展開を視野に入れていること、ITを駆使した新商品や新規事業への取り組みなどを評価され、株価も着実に上昇しています。これまで住宅ビジネスでは考えられなかったような面白い事業展開がやっとできる!と、私自身わくわくしています。
編集部 まさに第三創業期ですね。
瀬口社長 本当にそうですね。私は当社の前身である㈱瀬口工務店を大学院在学中に父から引き継ぎました。社名を㈱エスケーホームへ変更し住宅メーカーへとシフトさせ、2015年に福岡証券取引所へ上場したところで第二創業期がスタートしました。当時は「インターネットで家が売れるわけない」と言われていましたが、時代の変化と共に、ますますインターネットの力が大きくなってきましたよね。そして2018年に住まいだけでなく暮らしに関すること全般に取り組む「生活創造企業」を目指すべく現在の㈱LibWorkへと社名を変更し、昨年東証マザーズへ上場しました。住宅メーカーで上場している企業は日本中で数十社もない中、当社が本気で全国展開を目指していく意思表示ができたと思います。
経営者の役目は企業価値を上げることだと思うのです。当社のコアコンピタンスはネット集客のノウハウです。これまで戸建て住宅販売に活用してきた経験値を、不動産投資や暮らしに関わる様々な分野でも活かせるのではないかと考えています。5G時代の到来に向け、SNSの活用や動画チャンネルの開設や動画配信にも力を入れていきます。「WEBマーケティングをコアコンピタンスとする住宅テック企業」として、最先端を走り続けていくことが企業価値を高めることに繋がると考えています。
住宅業界にイノベーションを起こす。
編集部 新たに経営ビジョン「VISION 2030」を掲げられましたね。
瀬口社長 「暮らしを変える、世界を変える、未来をつくる。」というスローガンのもと、「世界の人々一人一人に価値ある暮らしを提供する」というミッション実現に取組んできました。2019 年6月の東証マザーズ上場を機に、中長期の会社の展望を示す必要があると考え、2030年までのビジョンを策定しました。
編集部 具体的な内容は?
瀬口社長 ポイントは4つです。1つ目は「毎年売上20%成長を基本とした安定的・永続的な成長を目指す。」ということです。毎年20%の成長率は消して低い数字ではありません。急成長というよりは焦らずじっくりと10年後に500億円を目指すイメージです。店舗数に関しては2030年6月期までに40店舗、将来的には100店舗を目指します。エリア展開は九州・沖縄から西日本、東日本、そして全国へ広げていきたいと考えています。
またITの新商品のリリースも継続して取り組んでいきます。以前より開設していた土地検索ポータルサイト「e土地net」に加えて、施行事例からのプランニングを可能にした「e注文住宅net」という写真集のような閲覧サイトを昨年10月にリリースしました。今後は設計事務所の建築家と建て主のマッチングサイトの開発など、年2~3サイト開設していきます。
加えて、これまで見逃してきたビジネスチャンスも積極的に掴みに行きたいと考えています。見方や切り口を変えると、ビジネスはもっと面白くなると思うのです。例えば、山鹿市にも問題となっている空き家が数多くあるのですが、この古民家を当社でリノベーションして、日本古来の家屋に興味を持つインバウンド層をターゲットに民泊事業をするとか…。これからの時代・価値観に合った事業を展開し、結果として私たちの事業が地方創生・地域活性化・空き家対策などに繋がればと思っています。また、エコロジータウンやゼロエネタウンなどのコンセプト別の分譲宅地開発。 新規事業として戸建て民泊の開発・住宅関連事業(保険・住宅ローン)への着手も検討しています。
2つ目は「住宅版SAPモデル・垂直統合モデルの確立」です。これまで住宅ビジネスの集客では、ネット集客というイノベーションを起こしてきました。しかし製造の分野、特に木造住宅は何千年前から大きな飛躍がないのです。伝統芸能で素晴らしいことですが、今後職人も減少していく中で、危機感が大きい分野です。職人の内製化と合わせて、将来的には工法の開発も進めていきたいと考えています。次世代型の工法を確立し、製造の分野でもイノベーションを起こしていきたいと考えています。
3つ目は「住宅ビジネスにイノベーションを起こす」です。これまでは主に住宅というハードを作り出してきましたが、今後はソフトの提供に力を入れていきたいと考えています。タレントのスザンヌさんと共同開発した住宅「COQUETTE」もその一つで、単なる住宅に留まらず「スザンヌさんの暮らし方」というライフスタイルをお客様に提供しています。今後もインテリアメーカーやアパレルメーカーなど、業界問わず知見を出し合いながら商品開発を進めていきたいですね。
4つ目は「全員一丸経営」です。4年前に「従業員持株会」を発足してから、社員の意識が変わってきました。社員一人一人が経営者のように業績や経費についても考えるようになったのです。私が理想とする組織ができつつあると感じています。
多種多様な価値感を受け入れられる会社
編集部 サクラマチヒルズにオフィスを開設されましたね。
瀬口社長 昨年の9月から一部本社機能を熊本市のサクラマチヒルズに移転しました。設計とインテリアコーディネーター、人事を担う約20名が在籍しています。2年後には50名ほどが勤務する予定です。フリーアドレスでその日の気分に合わせてカウンター席やソファ席、集中するための個室席など、働く環境を変えられることが魅力です。
編集部 人材育成で力を入れていることはありますか?
瀬口社長 実は5年前までは、3年以内の離職率が40%を超えていたのです。しかし直近の3年では約5%まで下げることができました。離職者の大半が成長を実感できないという理由から離職していたため、私を含め上長との面談を月1回定期的に実施し、こちらのビジョンと社員の要望をすり合わせながら成長機会を作り出しています。また定期的なジョブローテーションで様々な仕事を経験して頂きますので、それぞれのやりたいこと・生活リズムに合った仕事を見つけることができます。例えば元々営業の女性に設計の方でVRを作ってもらっています。文学部出身でVRの知識は無かったのですが、絵が上手だったのでVR作ってみたら?と提案しました。社員に場を与えるのも会社の役目だと思いますし、そうすることで社員も会社も成長すると思っています。
編集部 求める人材像について教えてください。
瀬口社長 過去の経験よりも意欲や人柄を大切にしています。当社に足りないことは何なのかということを自ら考えて、生み出せる方が良いですね。暮らしに関すること全般を扱いますので、様々な人材が必要になります。暮らしに直接関係が無くても多種多様な方に入って欲しいという想いを強く持っています。直近ではマーケティングを専門としていた方やテレビ制作に携わっていた方、YouTubeチャンネルを制作していた方などが採用に繋がり、社員のバリエーションが広がったと感じています。
現在社員が140名程いますが、平均年齢が29.5歳、30代と40代が約40%と本当に若い社員の多い会社です。私のビジョンとして100人の社長を育てたいと言っています。頑張れば関連会社の社長への道も拓けますし、チャレンジしたいという人も大歓迎ですよ。様々な人材の受け皿になるためにも、会社の器をもっともっと大きくしていきたいですね。
編集部 趣味を教えて頂けますか?
瀬口社長 趣味は読書と、最近は映画鑑賞も好きですね。夜中しか時間が空かないので、その時間にできることで考えついたのが映画鑑賞。時間も限られているので映画を見ながら、本も読みながら・・・という感じですが、この時間が一番くつろぎますね。お付き合いで熊本市内での飲み会も多いので、よく「熊本市内に住んでいるの?」と聞かれるのですが、山鹿市内に住んでいます(笑)。どんなに遅くなっても山鹿に帰ってきますよ。やっぱり山鹿が落ち着きますからね。