熊本の未来をつくる経営者
社員を幸せにするために、積極投資で成長を続ける地元資本No.1の住宅メーカー 株式会社シアーズホームの丸本社長
丸本文紀(まるもとふみのり): 株式会社シアーズホーム・代表取締役。熊本市出身。済々黌高校-中央大学商学部卒。89年4月不動産業のシアーズコーポレーション設立、93年住宅建設への進出を機に「シアーズホーム」に社名変更。02年10月共同出資で㈱県民百貨店を設立し、くまもと阪神社長に就任。3期6年務め退任。現在は㈱まちづくり熊本、熊本城桜の馬場リテール㈱の社長も兼務。趣味は読書と仕事。座右の銘は「全力投球」
「賢明なる成長」を続ける地元資本九州No.1の住宅メーカー
ココクマ編集部(以下、編集部) 年間売上と着工棟数はどれくらいですか?
丸本文紀社長(以下、丸本社長) 2020年4月決算で年間売上200億円、年間着工棟数800棟を突破し中期経営計画も達成します。地方資本の住宅会社では九州No.1だと思います。2016年に売上100億円を超え、20年には200億円を目標に掲げ、次はまた3年後に300億円を突破したいと考え準備を進めているところです。
当社の主な事業は新築戸建ての住宅販売です。関連会社も含め住宅のラインナップは多彩で、自由設計の注文住宅がシアーズホーム、省コストのジャストホーム、高気密・高断熱の桧家住宅に加え、サンタ不動産では1千万円を切る低価格住宅にも取り組んでおり、顧客の様々なニーズに対応できる商品ラインナップが強みです。またエリア展開にも力を入れています。熊本地震後には復興特需もありましたが、数年で落ち着くのを見越し、17年3月には福岡に進出、19年7月には佐賀にも進出しました。熊本・福岡・佐賀の人口は約800万人。先ずは、このエリアでシェアNo.1になるために戦略を考えています。
人口減少・金利上昇・消費税増税など住宅業界を取り巻く環境は厳しく、住宅展示場に来てくださるお客様の数は震災前の半分にまで落ち込んでいるのですが、そのような状況にも関わらず当社では受注件数は落ちていません。それどころか先月は月間80棟受注の新記録を樹立しました。全国的に見ても、地元資本の住宅会社でこれだけの月間着工件数をやっているところは少ないと思います。
編集部 社員数も増えましたね。
丸本社長 3年前から年間で40~50名ペースで採用しています。現在社員数は355名で、来年の4月には新卒社員が28名入社予定です。
私は、企業は絶対に成長し続けないとダメだと考えています。正しい売上・利益を上げ、財務面も強固なものとする。内部留保も必要ですが、当社では社員への還元と積極的な投資により業績を上げ、社員を採用・育成し…という好循環によって競合優位性が築けると考えています。
社員の幸せのためにも、利益を出して成長を続けることが必要不可欠なのです。シアーズホームグループの経営方針として「Smart Growth(賢明なる成長)」を掲げています。成長がなければ社員の所得を上げることも、雇用を増やして地域に貢献することも不可能ですから。「賢明なる成長」に、社員全員で一丸となって取り組んでいきたいと思います。
社員を幸せにするのが経営者の仕事
編集部 社員満足度No.1をビジョンに掲げられていますね。
丸本社長 私は企業の目的は人を幸せにすることだと思っています。日頃から社員に伝えているのは、「世の中の役に立つ人間になろう」という言葉です。多くの人を幸せにできる人が幸せになる。自分さえ良ければという人は決して良い人生を歩むことができません。良い種・幸せの種をまくことで、幸せの種は回りまわって自分のところに帰ってくると思うのです。
また、お客様を幸せにするためには、社員が幸せでなければならないと考えています。だから社員満足度No.1を目指し「所得」「休日休暇」「やりがい」「適正・公正な評価」の整備に力を入れています。
例えば、所得の面では、社員一人当たりの給与は昨年と比較して平均6%、ボーナスは平均7%UPしています。会社が成長しているので、新しいポストを用意することができます。昇格、昇任により給与もUPできるのです。また住宅会社の営業というと、売った分だけ給与に反映されるインセンティブの割合が大きい会社もありますが、当社の営業は基本給だけで十分生活ができるように設定しています。経験やスキルと共に職能給も上がりますし、販売実績はボーナスに反映しています。お客様に本当に喜んでもらえるようなご契約を頂くためには、会社が社員の生活を保証する義務があると考えています。
また、働き方改革を推進中で労働時間の短縮や有給休暇取得を推進しています。年間休日も現行の105日から3年以内には115日まで増やす計画です。
編集部 12月に新社屋も完成しましたね。
丸本社長 社員が楽しく働くためには職場環境が大事になります。いつでも集まってコミュニケーションを取れるように、2階と3階の社員執務室のそれぞれ中央部に、カフェスペース「つどいカフェ」もつくりました。また、社員食堂では社員の健康状態改善のために、安くて栄養価の高いものを提供しています。「ここで働いて良かった」と思ってもらえると嬉しいですね。実はここには失敗の教訓があるのです。福岡出店の際に借りた事務所は古くて狭くて…。結果、人間関係があまり良い状態とは言えませんでした。そこで福岡県大野城市に広くて快適な新社屋を建てたのです。途端に、人間関係も良好になり、活き活きと仕事をするようになったんです。働く環境が変われば人間関係も変わるとその時に実感しましたね。
社員は私のお客様だと思っているのです。だからと言って甘やかすことはしません。どこに行っても通用する、立派なビジネスマンになるよう鍛えます。それが社員に対する恩返しだと思っていますから。
編集部 教育の面で特に力を入れていることは何ですか?
丸本社長 一番大事にしているのは理念教育です。経営理念は「私達は、お客様の満足を通じて自らの幸福を実現します」。ミッションは「本当に良い住宅、価格以上の価値を持つ住宅を創り、オーナー様に良い住宅に住む喜び、幸せ、満足、そして感動を提供します」と掲げています。社員には自分たちの仕事が社会貢献に繋がっているという誇りを持ってもらいたいので、経営理念とミッションの浸透は徹底的に行っています。「お客様を幸せにすることで自分も幸せになっていこうよ」というメッセージなのです。
シアーズホームブランドのさらなる拡張へ挑戦
編集部 チャレンジしていることはありますか?
丸本社長 一つはエリアの拡大です。国内はもちろん、海外にも目を向けていきます。実際にタイでは昨年から事業をスタートさせました。驚いたことに、私が行ったタイのショッピングセンターでは、住宅フェアに人が溢れていたのです。経済成長率が高く、これから伸びる国だと思います。海外に進出している地方資本のビルダーはあまりないのではないでしょうか。
また製造部門の内製化にも力を入れています。実際に大工見習い5名(※2020年4月新たに3名入社予定)を正社員登用し、教育しています。熊本地震を経験して職人の人手不足を痛感しました。納期までに家を完成させてお客様に満足していただくためには、製造部門の協力業者の体制づくりと職人の内製化は欠かせない取り組みです。
来年からは福岡でシアーズホームブランドの住宅販売をスタートする予定です。現在は商品力のあるFCブランド「桧家(ひのきや)住宅」の展開で、施工体制や営業体制が整いました。福岡エリアでも5~6年でシェアNo.1になりたいと考えています。
編集部 求める人材像を教えてください。
丸本社長 当社の社員は体育会系の社員が多いので、マーケティングもマネジメントも論理的にできる方に来て欲しいですね。また経理など管理系でも工事の分野でも、生産性向上のためIT戦略が必要だと感じていますが、思うように前に進められていません。
編集部 社員同士のコミュニケーションも活発な様子ですね。
丸本社長 社員が集まる機会を多く設けています。年に2回開催している経営方針発表会では業績優秀者の表彰式などを盛り込み、社員のモチベーションが上がるように心がけています。賞与UPなど特典付きですよ。次に計画しているのは3か年計画の発表会。これから3年どうやったら成長できるのかを社員に発表してもらいます。また社員旅行や大忘年会など社員が喜ぶような機会をつくるようにしています。