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「正しい情報で人々に安心を。楽しさと感動で熊本を明るく。」を実践する、株式会社熊本放送の坂口社長

「正しい情報で人々に安心を。楽しさと感動で熊本を明るく。」を実践する、株式会社熊本放送の坂口社長

坂口洋一朗(さかぐちよういちろう):株式会社熊本放送・代表取締役社長。熊本市出身。熊本大学法文学部卒。1982年熊本放送入社。2018年取締役放送本部長兼報道制作局長兼ライブラリー部長、19年取締役放送本部長兼報道制作局長、21年常務取締役放送本部長、22年常務取締役業務本部長を経て、23年4月に代表取締役社長就任。

独自コンテンツや大型イベントで業績も回復

ココクマ編集部(以下、編集部):開局70周年おめでとうございます。

坂口洋一朗社長(以下、坂口社長):ありがとうございます。RKK熊本放送は、今から70年前の1953年熊本初の民間ラジオ局として開局しました。テレビ放送がスタートしたのが1959年で、私はその年に生まれました(笑)。開局70周年にあわせて企業ブランドロゴも一新しました。「一歩、外へ、踏み出す力を。その勇気で新しい未来が見えてくる。」、そんな想いを込めています。

県民の皆さんに今までご支持いただいた御礼の意味から、70周年開局記念日に向けて、県民が明るく元気に過ごせるような番組やイベントを企画しています。「冨田伊織 新世界『透明標本』展」「反田恭平プロデュ―ス Japan National Orchestra 2023」「美をつくし~大阪市立美術館コレクション」「クラウス・マケラ指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 辻井伸行(ピアノ)」「キョーリン製薬グループ presents 超からだのひみつ大冒険」「ミュシャ展~マルチ・アーティストの先駆者~」などを開局イベントとして開催します。その他にもラジオのパーソナリティとリスナーの交流イベント「ラジオフェス」や10月には桜町花畑広場で「RKK祭り」という大きなイベントも予定しています。

編集部:自社制作番組も人気ですね。

坂口社長:他局との差別化を図るためにも、真似のできない独自コンテンツを提供することを重要視しています。毎週月曜日~金曜日の夕方の情報番組「ゲツキン!」もそうですし、毎週水曜日の19時~22時のゴールデン枠では「週刊山崎くん」や「水曜だけど土曜の番組」などの人気番組を放送しています。実は、毎週1回3時間連続でゴールデンタイムにローカル枠を持っているのは、県内の民間放送局ではRKKだけなのです。いずれの番組も、観ていただいた方から「面白いね」とか「先日のあれは笑いました」「あの番組のファンです」などと声をかけていただく機会もあり嬉しく思っています。自社制作番組のコンテンツが、熊本の方々話題になっているということは大きな価値だと感じています。

熊本放送

熊本の価値ある情報を日本、世界へ発信する

編集部:4月に社長に就任されました。どのような方針を掲げてらっしゃいますか。

坂口社長:テレビ業界はインターネットなど新たなメディアの普及により、収益の減少という課題に直面しています。実際、テレビ広告収入がネット広告に抜かれている状況ですので、今後どのようにテレビに戻ってきてもらうかが課題だと認識しています。まずは前任の上野社長の時から引き続きですが、本業でしっかり利益を出していくことを大事にしたいと考えています。売上対策としては、やはりコンテンツの強化だと考えています。地域密着の姿勢を貫き、地元の特性を生かした番組作りをしていきたいです。また、必要な経費削減にも意識して取り組んでいます。

編集部:コンテンツの強化とはどのように取り組まれるのですか?

坂口社長:熊本の価値ある情報を日本、世界に届けていきたいと考えています。「THE TIME」という朝の番組の中で、中継をつないで熊本の情報を発信するという機会があります。実は中継回数は多い方で、系列他局の方とお話しすると「熊本はホント羨ましいね、TSMCなどコンテンツがいっぱいあるよね」と言われます。地元の放送局として熊本の魅力を発信して、全国から注目してもらえるよう努めます。

また、インターネットでの情報発信としては、JNN系列で取り組んでいる「NEWS DIG(ニュースディグ)」というプラットフォームがあります。これまでは昼や夜のニュース番組や夕方の情報番組に合わせニュースを準備していましたが、今はNEWS DIGや自社ホームページからタイムリーに情報提供出来る体制が整っていますので、ローカル情報をタイムリーに、日本・世界に向けて発信していけたらと思っています。

また、若い感性を事業に活かしていきたいということで上智大学との共同授業を行っています。熊本に限らず、若い人たちがテレビやラジオに対してどのような関心があるのか。若者の志向や流行をキャッチアップしながら私たちも変わっていこうと考えています。

熊本放送_坂口洋一朗

編集部:面白いですね。

坂口社長:番組制作をする私たちが面白いと思わないと観てる人も面白くないでしょうし、まず私たちが楽しみながら、番組制作に取り組むことが大事だと思っています。24時間365日、常に放送し続けているわけですので、私たちが新鮮な感動を失って、マンネリ化してしまわないように注意しています。マンネリ化すると放送事故につながるリスクもあります。日々気持ちをリセットして取り組んでいこうと社内には声をかけています。

また、私たちの仕事はチームワークがとても大事です。例えば、アナウンサーが原稿の下読みをしている時に、周りにいる人が誤読をしていることに気づいたら、「その表現おかしいんじゃない?」とちょっと声をかけることでミスを防ぐことができます。担当の人だけではなく、それ以外の人も垣根を越えてお互いの仕事に関心をもってよい番組をつくっていこうとするのが大事です。今は強く指摘するとパワハラと言われるんじゃないかと難しい時代だからこそ意識していきたいですね。

編集部:意見の言いやすい職場環境が必要ですね。

坂口社長:「逆命利君」という言葉をご存知でしょうか。命令に背くことが君主のためになるという言葉なんですけど、裸の王様だと周囲が忖度して綺麗ごとばかり言うじゃないですか。そうなると企業はダメになっていくんですよ。そうでなくて、トップに対して誰もが正論を吐けるような職場環境でなければいけないと思っています。私自身も入社以来40年間「それおかしいんじゃないですか」とハッキリ言ってきましたけど、社長になれましたので(笑)、当社にはそういう風土があるように思います。

正しい情報を伝える、社会的使命を果たすのが報道機関の使命

編集部:今後の展望を教えてください。

坂口社長:「正しい情報で人々に安心を。楽しさと感動で熊本を明るく。」を当社のパーパスとして掲げています。現代はデジタルツールの発達により、個々人が情報を発信する機会が増えましたが、正しい情報を伝えるという私たちの仕事はなくならないと考えています。例えば、人吉の水害や熊本地震のような大きな災害時に、まず現場に駆け付けるのは私たちテレビ放送です。SNSなども多数ありますが、そこでも私たちが発信した情報を2次利用されることが多いわけです。またフェイクニュースが溢れている世の中にあって、私たちがきちんとした情報を正しく伝えるということが重要な責務だと思っています。そのために、緊急時を想定して日頃から訓練を怠りません。社会的使命を果たせるように人員も含めて体制を確保したいと思っています。

熊本放送_坂口洋一朗

編集部:「えるぼし認定」を受けられましたね。

坂口社長:男女共同参画の取り組みを対外的に評価してもらおうと認定申請をして取得したところです。元々女性が多い職場でしたから、育児休業法が制定された1992年頃から育児休業の制度を整え、女性が働きやすい職場づくりに挑戦してきました。全従業員の30%、管理職の15%が女性です。今後は更に経営幹部への登用なども視野に、男女問わず働きやすい職場づくりを推進していきたいと考えています。

編集部:どんな人材を求めてらっしゃいますか。

坂口社長:新卒採用中心ですが、ここ数年は中途採用も積極的です。30代の放送技術の方や公認会計士の方の採用も行っています。これからは営業職やITエンジニアなどの採用も考えています。私たちの仕事は立場上、県知事や熊本市長、あるいは有名なスポーツ選手などにアポをとって直接お話を聞く機会が得られます。人と接して感動を伝えたり、情報を伝えたり、そういうことをできるのが私たちの役得なところだと思います。まずは、その環境を楽しんで欲しいと思いますね。一方、人と接する機会が多いからこその大変なこともあります。繊細な感性は大事なのですが、へこたれずに頑張るというハートが求められる仕事です。そういう方に是非仲間になってほしいと思います。

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