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生産量日本一のベビーリーフメーカーが 科学的アプローチで日本とアジアの農業を変える。 株式会社果実堂の高瀬社長

生産量日本一のベビーリーフメーカーが 科学的アプローチで日本とアジアの農業を変える。 株式会社果実堂の高瀬社長

高瀬貴文(たかせたかふみ):株式会社果実堂・代表取締役社長。大阪府出身。住友不動産㈱を経て2008年に㈲西日本農業社に入社。2010年に井出前社長(創業者)の依頼で同社の技術指導を行うコンサルティングを担当し、2011年に同社入社。栽培管理部部長・技師長、執行役員、取締役を経て2019年12月より現職。

農業コンサルティングが収益の柱に成長

ココクマ編集部(以下、編集部) 事業内容を教えて下さい。

高瀬貴文社長(以下、高瀬社長) 当社はベビーリーフの生産・販売を主事業に、機能性発芽食品の開発・製造・販売を手がけています。果実堂グループのベビーリーフ農場の栽培面積は約69ヘクタール、ハウス数は613棟、ベビーリーフ年間生産量は約700トンで日本一。創業以来の目標であるベビーリーフ生産年間1,000トンが目前です。

また、私自身が2016年に「果実堂テクノロジー」を分社化して立ち上げ、農業コンサルティング事業も行っています。具体的には、農業への参入を計画している企業に対して、ベビーリーフ事業で培った栽培ノウハウを活かした技術指導とグリーンハウス(高瀬式14回転ハウス)などの設備提供を行っています。今期はグループ全体で売上19億円を突破しました。主力事業のベビーリーフ事業はもちろん、特にコンサルティング事業が好調で、事業開始から数年で2億円以上の売上を確保できました。2022年には更に成長して売上30億円の目標を掲げています。

編集部 御社の強みを教えて下さい。

高瀬社長 研究所の存在が最大の強みです。研究開発型の農業法人を目指しており、研究所の知見をベビーリーフ事業・農業コンサルティング事業どちらにも活用しています。また研究所では「土を選ばない農業」の研究も行っています。土の状態把握から処方箋まで一貫して研究しており、どこでもベビーリーフが栽培できる環境を再現できるようマニュアルを作成しています。研究所に蓄積されたデータに基づいた「サイエンス農業」のノウハウを、農業コンサルティング事業に活かしています。

また、株主の多さも強みです。三井物産、カゴメ、トヨタ自動車、矢崎総業など、幅広い業種の企業との相乗効果で農業の産業化を実現できると考えています。今後特に意識していきたいのは二次産業であるメーカー。農業にも工場化の息吹を取り入れ、効率化を図っていきたいと考えています。

サイエンスで農業を産業化させたい

編集部 昨年12月に社長に就任されましたね。ご経歴を教えて下さい。

高瀬社長 実は農業を始めるまでは建築士として働いていました。阪神淡路大震災を機に、仕事は「衣食住」における「食」と「住」に携わろうと決め、まずは「住」を探求すべく、大手デベロッパーに就職し全国を飛び回っていました。農業を始めたのは、2008年に知人から「一緒に農業をやろう」と誘われたことがきっかけです。農業は「食」に通じますし、「サイエンスを活用して農業を発展させたい」という知人の農業に対する情熱に感化されて決断。大分県の臼杵市野津町で就農しました。

編集部 「農業×サイエンス」に面白みを感じられたのですね。

高瀬社長 農業はまだまだ産業化されていないが、化ける可能性があると感じています。どうしても農業従事者の勘と経験に頼るところが多く、科学的なアプローチ方法が確立されていないのです。また日本の農業は人手不足などの問題で確実に衰退しています。一つ一つの事象をデータに取り、科学的に検証していくことで、10年かかるものを数年で実現できる可能性があります。私のような理系的な発想が「食」を支える農業に対して役に立てるのでは?と思ったのです。

大分で就農した頃はベビーリーフ栽培の研究をしていました。土の水分量を見極めるために、直接土を握って測る「触診」という方法で研究し、マニュアルを作成していました。土の水分量に関する知見は大学などの研究機関にも少ないのです。土の状態を握って確かめ、A~Fまでの段階に分けて、水分量が足りない場合は適量を灌水していきます。土の特性を活かすため、マニュアルを細かく分けたり…就農時期から徹底的にデータを取って研究していました。

その頃に井出前社長が大分の農場まで訪ねて来られ、技術指導を依頼されたのです。「変わった研究者がいる」と噂になっていたのかもしれません(笑)。

まずはコンサルタントとして、果実堂と関わるようになったのですが、コンサルだとやはり物足りないし…果実堂の人たちに触れたことで、ここで働きたいと思うようになり2011年に入社しました。栽培管理部で技術指導やオペレーションの改善など陣頭指揮を執り、再建へ打ち込みました。結果として、入社3年でベビーリーフ事業を黒字化へ引き上げることに成功し、さらに6年後には10億円の売上を確保することができました。入社した頃から軌道に乗るまでの期間必死すぎて、当時のことを何も思い出せないくらいです(笑)。

異業種と「共創」し、農業にイノベーションを起こす

編集部 ビジョンを教えて下さい。

高瀬社長 昨年末に社長に就任してから、「共創」をテーマに掲げています。「機械×果実堂」「AI×果実堂」「金融×果実堂」・・・異業種と連携して一緒に農業を推進していきたいと考えています。昨年は東大発のベンチャー企業㈱SenSproutと、農場へのIoTセンサー導入による自動灌水システムを開発しました。私が研究開発していた土の「触診」にセンサーを活用して、遠隔で自動灌水するシステムです。これにより栽培管理業務の省人化が可能になります。こういった取り組みが評価され、大和証券グループとの業務提携に至り、提携の一環としてグループ傘下の大和フード&アグリ㈱に対して当社の新型ハウスの売却が実現しました。大和証券グループのSDGsのTVCMに登場する農場は、当社の農場なんですよ!今後も当社と連携企業がもつ双方の既存技術の掛け合わせでイノベーションを起こしていきたいですね。テクノロジーを成長させることによって、井出前社長の意思を引き継ぎ、上場を目指していきます。

また「アジアの農業を産業化する」というミッションを掲げています。実際にミャンマーや台湾など現地での技術指導や当社での見学などの交流も行っていますし、今年からベトナムやタイへもエリアを拡げていきます。アジアの気候に合った当社の土耕型ビニールハウスを展開し、日本のみならずアジアへもサイエンス農業を推進していきたいと思います。

ビジネスとは少し違う観点で、小規模な新規就農者向けのパッケージも準備する計画を立てています。当社のサイエンスを活用することで新規就農者の苦労を軽減させたいと考えています。行政へも地方創生事業の一環として提案していきたいですね。こういった取り組みを通して新規就農者を増やしていきたいです。

編集部 求める人物像を教えて下さい。

高瀬社長 当社は農業の総合商社を目指していきます。農業を軸にして、物流・流通・建設・営業など…事業領域を拡げていく中で、社員にも多様性が必要になります。農業に対する情熱さえあれば、経験や知識が無くてもかまいません。

当社の根幹は農業なので、入社後はまず農場で栽培管理の経験を積んでもらい、その中で希望とすり合わせながら研究開発など各部署に異動することもできます。中には1年で栽培管理から異動になる社員もいますよ。週休2日しっかり取れて、夏期・冬期休暇や賞与もあり、社会保険完備の企業に在籍しながら農業に携われると考えると、「農業にチャレンジしたい」と考える人にとっては魅力的ではないでしょうか。実際そういった考えを持って入社した社員も多くいますよ。栽培管理の社員は現在28名で平均年齢は28歳と若く、農学部出身の社員もいれば特別な知識を持たずに入社した社員もいます。入社後にしっかりと教育し、スペシャリストに育てます。学びやすい環境だと思いますよ。

また、業態を増やして多様な受け皿を用意していく一方で、新しいチャレンジをしたい社員がいれば、「新規事業を立ち上げてみないか?」と勧めています。

編集部 熊本での生活はいかがですか?

高瀬社長 満足しています。私は大阪出身で、妻も熊本とは縁も所縁もありませんが自分で設計して家も建てましたし、子供もしっかり熊本弁を喋ります(笑)。自然が多く子育てする環境としては良いと思います。また熊本は水資源に恵まれ、農業出荷額で3500億円を誇る全国でも有数の農業が盛んな県です。農業をする環境としても最適だと思います。

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