熊本の未来をつくる経営者
地域の未来のために挑戦する人々の想いをお金のチカラで後押しする、株式会社グローカル・クラウドファンディングの都社長
都えみ(みやこえみ):株式会社グローカル・クラウドファンディング 代表取締役。八代市出身。早稲田大学卒業後、2005年肥後銀行に入行。八代支店、東京事務所、本店営業部、大津支店に勤務。20年にグローカル・クラウドファンディングに出向。23年代表取締役に就任、現在に至る。九州フィナンシャルグループ出資企業では初の女性社長でグループ最年少。
熊本地震が原点。地方金融グループから生まれた新しい金融のかたち。
ココクマ編集部(以下、編集部):創業の背景について教えてください。
都えみ社長(以下、都社長):一番のきっかけは熊本地震です。当時、被災された多くの事業者の方々を支援させていただく中で、「銀行としてできることの限界」を痛感しました。もちろん、融資やビジネスマッチングなど多面的な手段がありましたが、どうしても資金的に厳しい、ノウハウが足りない、人的リソースが足りないなど多くの課題も散見されました。そのような事業者の方々こそ、地域経済を支えてくださっている存在であり、たくさんの夢やアイデアを持っていらっしゃるんです。だからこそ「銀行の枠を超えて、地域の挑戦を支えられる仕組みを作りたい」と思ったのが始まりでした。
編集部:なぜクラウドファンディングなのでしょうか?
都社長:銀行では難しい「リスクマネー」を供給できる手段だからです。事業投資型クラウドファンディングは、いわゆる「推し活」です。自分が応援したい事業者に直接投資できる仕組み。共感の力で資金を集め、事業を育てる事業投資型クラウドファンディングには金融の在り方そのものを変える力があると感じています。「この人の作るラーメンを広めたい」「この酒蔵を守りたい」といった「想い」を出資という形でお金を託す。そんな新しい応援が拡がれば、地域の未来はもっと豊かになるはずです。
編集部:既存のプラットフォームを使う選択肢もあったと思いますが?
都社長:私たちが取り組みたかったのは、単なる「購入」や「寄付」ではなく、「事業投資型」のクラウドファンディングでした。そのため会社を新しく設立し、金融商品取引法に基づく第二種金融商品取引業の登録を行い、事業投資型クラウドファンディングを取り扱っています。また、同じく事業投資型クラウドファンディングを手掛け、東京に本社を置くミュージックセキュリティーズ社と提携し、ノウハウやシステム面で連携しています。
主要株主である九州フィナンシャルグループ(肥後銀行・鹿児島銀行)や地元金融機関との連携により、地域企業の発掘からプロジェクト終了後のフォローまで、金融グループが一体となった支援体制を築いていることが強みです。
編集部:事業は順調ですか?
都社長:2020年1月に会社を設立し5人でスタートしました。すぐに新型コロナウイルスの影響が広がり、当初の想定通りにはいきませんでした。本来であれば事業投資型クラウドファンディングの仕組みを活用した大規模な地域支援プロジェクトの組成を想定していたのですが、社会全体のマインドが「投資」よりも「寄付」へとシフトしていた時期だったんです。そのため、最初の数年はとてももどかしい日々でした。
しかし、熊本の飲食店支援を目的とした「さしより応援プロジェクト」など、社会的意義の高いプロジェクトに取り組んだことで、少しずつ地域の中で信頼を築いていきました。地道な取り組みを続けたことで、現在では130件以上のプロジェクトに関わり、総額4億円ほどの資金を地域に届けています。
編集部:どのようなプロジェクトがあるのでしょうか?
都社長:いろいろありますが、特に印象的だったのが、八代で行われた国指定名勝「松浜軒(しょうひんけん)」の長塀修復プロジェクトです。このプロジェクトでは、一般的な寄付の呼びかけとクラウドファンディングを融合させたハイブリッド型で寄付を呼びかけ、結果的に3,700万円を超える支援を集めることができました。企画段階から周知活動、体験イベントの設計、広報まで、地域の方々と一緒に歩んできたプロジェクトで、「クラウドファンディングでここまでできるんだ」という自信にもつながりました。

編集部:「人と人」のつながりが重要なんですね。
都社長:そうなんです。私たちはプラットフォームを提供するだけでなく、「一緒に夢を実現するパートナー」でありたいと考えています。すべてのプロジェクトに必ず担当者がつき、対話や広報支援を通じて、「共に考え、共に動く」スタイルで進めています。プロジェクトオーナーの想いを理解し、私たち自身が共感できるかどうかが、私たちのスタンスの根幹です。
地域から全国、そして世界へ。「意思あるお金」がつなぐ未来の金融。
編集部:今後のビジョンについて教えてください。
都社長:私たちの目指す未来は、「挑戦者のNo.1パートナーになること」です。これまでクラウドファンディングという手段で、地域の事業者さんの「はじめの一歩」を応援してきましたが、今後はその一歩の先、つまり事業の成長や自立に向けた継続的な支援までを見据えた仕組みづくりに取り組んでいきたいと考えています。
編集部:お金だけではないということですね。
都社長:具体的には、新しく「伴走支援事業」を立ち上げようと考えています。資金調達だけでは解決できない課題――たとえばマーケティング、商品開発、SNS運用、経理など、事業者の皆さんが日々直面している現場の悩みに寄り添うことを目的とした支援です。たとえば、ラーメンは作れるけれどSNSでの発信が苦手なオーナーさんとか、そういった「できない部分」を、地域のプロフェッショナルとつないで解決につなげる、ハブのような存在になれたらと考えています。
編集部:全国展開も視野に入れていると伺いました。
都社長:当社の取り組みは熊本だけにとどまらず、全国のスモールビジネスにも展開できると感じています。特に私たちが手がける「事業投資型クラウドファンディング」は全国的にもまだ数が少なく、大きな可能性があると感じています。グローカル・クラウドファンディングは、地域と世界をつなぐ「お金の循環プラットフォーム」になることを目指しています。社名の通り、グローバルとローカルの融合で、地域の魅力ある事業に、全国・世界から共感と資金を集め、それが地域を元気にし、また新たな挑戦を生む――そのような循環の起点となる存在になりたいですね。
ただ、今後どんなに事業が拡大しても、「人と人とのつながりを大切にする」という原点は変えずにいたいと思っています。プロジェクトの数を追うのではなく、一つひとつの挑戦と丁寧に向き合う企業であり続けたいと考えています。

想いをカタチに。小さなチームで大きな挑戦を支える仲間へ。
編集部:どのような人材と一緒に働きたいと考えていますか?
都社長:一言でいえば、「前向きにチャレンジできる人」です。ベンチャー企業ですからすべてが整備された環境ではありませんし、何でも自分たちで作っていかなければなりません。だからこそ自由度が高く、アイデアを形にできる環境でもあります。発信力と行動力があれば、大きな達成感を得られると思います。
自分の思いを言語化して、それを行動に移せるかどうかがすごく大事だと思っています。ただ与えられた業務をこなすのではなく、「こんなことをやってみたい」と自ら提案して、プロジェクトを作っていける環境があります。
編集部:社内の雰囲気は?
都社長:社内はとてもフラットで、誰が言ったかではなく、何を言ったかを重視する文化があります。実際、私が「これやってみたい」と言うと、「じゃあお願いします!」とそのまま私の担当になることも多いです(笑)。自分で言い出したことには自分で責任を持つ。そのような空気が自然と根付いています。
それに、少人数だからこそ、お互いの状況にもすぐに気づけますし、家族のような距離感で支え合える関係性があります。私自身も子育て中の母親ですので、育児との両立がしやすい環境を意識しています。勤務時間の調整やテレワークの活用なども柔軟に対応していますし、家庭の事情を尊重する風土もあります。
また、社員一人ひとりのライフスタイルに合わせて働き方を大切にしています。たとえば、子どもが熱を出して休むことになったら「じゃあ、フォローするね」と自然と言える雰囲気もありますね。
編集部:採用にあたって、どのようなスキルや経験が求められますか?
都社長:営業やITエンジニアなど、職種に応じたスキルはもちろんあると望ましいですが、それ以上に「共感力」や「寄り添う姿勢」が大切だと感じています。私たちの仕事は、地域の挑戦者たちに伴走すること。だからこそ、相手の立場に立って物事を考えられる人、自分のやりたいことだけでなく「この人のために何ができるか」を考えられる人を歓迎します。
編集部:入社後のキャリア形成についても柔軟なんですね。
都社長:はい。将来的に銀行本体への異動などの可能性もあります。一方で、「当社で長く働きたい」という想いを持った方には、継続的に活躍できる環境を整えています。実際に転籍せずに、ここで社長を務めている私自身が、そのロールモデルになれればと考えています。

編集部:業務面での体制づくりはいかがでしょう?
都社長:現在、7名体制で業務を行っていますが、来年度中には、10名体制に拡充する予定です。採用はプロジェクトコーディネーターやエンジニアを中心に進めており、業務分担や効率化を進めながら、一人ひとりがより創造的な仕事に集中できる体制を構築しています。一人あたり年間10〜13件、掛け持ちを含めると20件近い案件に関わっています。だからこそ、もっと人手が増えれば、より丁寧に、深く事業者さんと関われるようになります。その体制を一緒に作っていける仲間を求めています。
編集部:最後に、応募を考えている方に向けてメッセージをお願いします。
都社長:小さな会社だからこそ、誰もが「主役」になれます。やってみたいことがある人、地域に根ざした仕事がしたい人、人の夢を応援したいという気持ちがある人には、ぜひ飛び込んできてほしいです。たとえ失敗しても、それは次につながる経験になりますし、私たちはその挑戦を全力で応援します。「地域の挑戦を支える」という言葉にワクワクできる人。そのような方と一緒に、次の時代をつくっていきたいと思っています。










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