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【特集/コワーキングスペース】熊本にも増える繋がりの場 新しいコワーキングスペースが続々誕生
働く場所や仕事の見つけ方が多様化してきています。起業しようとしている人やフリーランスで活動している人にとって、コワーキングスペースを利用することで様々なメリットを享受できる可能性が見えてきました。多様な働き方を支える場所、熊本のコワーキングスペースを取材しました。
熊本のコワーキングスペース草分け的な存在 ―未来会議室
「Working as playing (=働くをおもしろく)」のコンセプトのもと、2014年に開業し、今年の11月で5周年を迎える「未来会議室」。熊本のコワーキングスぺ―スの草分け的な存在と言える施設です。利用者数は右肩上がりで、延べ人数は10万人を突破する勢い。施設内の設備や制度を変化させながら常に進化し続けています。
未来会議室の利用者はフリーランスなど個人事業者がメインユーザー。デザイナーやプログラマーなどIT関連で仕事をしている人の割合が高くなっています。また学生が試験勉強などで利用することも。幅広い年齢層が利用できる施設で、取材中にも小学生くらいのお子さんを連れている方もいらっしゃいました。
今回ゼネラルマネージャーの磯部さん、スタッフの福岡さんに取材させていただきました。
「利用者同士やスタッフとのコミュニケーションが取りやすいオープンな環境が未来会議室の特徴です。スタッフからも積極的にコンタクトを取るように心がけ、時には利用者同士を結び付けたりすることもあります。お酒を飲みながらの会員交流イベントやオンラインのコミュニティツールも活用し、利用者同士が気軽に繋がれる空間と仕掛けを作っています。」
羽ばたいていった会員も多く、未来会議室をスタートアップの場として活用し、その後本格始動するケースも。
「今後も起業しようとしている人や起業したばかりの人、副業しようとしている人など、ビジネスのスタート地点として利用してもらいたいです。未来会議室から上場企業を出すことが私たちの目標でもあります。」
ゼネラルマネージャーの磯部さんは、東京からのUターンで熊本に帰ってきたそうです。
「未来会議室の会員の中には、関東などからUターンし、熊本で活動している方もいます。彼らは広告ディレクターやイラストレーターなどを経験し、独立後熊本にいながら、関東の仕事をしています。」
リモートで県内外の仕事をしたいと考えている人にとっては、目指す働き方をすでに実践しているモデルケースを見つけられる可能性もありそうです。
「“雑談できる環境”がコワーキングの本質」
この日の未来会議室には最近マスコミにも取り上げられている14歳のプログラマー「おすしくん」こと野澤翼さんの姿が。
「彼はもともと独学でプログラミングを学んでいましたが、ここに来るようになってからは他の利用者との情報交換の中で成長していると思います。」
磯部さん、福岡さんとも仲良く談笑されていて、おすしくんとのやり取りの中からも、利用者とスタッフ間の距離の近さを感じました。
子供も居れば大人もいるし、集中して静かに作業をしている人もいる。同じ空間にいながら各々全く違う仕事や作業をしながら、それでいてなんとなく一体感がある。「『協働する』というだけでなく、『雑談できる環境』こそコワーキングの本質だと思っています」と磯部さんが話すように、未来会議室にはアットホームな雰囲気が漂っています。熊本に根付くコワーキングスペースならではの、コミュニティの深さが未来会議室の魅力です。
福岡発 海外含め熊本が9拠点目 ―The Company熊本
2019年7月に熊本に開業した「The Company熊本」。福岡に本社を置く株式会社Zero-Ten Parkが運営するコワーキングスペースで、福岡のほかフィリピン、シンガポール、タイなどグローバル拠点展開が特徴。熊本は9カ所目の拠点となります。
コンセプトは大きく2つ。「マルチロケーション」と「ワークリンク」です。「マルチロケーション」とはThe Companyの会員になれば世界に点在する9拠点(2019年9月現在)をいつでも自由に利用できるということ。しかし、働く「場所」として9拠点利用できるということだけにとどまりません。
現在The Companyの会員数はグローバル会員も含めて全400社850名。この全ての人とコミュニティを構築できる可能性があるということが、マルチロケーションの本質と言えます。「ワークリンク」とは会員間でビジネスの案件が飛び交うこと、また一つの案件に対して一拠点で解決するのではなく、各拠点のそれぞれのスキルや強みを掛け合わせることでスピーディーに案件を進行させることができることを意味します。
今回取材に応じてくれたスタッフの篠崎さんが「コミュニティと繋がる事でネットワークがどんどん広がる」と話すように、会員間のコミュニティでも仕事がまわっていくようです。どこで何が生まれているか把握しきれないほどなんだとか。
「The Company福岡の拠点では社員数3名で入居した企業が、The Companyのコミュニティ内をきっかけに営業先を開拓し、外部へも自社サービスを売り込み、約3年で社員数30名ほどの企業に急成長した事例もあります。入居者のビジネスが拡大・促進していくことが私たちの最終的なミッションだと思っています。」
「The Companyがもつ知見やネットワークを熊本に還元したい」
福岡や海外で数多くの実績がありますが、熊本でも開業して間もないにも関わらず、すでにいくつかのプロジェクトが立ち上がり、動き出しています。熊本という土地がもつ強みの一つ「食」をキーワードに、バンコクの企業と協働したり、熊本のWEB開発を海外にオフショアしたり…。
スタッフの篠崎さんは入居者とオフラインで直接話をすることで、The Companyへのニーズと入居者のスキルや強みを把握し、案件にマッチするものがあれば繋いでいくようなコミュニティマネージャーのような役割をしています。
9カ所目の拠点に熊本を選んだ理由として、大規模な再開発事業も進行し、勢いのある熊本から九州を発展させたいという想いがあるそうです。
「The Company熊本を起点として、シェアビジネスを熊本に根付くようにしたいと思っています。熊本だけで完結する仕事をするというより、The Companyがもつ知見やネットワークを熊本に還元したい。ビジネスが生まれる場としても、カルチャーの発信地としてもネットワークを拡げていきたいと考えています。」
The Companyは単に仕事をする場所としての施設ではありません。グローバルなコミュニティに属し、自分のスキルを発揮できる仕事を見つける場所です。熊本県内にとどまらず、色々な拠点の会員と繋がりながらビジネスを加速させることができる。熊本の新しい可能性をThe Companyから生みだせるかもしれません。
熊日創業の地を新たな情報発信の場に ―びぷれすイノベーションスタジオ
2019年10月15日に新しく開設される「びぷれすイノベーションスタジオ」。株式会社熊本日日新聞社(以下熊日)が運営するコワーキングスペースです。熊日の創業の地で今後は地域社会と連携し、情報発信の場として活用していきたいとの思いから開業されます。
びぷれすイノベーションスタジオ開業の目的として、①市街地中心部の活性化②オープンイノベーション(協働協創)の促進③ビジネスを通じた地域課題の解決が掲げられています。自治体など公的機関が連携機関として名を連ねていますが、これは熊本県が抱える多くの社会問題を自治体などから相談を受ける体制を構築し、企業連携で解決に臨むためです。
地域社会と連携し課題解決に取り組む 新しい「繋がりの場」
びぷれすイノベーションスタジオの最大の強みは情報発信と熊日のネットワーク。熊日新聞などの媒体を通して新しいビジネスの情報発信ができ、熊日がもつネットワークを活用して企業間の連携が可能になります。新事業の広報やビジネスの連携を求めている企業にとっては魅力となりそうです。
今回取材に応じてくれた熊日の長澤さんによると、「自社だけでなく、企業や個人事業主、行政など垣根を越えて、熊本の未来を一緒につくっていくコミュニティを構築したい」とのこと。
「創業から長い歴史の中で培ったネットワークが当社の財産と言えます。この財産を活かして熊本の企業、地域社会の発展に繋げたいと考えています。『ここに来ればいつも何かやっている』『仕事上の困りごとがあればここに来る』という場にしていきたい。入居者との交流の中で様々な可能性を見つけていきたい。」
また今後の予定として「仕掛力&企画力を養成するスキルアップセミナー」や「これから起業を考える人を対象とした伴走型のプロジェクト」、ブロックチェーンカンファレンスなど多種多様に予定されています。
びぷれすイノベーションスタジオは、地域社会との連携から熊本の繁栄をめざす施設。10月15日の開業以降、どのようなイノベーションが生み出されるのか楽しみです。
まとめ
関東などから熊本へのUIターンを考えた時、生活環境でポジティブな印象を持つ一方で、仕事の規模や刺激の少なさがネガティブなポイントになるかもしれません。コワーキングスペースを活用し、自ら意図的にチャンスを作り出すことによって、熊本でやりたい仕事をしてみませんか?
今熊本で仕事をしている人にとっても、これまで繋がりの持てなかった分野の人とも繋がりを持てる環境はいい影響を与えるはずです。ダブルワークで自分のスキルを磨きたくなるかも…?
スタートアップの場所としてコワーキングを選択するケースも多いと思いますが、熊本にも創業支援に関する様々な制度があります。熊本市の制度や助成金に関しては以下のリンクにまとめられていますので参考にしてみて下さい。
https://www.city.kumamoto.jp/common/UploadFileDsp.aspx?c_id=5&id=8037&sub_id=7&flid=181306
また今回取材させていただいた各施設では今後も様々なイベントや取り組みが予定されています。興味をお持ちの方は、ぜひ利用されてみて下さい。
■未来会議室 HP
https://mirai-k.or.jp/
■The Company熊本 HP
https://thecompany.jp/
■びぷれすイノベーションスタジオ HP
https://bista.kumanichi.com/