熊本の熱量を届ける
これからのキャリアマガジン

吉良扶佐子（きらふさこ）：マルキン食品株式会社・代表取締役社長。熊本市出身。フロリダ大学ビジネスファイナンス専攻。米国ＡＴ＆Ｔ社でマーケティング担当マネージャー。2012年11月、マルキン食品経営企画室長、2016年４月同社常務取締役就任、2016年10月から現職。※「吉良」の「吉」の「士」は正式には「土」になります

納豆の生産販売量は九州NO1、ライフスタイルに合わせた商品開発にも注力

ココクマ編集部（以下、編集部）：毎日食卓に並ぶ熊本の顔ですね

吉良扶佐子社長（以下、吉良社長）：ありがとうございます。当社は創業106年を迎える熊本の食品メーカーです。納豆、豆腐、こんにゃく、きな粉など日本の伝統食を製造・販売しております。おかげさまで、納豆の生産販売量は九州トップクラス。「愛ある味のパートナー」という企業の使命を掲げ、お客様の家庭をより豊かに、ご家族の健康を祈り、幸せを願い、熊本から世界中へ健康と元気を届け、社会貢献を達成できる組織に成長できるよう、日々取り組んでいます。拠点は、熊本本社をはじめ、嘉島物流センター、松橋・阿蘇・宇土工場、福岡・広島など県外に支店・営業所を配置、九州・沖縄から関西圏まで商品を提供しています。

SDGsへの取り組みも積極的に進めています。昨年の納豆鑑評会で特別賞を3つ受賞することができました。そのうち「昆布たれ付」納豆は、サスティナブル大豆を使用した納豆として賞を頂きました。また、プラスチック削減の取り組みが評価され、令和2年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰で農林水産大臣賞を受賞しました。今後も当社商品で世界を健康で元気にすることを使命に事業に取り組んでいきたいと思います。

編集部：納豆市場は1割ほど伸びたとか・・・

吉良社長：昨今の事情で、家庭での食事が増えたこと、また納豆は手軽に食べられて、栄養価が高く、免疫力を高める効果も期待できるという見方が広まったことが背景にあるようです。飽きずに毎日食べてもらえるように、商品のアレンジレシピも提案、インスタグラムでも発信しています。

また、食生活やライフスタイルの変化に合わせた新商品開発にも取り組んでいます。「スグ旨食堂とうふステーキやみつきベジソース」は、水切り不要の豆腐をフライパンで焼き、乾燥野菜のうま味が詰まったソースをかけるだけ。簡単便利な商品です。なめらかな絹ごし豆腐をそのまま使えるのが特長です。「元気納豆　国産きざみ大根たれ付」は阿蘇産の大根漬けとのコラボ商品で、大根の食感と干し椎茸のうま味が効いた、具入りのたれが付いています。常に品質を重視しながら、伝統食文化の継承と時代に適応した新商品開発の両面に取り組んでいきたいと考えています。

編集部：新会社設立の目的は？

吉良社長： 2020年11月に通販専門サイトの運営会社「(株)B-GENKI(ビーゲンキ)」を立ち上げました。「おいしく食べて元気に」をコンセプトに、新たに開発したヘルシー食品で、健康になる食生活をサポートしていきたいと考えています。

「こんにゃくぱすた(旨辛アラビアータ/濃厚豆乳クリーム)」「こんにゃくらーめん(香り旨塩/コク旨とんこつ風)」「どらいなっとうピリ辛しょうゆ」「こんにゃくジャーキー旨辛しょうゆ」など、納豆やこんにゃくなどがベースではありますが、「こんにゃくぱすた」「こんにゃくらーめん」「どらいなっとう」は、ビーガン対応。どの商品もカロリー控えめなため罪悪感もゼロです。商品開発の思想も消費者へのアプローチもこれまでにない、新しいチャレンジとなっています。また、熊本地震の際に痛感した、「常温で長期保存できる」という課題もクリアしており、非常時にも手軽に食べていただけることもできるようになりました。

納豆や豆腐を日本の伝統食で終わらせるのではなく、もっと気軽に食べていただき、そして元気になってもらうことが「BE-GENKI」の使命だと思っています。日本食に対する海外での評価は高く、特に健康的なイメージが強いので、競合が少なく市場開拓が見込めるアジア市場や北米市場を視野に事業を展開していきたいと考えています。

経営スローガンに「ONE TEAM」を掲げ、「働き甲斐改革」を推進する

編集部：経営スローガンである「ONE TEAM」狙いは。

吉良社長：トップダウンではなく、社員全員が考え行動できるような組織にしたいと考えています。体に良い商品をつくり、提供しているという自負もあるし、社員の愛社精神が強いのではないかと感じています。やはり、会社というのは「人」で動くものですから、自発性を促していきたいと考えています。

編集部：自発性を生むためには？

吉良社長：社内の風通しのよさ、つまりコミュニケーションしやすい環境づくりと、「なぜ(目的)」の共有を大切にしています。まず、私自身を知ってもらうことをいつも心掛けています。各拠点にも出向き、自分が考えていることや感じていることを伝える。社長面談や部門ミーティングを定例化し、意見を聞く場を設けていきました。幸いというか…私自身知らないことが多く、社員から教えてもらうことも多かったんですよね。だから自然と話しやすいとか、ちゃんと話を聞いてくれるという雰囲気ができてきたと思います。

加えて、「何のために」という目的を共有するように心掛けています。これがないと、やらされ感だったり、勝手な解釈が生まれ良くない結果につながることを私自身も経験してきました。だから、指示をする立場の人は、相手が何故それをしなくてはいけないのかを、きちんと伝えることが大切だと考えています。だから会議のスタイルも変えました。考え方の摺り合わせや幹部社員としての心得など、認識を合わせることに時間を割いています。

編集部：考え方が大切だと…

吉良社長：そうですね。実は、4年前から「社長直行便」というご意見箱を、全拠点・工場に設置しています。設置当初は、生産現場での改善要求から上司への不満など・・・想定以上の意見が投函されました（笑）。

色々な意見に目を通すことで、コミュニケーションを通した意思疎通の大切さを改めて実感しました。

一方でこんなエピソードも・・・。「実は退職しようと考えていましたが、新しい上司は、仕事の目的や意義・今後のビジョンを話してくれました。同じ仕事なのですが、やりがいを感じられ楽しく仕事ができていますと…」。

結局は、人のやる気次第だと思っています。仕事の意義とか目的が明確になれば頑張れるじゃないですか！「働き方改革」といいますけど、私は「働き甲斐改革」だと思うんですよ。会社としてそう思える環境を整えることが大切だと考えています。

柔軟な発想でチャレンジし続けるほうが面白い

編集部：開放的なオフィスですね。

吉良社長：新社屋建設を機に、無線LANを導入しフリーアドレスにしました。これにより他部署の社員とのコミュニケーションが増え一体感も生まれているようです。社内資料のPDF化など、インターネット環境下であればどこでも仕事ができるように業務の効率化を推進してきました。テレワークやテレビ会議などへの移行も比較的スムーズだったのではないでしょうか。採用活動についても動画配信サイトの活用やオンライン面接もいち早く導入しています。私が一番嫌いな言葉が「こうあらねばならない…」とか「こうじゃなきゃだめ…」なのです。思考が停止しちゃいますよね…。私自身が率先してチャレンジしている姿を見せていきたいと思っています。強いものが生き残るのではなく、変化に対応していくものが生き残る…ですね。

編集部：これからチャレンジしていくことは？

吉良社長：会社の中を綺麗にして、世界に羽ばたいていけたらと思っています。綺麗にするとは、仲間を信じ合える環境をつくるという事です。余計なことを考えず、社員全員がシンプルにビジョンや理念の実現に向かって一致団結したらすごくないですか？…。とにかく私は皆に楽しんで仕事がして欲しいと思っています。

編集部：求める人物はどんな方ですか？

吉良社長：一言でいうと「やる気」のある人ですね。やる気があれば積極性というのも必然的にでてきますし、チャレンジしていきますので、やはり「やる気」が一番だと思いますね。会社としては、そのやる気を維持できるような環境や場を提供していきたいと考えています。

編集部：プライベートでも健康には気をつけられているとか・・・

吉良社長：実はもう一枚名刺がありまして…。クロスフィット熊本というトレーニングジムを経営しています。歩く・走る·起き上がる·拾う·持ち上げる·押す・引く·跳ぶなど、日常生活で繰り返し行う動作をベースにしたトレーニングで、基礎体力アップとともに生活動作が楽になるのを実感できます。私はほぼ毎日朝から体を動かし、汗をかき、すっきりした状態で仕事に臨んでいます。気持ちいいですよ～。