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海外店舗数日本一、熊本から世界への挑戦を続ける重光産業株式会社の重光副社長

海外店舗数日本一、熊本から世界への挑戦を続ける重光産業株式会社の重光副社長

重光悦枝(しげみつよしえ):重光産業株式会社・代表取締役副社長。熊本市出身。大学卒業後、地元ラジオ局のキャスターとして活躍。その後単身渡米し、NYの大学でホテル・レストラン経営を学ぶ。1996年熊本に戻り、同社に入社。取締役広報室長を経て、2014年、代表取締役副社長就任。

「味千」に込めた創業者の想い

ココクマ編集部(以下、編集部)常に新しいチャレンジをされていますね

重光悦枝副社長(以下、重光副社長)支えてくださる皆様のおかげで一歩ずつ新たな取り組みを進めています。現在、海外は14か国で737店舗、国内では71店舗、お馴染みの「味千拉麺」を中心に、熊本ラーメンの代名詞でもある「桂花ラーメン」、そのほか「劉拉麺」「伝統熊本豚骨 伝」「千のちゃんぽん 湖東亭」「味千飯店」「麺や肉虎」、今年3月にはアミュプラザくまもとに「火の国厨房」を加えた計8ブランドを展開しています。重光産業の使命である「食を通しておなかも心もいっぱいに(一杯)!」のもと、全世界で1日約10万食以上を提供させていただいています。

編集部 商品開発にも力を入れていらっしゃいますね

重光副社長 今年の7月には「特選味千ラーメン」や「匠ラーメン」などの、お持ち帰り商品のリニュアルを行いました。パッケージも一新し、美味しさはそのままで手間を省くという商品です。これまで半生麺タイプの商品は、麺とスープは別々に作る必要がありましたが、これは鍋ひとつで簡単に作れる商品です。家庭で食事をする機会が増えていますので、手軽においしく食べていただけるように商品開発には力を入れていきたいと考えています。また、熊本ラーメンと言えば「マー油」が特徴的な調味料ですが、当社の工場では一般的な「黒マー油」だけではなく、唐辛子を使用した「赤マー油」やハラペーニョを使用した「緑マー油」など様々なマー油を製造しています。恐らく、熊本では弊社でしか作らないのではと…。実は、マー油や麺・スープなどは受託生産も行っており、食品メーカーさんになどにも提供しています。

編集部 熊本の企業とのコラボレーションも積極的ですね

重光副社長 以前から、やりたいと思っていたことが、やっと実現できたといった感じです。創業260年の老舗味噌醤油メーカーである山内本店さんの「まぼろしの味噌」を使用した「まぼろしの味噌豚骨ラーメン」や、発芽大豆由来の植物肉の開発・製造を手掛けるDAIZさんの「ミラクルミート」を使用した「ミラクルミート餃子」などを店舗で提供させていただいています。熊本にはすばらしい企業がたくさんありますから、これからもコラボレーションを推進し、熊本を積極的にPRしていきたいと考えています。

編集部 先代の社長がラーメン店をしようと思ったきっかけというのは?

重光副社長 先代の社長は元々下請けで棒状のインスタントラーメンを作っていました。しかし親会社の経営縮小整理のあおりを受け倒産してしまったんですね。周りから社員や友人が去ってしまい孤独にさいなまれる父の姿を見て、「この人はこんな風に終わる人じゃない!」「ラーメン屋でもしましょうよ!」と、母が父の背中を押したのがきっかけです。母が駆けずり回って、やっとわずかばかりの資金を工面して開業することができました。母の強い愛情で父が復活を遂げました。父の人生がもう一度花を開いたのです。

編集部 大変な苦労をされたのですね。

重光副社長 そうですね、1968年に開業した一号店は熊本県庁前、わずか7坪8席の小さなお店でした。店舗にスープを作るスペースが無く、自宅の裏庭でスープを炊き、母が自転車で運んで・・・というような状況でのスタートでした。創業から5年くらいたった時に、「ぜひ味を教えてください」という方が現れて初めてのれん分けをしました。そこから広がって今に至ります。

「味千拉麺」の屋号には先代社長の3つの想いが込められています。「千」は「万願成就」の一歩手前であることから、常に謙虚に向上心を持って精進していこうということ。自身の守り神である「千手観音」の、たくさんの人を救う慈悲深い千本の手のように、一杯のラーメンを食べて頂くことによってたくさんの人たちに幸せになって頂きたいということ。そしていつの日か「千の仲間」を創り世界の平和に貢献したいということ。

これらの想いを胸に、私たちの代で父が願った「千の仲間」創りを達成して次の世代にバトンを渡したいと思っています。

日本発飲食チェーン店で海外店舗数日本一

編集部 海外進出のきっかけは?

重光副社長 先代の社長は早くから海外に目が向いていました。屋号の想いにもある通り「千の仲間を創りたい」という気持ちが強く、また当時は珍しかった「フランチャイズ」という概念を知り、いつかは海外でフランチャイズ展開したいという思いがあったんですね。

1996年、香港での出店をベースに、「うちの国でもやりたい!」と手を挙げてくれたオーナーと契約。現在では世界13か国に出店しています。海外に進出している日本発の飲食チェーン店の中では、「吉野家」「モスバーガー」などのナショナルブランドを抑え海外店舗数が圧倒的に1位ということで、テレビでも特集して頂きました。

最近では。ニュージーランドやパナマ、フィンランドのヘルシンキ、モンゴルのチンギスハーン空港に出店しました。南米のコロンビアからも問い合わせをいただいております。

編集部 海外での成功要因にはどのようなことが考えられますか?

重光副社長 スピード感とパートナーシップですね。日本はどちらかというと論議を尽くし慎重にプロジェクトを進めて行きますが、海外はどんどん走りながらその都度修正して行きます。そのスピード感がさらに速くなっていて、猛スピードで世の中が変わっている。これについて行くという意識を持って海外での事業を展開しているのが一つの要因かなと。スピード感を持つとチャンスも逃さないですよね。

また、国によって商習慣や法律も違いますし、私たちではコントロールできないような問題もあります。国と国の政治的な衝突で大規模なデモが起こったり、東日本大震災のときには放射能の関係で日本から材料を輸出できないというときもありました。

でもその時に、自国を知り尽くしている心強い各国のパートナー(店舗オーナー)が助けてくれた。彼らのおかげで問題をクリアすることができ、最終的に問題解決へ繋がっていると思います。

私たちは「感謝」と「奉仕」を社訓に掲げています。たくさんの人に支えて頂き、たくさんのお客様が食べてくださっているおかげで今の味千拉麺がある。これを理解してくださる方々に、パートナーをお任せしています。

編集部 これからも海外展開には力を入れていかれますか?

重光副社長 世界中に一人でも多くのラーメン大好き人間をつくって、平和な世の中のづくりに貢献するという、ビジョン実現のためにもチャレンジしていきます。これまでは、国ごとの食文化を尊重しながら商品を提供してきましたが、「ラーメン」自体が日本食として認知され、熊本の味千ラーメンの味を、そのままの受け入れてくださるようになってきました。また、冷凍技術や物流システムの進歩がすさまじいですから、熊本でつくった麺やスープを、どこにでもお届けできますので、チャンスは十分にあると感じています。また、思想や宗教の違いなど多様性の時代ですから、健康やビーガン・ハラールなどへの対応へも取り組んでいきます。

編集部 どんな人材を求めていらっしゃいますか?

重光副社長 ポジティブでチャレンジ精神のある人がいいですね。うちの社員は本当にチャレンジ精神旺盛なんですよ。例えばいま香港で店舗指導をしている社員は、元々英語や中国語が流暢だったわけではないので、現地で言語を覚えて、現地スタッフに技術を教えています。ニューヨークでの店舗オープン時に手を挙げてくれたアルバイトの子は、帰国後正社員になって、今では取締役国際部長です。チャレンジしたいという人には場を与えますし、私たちもそれを全力で応援しますよ。

世界から見ても熊本は本当に良いところ

編集部 熊本の女性経営者として感じていらっしゃることはありますか?

重光副社長 熊本の女性経営者は皆さん元気ですね。よく食べ、よく飲む!(笑)そして軽やか。すごいことをしているのに肩の力が入っていなくて、さらには子育てもしながら、仕事もしながら、対外的なお付き合いもしながら・・・。色々なことをやっているからとても尊敬します。そういう方がたくさんいらっしゃるんですよ。

また、私は「グローバル女子会(GWA)」の理事をしています。海外で起業している女性と、日本で起業している女性を繋ぐ活動をしているのですが、海外で起業している女性はこれまた本当に元気。熊本にもそういう人がもっと増えて、前に出てひっぱってくれたらいいなと思いますね。

編集部 海外もたくさん経験されていると思いますが、副社長から見て熊本はいかがですか?

重光副社長 本当に熊本は良いところだと思います。仕事柄あちこち飛び回っているので、よく「東京に住んだ方がいいんじゃない?」と言われるのですが、やっぱり私は熊本人で、熊本LOVEですから(笑)。どんなに仕事で疲れていても癒される場所が熊本だと思います。特に阿蘇の温泉がお気に入りで、大好きな黒川温泉に行くと「帰ってきた~」という気持ちになります。大観峰から阿蘇の雄大な景色を見て、美味しい空気を感じるとリセットされますね。

今はアジアの国々もすごく発展していて、ジャカルタ、バンコク、フィリピン、マニラも・・・熊本よりはるかに大都会なんですよ。それに比べると熊本は小さいけれど、程よく都会で利便性もあるし、中心部から少し移動すると山や海といった大自然もある。何より食べ物が美味しくて、安全で安心して暮らせる。水道をひねればミネラルウォーターが出てくるし、こんなに恵まれた環境は世界的に見てもあまり無いですよ。

また、コミュニティの規模間も丁度いいのではないでしょうか?直ぐにつながりたい人とつながれる(笑)。それは新しい仕事の創造にもつながります。そういう場所で仕事も生活もできるっていうのは、最高なんじゃないかなと思います。

※写真撮影時のみマスクを外しています。

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