熊本の未来をつくる経営者
2023年に新工場が稼働。商品開発力と海外展開で更なる成長を目指すリバテープ製薬株式会社の橋爪社長
橋爪淳(はしづめじゅん):リバテープ製薬株式会社・代表取締役社長。佐賀県出身。福岡大学卒業後、㈱ダイエーに入社。店舗管理・総務人事を経て、1993年リバテープ製薬㈱入社。総務部長、取締役管理本部長、取締役営業管掌を経て、2020年より常務取締役。22年7月代表取締役社長就任。
19期連続増収。創業144年の老舗企業の7代目社長に就任
ココクマ編集部(以下、編集部):社長ご就任おめでとうございます。現在のお気持ちは?
橋爪淳社長(以下、橋爪社長):144年という歴史や責任の重みを感じています。
編集部:新社長としての方針などお伺いしたいのですが?
橋爪社長:社長に就任して最初の所信表明で、3つの方針を伝えました。
1つ目は売上拡大です。昨年は念願だった売上50億円を達成できました。これはお取引させていただいている製薬会社や医薬品卸売会社などのお客様との関係があってこそ。その関係は今後も大事にしながら、将来的には売上100億円を目指せる企業にしていきたいと考えています。そのためにも新たな販路開拓や商品開発で売上の柱をつくっていかなければなりません。そこで、2022年4月にマーケティング部門を新設しました。医療業界に限らず、さまざまな業界にもアンテナを張り、当社の技術を使った製品開発を目指していこうという目標を打ち出しました。
2つ目は生産性向上です。少子高齢化や労働人口の減少など、人材確保が困難となっています。このような状況下、現場の効率化、省人化の努力が引き続き必要だと考えています。現在も生産ラインの自動化を進めていますが、商品アイテム数も多く製造現場はまだ改善の余地がありますので、今後も自動化機械の導入やロボット化を進めていきたいと考えております。今期中には包装用のロボットを新たに導入する予定もあります。
3つ目は企業価値の向上です。社員がリバテープ製薬に入社して本当によかった、誇りに思うという会社にしていきたいと考えています。売上や利益の確保、その結果として給与待遇を上げていくということは当然ですが、よい会社の定義はそれだけではありません。社員満足度の向上・地域貢献・SDGs活動・福利厚生の充実・教育投資など、あらゆることに取り組んでいきたいと思っています。自己成長が一番のモチベーションになると思っていますので、社員教育には特に注力していきたいと考えています。
編集部:あらためて現在の商品構成を教えてください。
橋爪社長:現在は、病院向け医薬品や医療品、ドラッグストア向け医療品、化粧品とバリエーションを拡げています。主力製品は、医療機関向け外用消毒剤「スワブスティック」「スワブパッド」です。スワブスティックについては、全国の約50%の病院(クリニック・個人病院を除く)で使用いただいています。
売上比率は、医療機関向けの消毒剤や手術や診療の際に使用するテープ、注射絆などが52%、ドラッグストアや薬局など一般消費者向けの絆創膏などの販売が35%、残りの13%が化粧品や消毒用アルコール、海外向製品などになります。
編集部:業績好調の要因は何ですか?
橋爪社長:要因は、主要取引先との関係性を築いてきたことで強固な基盤ができていることだと思います。2022年3月の決算では売上高51億5,000万円、19期連続の増収を達成しました。医療用の大型絆創膏や消毒剤も堅調ですが、ここ最近に限っていえば、コロナワクチン接種向け注射絆の需要が伸びています。これは相当な需要でしたので、当時は社員一丸となって臨時の生産体制を組んで対応をしました。社会的責任のある商品を提供しているという使命感を持って、社員の皆が対応してくれたことを誇りに思います。
生産体制を強化し、積極的な新商品開発・海外展開をすすめる
編集部:マーケティング部を新設の狙いは?
橋爪社長:20年ほど前までは家庭用絆創膏「リバテープ」が売上の主力製品でした。しかし人口減少や少子化、家庭での料理離れなどもあり市場は縮小が見込まれていたため、当時は販路拡大のための病院訪問をスタートさせました。ドクターや看護師長、感染対策室長、事務局長などたくさんの方にお会いし、悩みや課題・要望などを徹底的にお聞きするよう努め、収集した情報を基にお客様と一緒に開発した商品が「スワブスティック」や「スワブパッド」で、現在の当社を支える主力商材に成長し、業績アップに繋がっているという歴史があるのです。
現在も営業担当者がお客様のところに訪問し、現場の声を拾って新たな商品開発のタネを模索しているのですが、売上を上げることが主業務な中ではニーズを拾いきれない部分があることを感じていました。そのため専任者をつけようという方針に決めました。
編集部:現場ニーズをつかみ、自社の技術を活かした新商品開発につなげていくということですね。
橋爪社長:はい。当社では大きく医薬品・医療機器・化粧品の3つのグループに分かれて商品開発をしています。たとえば化粧品の分野では馬油を使った「リマーユ」シリーズやスイゼンジノリから抽出される保湿成分「サクラン」を配合した化粧水「咲水(さくすい)」シリーズなど、地元の原料を使った化粧品を販売しています。医薬品の分野では、綿棒消毒剤(スワブスティック)がまさに現場のニーズを反映して開発した商品です。
お客様や製薬メーカー・医薬品卸売企業などのお取引先、病院の看護師さんやドクターが困っているという情報をヒントに、産官学の連携や協業先の研究開発部門と一緒に新商品を開発していくスタイルが強みであり、今後も積極的に開発に取り組んでいきたいと思っています。
編集部:海外展開はいかがですか?
橋爪社長:現在の、海外売上比率は6~7%程度です。今後はさらに伸ばしていけるポテンシャルがあると考えています。海外向けの商品としては、透析患者向けの止血絆を検討しています。透析患者さん向けに独自の薬剤を添付した商品として国内で先行販売しているものを、まずは中南米に、そして順次アジア、中近東と販路を構築しているところです。海外マーケットは国内の10倍ありますので、設備投資による安定供給にも力をいれているところです。
編集部:それで新工場を建設されているのですね。
橋爪社長:菊池市七城町に約15億円を投資し新工場棟を建設しています。22年11月には竣工、23年春には稼働予定です。今回の工場建設は、経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の認定を受けて実施する事業で、当社の工場が認定されました。本事業は今回の新型コロナ感染症のような有事の際にも必要なものが優先供給される体制をつくることが目的となっています。これにより、消毒用エタノールはこれまでの3倍となる月産24tを確保でき、ワクチン接種向け注射絆、大型の絆創膏などの製造ラインを拡充、生産効率を高めていきます。
自分の子供や身内を入社させたいと思える会社にしたい
編集部:どんな会社にしたいですか?
橋爪社長:目指しているというより自然とそうなったのですが、先代の社長の頃から常々言っているのは、「自分の子供や身内を入れたくなるような会社にしよう」ということです。結果として、現在は夫婦、兄弟、親子も含めて社内に25組くらいいます。全社員の実に6分の1くらいですね。
編集部:それはすごいですね。
橋爪社長:働きやすさの一つの証明かなと思っています。女性の産休育休、その後の職場復帰も100%が実現できていますので、そこはよいところかなと思います。今の社風を大事にしながら、福利厚生や教育制度は引き続き力をいれていきたいと考えています。全体の研修としてはコミュニケーション能力の強化ということでコーチング研修を行っています。また、業務上必要なものや関心のあるものは、会社負担で好きな研修を受講できるような制度もあります。
編集部:新商品開発や海外展開を積極的に進めていかれるので、ポジションがあってチャレンジできるチャンスがありますね。
橋爪社長:やろうと思った人には可能性が拡がる会社だと思います。スキルに応じて評価・抜擢する仕組みもありますし、声を出してくれたことをきっかけに、部署異動や新業務への転換の実績もあります。私自身、社長になりましたが、なるべく社員全員と触れ合えるように、月に1度は必ず本社、各工場を回って多くの方と話をする機会をもっていきたいと思っています。
編集部:どんな人材に来ていただきたいですか?
橋爪社長:基本的なことですが、素直で明るいというのが一番だと思います。きちんと挨拶ができて、最初は何でもやろう、吸収していこうという気持ちがないと早く成長できません。ですが、YESマンになってしまっても困りますので、周囲に対しての素直さを持ちつつも、自分の考えをあわせていくバランスが取れる人がよいですね。そういうことがコミュニケーションの質につながっていくと考えています。
※写真撮影時のみマスクを外しています。