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半導体・医療・エネルギーへ、熊本発の成長エンジンを育てる投資ビークル、肥銀キャピタル株式会社の田島社長

半導体・医療・エネルギーへ、熊本発の成長エンジンを育てる投資ビークル、肥銀キャピタル株式会社の田島社長

田島功(たじまつとむ):肥銀キャピタル株式会社 代表取締役社長。1962年東京都出身。東京大学卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。グローバルトレードファイナンス営業部長などを歴任し、2012年5月肥後銀行に入行。取締役常務執行役員市場営業部門長、取締役専務執行役員経営管理部門長を経て、2025年肥銀キャピタル株式会社代表取締役社長に就任、現在に至る。

地域の価値を投資で掘り起こす、肥銀キャピタルの使命

ココクマ編集部(以下、編集部):これまでのご経歴を教えてください。

田島功社長(以下、田島社長)2012年に肥後銀行に入行し、コンプライアンス・リスク管理・市場金融分野で取締役を務め、2025年4月に肥銀キャピタル(株)の社長に就任しました。また、メガバンク(都銀)時代は、海外や金融マーケットを中心にキャリアを積み、ボストンやニューヨークなど10年以上海外赴任経験もあります。最後は「貿易金融」のグローバルヘッドを務め、ロンドン、シンガポール、ニューヨーク、香港、上海、ムンバイ、サンパウロといった各地の部下を束ね、世界規模で事業を動かす役割を担っていました。ですから、日本国内での業務、特に地域経済に深く関わるのは新鮮でもあり、大きな学びの場でもあります。

編集部:肥銀キャピタルの事業内容を教えてください。

田島社長弊社は肥後銀行のグループ企業として、1996年に肥銀ベンチャーキャピタルとして設立、2008年に現在の肥銀キャピタルに社名変更し現在に至ります。業務内容は投資業務(ファンドの組成と運用)、資本政策や経営コンサルティングといった事業成長支援を行っており、運用ファンドは肥銀ベンチャーファンド2号や肥銀地域共創ファンド、肥銀ブリッジファンドなど、合計で12本412億円です。

肥後銀行のパーパスに準じ、私たちは「地域の未来を創造する」ための投資ビークルとして存在しています。地元に眠っている魅力ある企業や技術を発掘し世に出すこと、そして外部から良質な企業や人材を呼び込むこと。その両輪が重要だと考えています。

編集部:今後の取り組みを教えてください。

田島社長インダストリー別のポートフォリオ管理に取り組んでいきます。お客様から資金を預り運用する以上、業種別やヴィンテージ(投資時期)管理を行って、「ここに預けて大丈夫だ」と思っていただけるような体制を構築したいと考えています。特に熊本の特徴を生かし、「半導体」「医療」「エネルギー」は、今後の成長が期待される分野だと考えています。

半導体分野については、TSMCの進出により、熊本が全国的にも重要な拠点となりました。とはいえ、地元の企業がTSMCの一次サプライヤーに加わるには、技術力や信頼性といった面でハードルがあります。私たちの役割は、そのギャップを埋めること。技術力のある企業を発掘し、磨き上げ、必要な人材やネットワークとつなげていくことで、地元発のサプライヤー育成につなげていきたいと考えています。

医療分野では、熊本大学が研究力を活かしたベンチャー育成に力を入れており、熊本から世界へ羽ばたくベンチャーを輩出するモデルとして、非常に注目しています。エネルギー分野は、再生可能エネルギーやデータセンター関連のインフラ投資など、今後の社会変化を見据えた投資対象です。デジタル社会の発展により電力需要が高まるなか、熊本でもそうした需要に応える仕組みづくりが必要です。

編集部:事業承継についても重要な柱として位置づけているとのことですが、その背景を教えてください。

田島社長これは少子高齢化という課題にどう対応していくかが重要で、地域の未来を守るためにも力を入れていきたいと考えています。地方は優良企業であっても後継者不足という課題に直面しています。我々は、そうした企業を「肥銀ブリッジファンド」という事業承継ファンドで支援し、必要に応じてバリューアップを図ることで、次の経営者に橋渡しをしています。たとえば、経営改善の支援や企業価値の可視化によって、買い手の目にとまるような仕組みを整える。これは単なる売却ではなく、企業の将来を見据えた支援です。我々が投資して関わった企業が、地域に残り、地域の雇用や産業を支えていく。そうした流れをつくっていくことが、肥銀キャピタルの存在意義だと思っています。

熊本に眠るポテンシャルを可視化し、未来の産業をつくる投資の力

編集部:熊本はベンチャー企業にとってどのような場なのでしょうか?

田島社長:熊本は非常に恵まれていると思います。肥後銀行と県や市の関係は非常に密接で、地域全体で物事を進めていける雰囲気や枠組みがかなり整ってきていると感じます。特に力を入れているのが、「スタートアップワールドカップ」ですね。これは米国のペガサスキャピタルという、シリコンバレーのVCが主催するもので、日本では東京・仙台・熊本の3都市で予選が行われています。「KUMAMOTO TECH PLANTER」もそうですが、このようなイベントを熊本に呼び込むのも、我々の重要な役割のひとつだと思っています。

 

編集部:注目している投資先は?

田島社長:すべての投資先が魅力的ですが、医薬品開発を行っている熊本大学認定ベンチャーの「(株)StapleBio」は注目ですね。疾患タンパク質の発現量を制御することが出来る、血中安定性に優れた人工核酸「Staple核酸」を用いた希少疾病・新興感染症等の医薬品を開発しており、創薬プラットフォーマーになる可能性もある会社です。2024年の「スタートアップワールドカップ」では、日本代表としてシリコンバレーでプレゼンテーションを行っています。

もう1社は「(株)Piezo Sonic」で、八代市と連携協定を結んで、熊本に本社を移してきました。超音波モーターやロボット製造に関する事業を展開していて、宇宙開発の発展に大きく寄与することが期待されている会社です。

このように独自性のある企業が熊本で活躍し始めています。私たちは単なる資金提供だけでなく、ネットワークやノウハウ、人的支援を通じて、そうした企業の成長をサポートしています。熊本から次のスタートアップを生み出すために、日々全力で取り組んでいるところです。

編集部:「つなぐ」ことが貴社の役割ということですね。

田島社長:どんな仕事も一人で完結することはできません。ですから、どれだけ広く強いネットワークを構築し、活用していくかが重要です。私もこの業界は初めてですが、これまでのキャリアで培ったネットワークは私の強みだと考えています。
最近は、ベンチャー協会の総会など、様々な会合にも出席し、いろんな方とお会いしてつながりを築いています。

プロフェッショナルを育てる組織文化と、人材に求める覚悟

編集部:肥銀キャピタルでは、どのような人材が活躍し、今後どんな人材を求めているのでしょうか?

田島社長:現在は16名体制で、銀行からの出向者が中心です。今後は、外部から専門人材を積極的に採用していきたいと考えています。ベンチャー投資や事業承継支援には、金融知識だけではなく、高い専門性が求められるからです。半導体分野ならば、装置や製造工程・材料について、医療なら疾患別の知識まで踏み込まなければ、本質的な判断はできません。知見があればあるほど、より高いレベルでのチェックが可能になります。優秀な人材がそろえば、高度なレベルの議論ができるようになり、判断の精度が高くなります。私たちがレベルアップすることが、結果的に熊本のためにもなると考えています。

さらに、投資という業務の魅力は「インベストメント・ディシジョン」、つまり最終的な投資判断を担えるということです。これは非常に責任のある仕事ですが、自らの問いを持ち、知見とネットワークを武器に道を切り拓いていくという醍醐味があります。

編集部:そうした成長の機会や制度も整っているのでしょうか?

田島社長:はい。肥後銀行では「プロフェッショナル職」というジョブ型の制度を導入しており、専門性の高い人材が異動せずにキャリアを積めるようにしています。また、資格取得や大学(院)への通学などの可能性もあり、各人のキャリアプランをサポートしています。肥銀キャピタルでも同様に、腰を据えてプロとして成長していける環境を整えています。

編集部:数値目標などはあるのでしょうか?

 田島社長年度目標は当然あります。ただ、一番重要なのは「ネットアセットバリュー(NAV)」、つまり資産価値が増えているかどうかだと思っています。投資の結果が、資産としてどう増えているかが見える形で残ることが大事です。単年度の収益も当然見ますが、我々のビジネスは性質上、単年度で成果が見えるとは限らない。むしろ、悪い時期が続いて、最後にドカンと成果が出る、そんなモデルです。だからこそ、NAVをきちんと見ながら、長期的に成長を追うのが大切だと考えています。

 編集部:短期ではなく長期的な伴走支援と経験の積み重ねが大事になりますね。

田島社長我々がやっているのは「他人様のお金を預かって、それをリターンに変える」という業務です。そして、最終的には投資判断、つまり「インベストメント・ディシジョン」が問われます。これが本当に重要なんです。

私はインベストメントの現場で実務経験をつみ、知識をベースにした判断力、分析力が鍛えられました。こういう仕事って、本当に楽しいですよ。もちろん楽をしようと思えばできてしまうんですが、逆に言えば、自分で問いを立てて、自分で追求していける面白さがある。この仕事は、誰にでも任せられるものではありません。でも、必要な知見を備えて、しっかり戦える人なら、非常にやりがいがある世界です。自分が関わった案件が世に出るという喜びは何物にも代えがたいものです。

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