熊本の未来をつくる経営者
肥後銀行グループの総力を結集!投資と成長支援で熊本経済を活性化する。 肥銀キャピタル株式会社の横山社長
横山輝(よこやまあきら):肥銀キャピタル株式会社・代表取締役。熊本県出身。1996年に株式会社肥後銀行に入行。融資業務や審査業務を経験し、2016年4月人事部に異動。新入行員や管理職向けの人材育成を担当。18年肥銀ビジネス教育株式会社の立上げに参画。22年4月肥銀キャピタル株式会社に出向、取締役常務執行役員。23年4月より現職。
キャピタルゲインではなく、持続可能な熊本の未来を創ることが目的
ココクマ編集部(以下、編集部):事業内容を教えて下さい。
横山輝社長(以下、横山社長):弊社は肥後銀行のグループ企業として、1996年に肥銀ベンチャーキャピタルとして設立、2008年に現在の肥銀キャピタルに社名変更し現在に至ります。業務内容は投資業務(ファンドの組成と運営)、資本政策や経営コンサルティングといった事業成長支援を行っており、運用ファンドは肥銀ベンチャーファンド2号や肥銀地域共創ファンド、肥銀ブリッジファンドなど、12本410億円です。
投資会社ですからキャピタルゲインの獲得も重要ですが、私たちには明確な投資・育成スタンスがあります。1つ目は、お客様に対し多様なファイナンス手法を活用し、円滑な事業継続を支援すること。2つ目は、肥後銀行グループの総合力とネットワークを活かし、お客様の企業価値向上を実現すること。3つ目はお客様と肥後銀行グループとの共存共栄により、持続可能な熊本の未来を創ることです。
ですから、私たちは未上場企業に対して出資するだけではなく、投資先が成長するためにハンズオン型で経営支援まで行っています。特に、熊本のベンチャー企業に対しては、事業に深く参画し、ステージごとに必要となる成長支援を徹底的に行っていきます。技術革新やイノベーションによって、熊本から新たな産業を生み出していくことと、よりよい未来に導く起業家が目標達成するための伴走支援が、私たちの役割だと思っています。
編集部:投資先は熊本の企業に限っていないようですが・・・
横山社長:もちろん熊本や九州の企業が基本ですし、大半は熊本の企業です。私たちは地方銀行のファンドですから、キャピタルゲインだけのための投資は全く考えていません。東京の企業に出資するのも、「このサービスが熊本にあれば経済が活性化する」「熊本の観光事業に役立ててほしい」など、「熊本のプラスになること」を選定基準にしています。
例えば、WAmaizing株式会社さんは、インバウンドプラットフォーム事業を手掛けておられ、アジア系を中心とした会員向けに、熊本の観光地や名産品をPRすることでインバウンドに繋がるのでは?と考え出資しています。neuet株式会社(チャリチャリ)さんは、熊本の交通事情の改善にプラスになるのではないかと、投資とともにポートづくりにも協力しています。また、「食べチョク」を運営する株式会社ビビットガーデンさんであれば、生産者さんが全国の個人や法人に直接販売できるようになりますので、付加価値の高い青果物づくりに挑戦でき、収入アップにもつながる…など、熊本の活性化という観点が必ず入っているのです。
編集部:ありがたい観点ですね! 熊本のベンチャー企業に特色はありますか?
横山社長:熊本はライフサイエンス・バイオ系のシーズが多いですね。熊本大学の医学部や薬学部は非常にレベルが高く、「がんの治療薬等を開発したい」「この薬で一人でも多くの患者を治したい」という志をお持ちの研究者が多くいらっしゃいます。特に創薬はとても労力がかかり融資では難しいんです。でも投資は可能です。薬剤や医療技術を世に出すお手伝いをすることで、熊本発の創薬ベンチャーが誕生して、これまで治療できなかった病気が治る、そんな未来を一緒に創れたら本当に嬉しいですよね。
編集部:熊本は上場企業が少ないですが何が足りないんでしょうか?
横山社長:私は人的リソースの問題が大きいと考えています。企業が成長していくためにはガバナンス含め組織を創らなければならないわけですが、東京より熊本は人的リソースが足りていないと感じます。その点、東京のベンチャー企業はすごいチームが組成できていますもんね・・・。魅力的な企業を創り出すことで、魅力的な人材が熊本に来てくれるような良い循環ができたらいいなあと思っています。そういう目線で企業を見ることができるのも人事関連業務の経験があったから。今の仕事にとてもプラスになっています。
そういう意味では、資金提供だけでは解決できない問題がたくさんあります。弊社自体は10数人の会社ですから、私たちの力だけでは何もできませんが、肥後銀行グループ全体のネットワークを活用できる点が独立系のファンドさんと違うところです。人材が必要であれば肥銀オフィスビジネスがあるし、人材育成が必要であれば肥銀ビジネス教育を活用し、リースが必要なら肥銀リース、ネットワークが必要なら肥後銀行の支店等のネットワークを紹介することができます。課題解決の支援方法として、肥後銀行グループの総力を使えるという弊社の強みを活かし、上場含め成長意欲の高い企業を応援したいと思っています。
大学発ベンチャー・スタートアップ企業の創出を目指し熊本大学内にサポートオフィスを開設
編集部:東京と比べて、熊本では投資先を見つけるのが大変なのでは?
横山社長:弊社では、そこは課題とは認識していませんね。ベンチャーキャピタル業界は銀行とだいぶ違うんですよ。銀行は融資シェアとかメインバンクとか、よくランキングにも出るし意識されます。しかしベンチャー業界は、上場するまでに1つのファンドでこと足りるかというと、足りないケースがほとんどです。例えば「この会社は営業圏として福岡とのネットワークを作らせたい」と思えば、福岡のベンチャーキャピタルさんを紹介したり、逆に都市銀行さんが投資をされていて、「この業務は地域の活性化につながるから、地銀系と一緒にやった方がベター」と、私たちを紹介してくれたりするわけですよ。あまりエリアが固定されるとか、ネットワークがなくて投資先がないというのは、私は現状では感じていません。
編集部:「肥銀アントレプレナーサポートオフィス」開設の意図は?
横山社長:23年10月に大学発ベンチャー・スタートアップ企業の創出・拡大を目的として、株式会社肥後銀行と共同で、「肥銀アントレプレナーサポートオフィス」を、熊本大学黒髪南キャンパスのオープンイノベーションセンター内に開設しました。これまでも肥後銀行グループでは、大学の研究シーズを社会実装することにより世界を変えたいという熱い想いを持ったアントレプレナーに対し、熊本県、熊本大学、熊本県工業連合会、株式会社リバネスと組成した次世代ベンチャー創業支援コンソーシアムでピッチコンテストやスクール、マッチング活動等を行ってきました。 その熱い想いを持ち起業したアントレプレナーを創業間もない段階からしっかりと支えていくことができたら、芽が出る企業が増えるのではないかと考えています。熊本大学に関わらず、県内の各大学とも連携しながら、新たな大学発ベンチャー創出を図っていきます。
編集部:投資先を探すのではなく、創り出すということですね?
横山社長:おっしゃるとおりです。起業する段階から産学官連携できるような仕組みができていれば、投資先はたくさん出てくると思います。逆に、投資することよりも、成長支援をしていくことが大事になるので、弊社でもサポートできる人材を採用していかなければならないと考えています。
キャピタリストの経験と地域愛に溢れた方を採用したい
編集部:どんな人材を求めていますか?
横山社長:VCで投資業務・伴走・イグジット業務の経験者がベストではあります。ただ、私たちの投資スタンスはあくまで熊本や九州が主語。だから「この地域の企業の成長を応援する業務に携わりたいんだ!」という熱意の方が大事かもしれません。知識などは後から身に着けることができます。地域を思う気持ちが欠落していて、「カッコイイ投資家やって、儲けりゃいいじゃん」というスタンスだと、弊社では長く続かないのではないでしょうか…。
編集部:想いの強い人ですね!
横山社長:もう少し具体的に言うと、(1)投資を通じて様々な事業に自ら関与することで、熊本や九州の産業拡大・活性化につなげたいといった地域への想いが強い人。(2)投資先という多種多様な業種の起業家や経営者に触れることで、自分自身の知見やノウハウを高めたいという向上心にあふれた人。(3)マーケット・トレンド・時流を把握し、事業の将来性・拡大可能性を的確に見極める冷静な分析力を持つ人。(4)投資を通じた企業成長支援に興味があり、やる気・熱意を持った人。ですね。
編集部:銀行組織の中でこの事業に関わり続けることは可能なのでしょうか?
横山社長:銀行の子会社ですから定期的な人事異動があります。肥後銀行では、2023年に初めて専門職コースを設置しました。私は投資業務も専門職の定義にあてはまると思っています。ベンチャー企業は投資して1~2年でやっとよちよち歩き。自走できるまで5~10年はかかります。ですから最低でも弊社への出向は5~10年のスパンでとリクエストしていきます。また新たにキャリアチャレンジ制度を設置してくれました。在籍している2名はチャレンジ制度を利用し、自らの意志で出向してくれた人材なんです。彼らはもちろん投資の経験はありませんが、このチャンスを活かし成長しようと一生懸命勉強していますので、しっかり経験を積んでもらえるよう長期スパンで育成したいと考えています。現在は肥後銀行を窓口に採用活動を行っていますが、今後は肥銀キャピタルのプロパーとして直接雇用も進めていきたいと考えています。