熊本の未来をつくる経営者

「熊本・八代から男子プロバレーボールチームを!」スポーツの力で地域を盛り上げる、一般社団法人熊本スポーツクラブの早瀬代表
早瀬 雄太(はやせ ゆうた):一般社団法人熊本スポーツクラブ 代表理事。熊本県八代市出身。秀学館高校を卒業後、父の営む飲食業に従事。その後、営業職を経験しながら、怪我をきっかけに整体の道へ。地元整骨院で修行を積み、2022年2月に整体院を開業。同年9月に株式会社美整健を設立。2024年1月には一般社団法人熊本スポーツクラブを設立、男子バレーボールチーム「熊本Virex」を創設。地域密着型のクラブとして「SV.LEAGUE GROWTH」参入を目指す活動を展開している。
一人の夢ではなく、地域の夢に変わっていく
ココクマ編集部(以下、編集部):「熊本ヴィレックス」立ち上げの背景から教えていただけますか?
早瀬雄太代表(以下、早瀬代表):私自身も高校までバレーボールをしていましたし、弟は鎮西高校のバレー部で、春高バレーで準優勝や世代別の日本代表に選ばれるなど、第一線で活躍していました。また、サフィルヴァ北海道(現:北海道イエロースターズ)でGM補佐として V. LEAGUE DIVISION2 の優勝を経験したことで、「熊本でもこんなチームが作れたらいいな」という想いを聞き、一緒にやろう!となりました。
もともと地元である八代を盛り上げたいという想いがありました。八代には「何もない」と言われることが多いのですが、実は自然も豊かで、温かい人たちが多いんです。そんな場所に、スポーツの力で活気を取り戻したいなあと常々思っていましたので…。
編集部:とはいえ、そんな簡単ではないですよね?
早瀬代表:まさにゼロからの挑戦です。私と弟それぞれの得意分野を活かして「とにかく一歩踏み出そう」と活動を始めましたが想像以上に大変です。私も最初は後方支援くらいのつもりでしたが、気づけば営業や調整、資金集めまで本格的に関わるようになっていました。地元のバレーボール協会や企業さんに話をしても、最初は「選手がいない」「資金がない」「指導者がいない」「とうてい無理」と厳しい声ばかりでした。それでも一人ひとり丁寧に説明して、少しずつ仲間を増やしていきました。協会の方からも応援をいただけるようになり、今では八代を中心に、スポンサー企業は130社以上、加えて3団体からの支援もいただいています。支援者の中には、「バレーは詳しくないけど、君たちの想いに賭けたい」と言ってくださる方もいて、その言葉に何度も救われました。最初の100万円の支援が決まったときには、「この責任は絶対に果たさなければ」と腹をくくったのを覚えています。一人の夢ではなく、地域の夢に変わっていく——それがこのプロジェクトの原動力になっています。
編集部:チームのビジョンなどはありますか?
早瀬代表:チーム名の『Virex』の由来は「Vision(ビジョン)」「Victory(勝利)」「Rex(王者)」の3つの言葉を組み合わせた造語です。『仲間と共に「カチ」(勝ちと価値)を築き、つなぐ 未来を創造する』というビジョンを掲げ、立ち上がりました。 バレーボールは、仲間と共に努力し勝利を分かち合う喜びを感じることができるスポーツです。バレーボールを通じて、地域の子どもたちに夢と希望を与え、地域全体の活力を高めたいと考えています。熊本の誇りを胸に、一人でも多くの県民と共に、新たな未来を創造することを目指しています。
八代からSVリーグへ。地域と共に描く成長戦略とビジョン
編集部:どのような未来像を描いていらっしゃるのでしょうか?
早瀬代表:目指しているのは、プロ化されたトップリーグ「SVリーグ」への参入です。そのためには、まず「SV.LEAGUE GROWTH」に参入し、5年以内の優勝を目指してチーム力を高めていきます。八代から全国へ、そして世界へ通用するチームを作っていきたい。そのビジョンに向けて、今はとにかく準備と整備に追われる毎日です。
編集部:具体的なビジネスモデルとしてはどのように?
早瀬代表:メインはスポンサー収入とチケット収入です。ただ、「SV.LEAGUE GROWTH」への参入には「1億円の売上見込み」が必要とされており、現時点ではまだそのハードルを超えるには至っていません。現状の売上はおよそ3,000万円で、今後は県内外の大手企業への営業をさらに強化していく方針です。
また、スポンサー収入7,000万円、チケット収入1,000万円という構想の中で、残りの資金をどう確保するかが課題となっています。そのため、参入が決まった際に支援を約束していただく「覚書」などを用いて、確実な資金根拠を示せるように動いています。
編集部:Vリーグの仕組みも大きく変わるそうですね。
早瀬代表:これまでのV1・V2・V3構成から、「SV.LEAGUE」「SV.LEAGUE GROWTH」「新・Vリーグ」への再編が進んでいます。僕たちは中間層に位置づけられるVリーグ参入を目指しており、2026年10月からの参戦を目指してライセンス申請を進めています。ただ、そのためには「競技」「施設」「法務・財務・人事」など、あらゆる基準を満たす必要があり、今は準備に全リソースを注いでいるところです。
編集部:将来的には、アリーナ構想もあると伺いました。
早瀬代表:八代市にもアリーナ構想はあり、新駅周辺の再開発と合わせて検討されています。体育館の継続使用には、八代市とのホームタウン締結も必須条件とされており、市との信頼関係をどう築いていくかが大きな課題でもあります。ただ、スポーツが盛んな街というブランドを確立できれば、それは地域の誇りにもなる。未来をつくるための投資として、今こそ動かなければならない時だと思っています。この挑戦が成功すれば、熊本発のチームとして、全国に誇れる存在になれると信じています。
ともに“未来”をつなぐ仲間を求めて
編集部:チームづくりにおいて、大切にしていることは何ですか?
早瀬代表:やはり「仲間」です。バレーは1人では点が取れないスポーツ。必ず仲間にボールをつなぐ必要があります。その構造が、僕たちのビジョンにも通じています。一般社団法人のビジョンとして掲げているのが「仲間とともに価値を築き、つなぐ未来を創造する」。勝利だけでなく、地域で活動することによる価値も重視しています。
編集部:選手の採用や育成にはどんな特徴がありますか?
早瀬代表:現在、15人の選手がいて、そのうち半数は県外から来ています。中には元Vリーガーもいて、福岡から通いで練習に参加してくれています。熊本に移住した選手は、パートナー企業に就職してもらっており、雇用の面でも地域と連携しています。さらに、選手のセカンドキャリア支援も視野に入れています。プロ化が進む中で、契約満了後の進路は非常に重要な課題です。熊本に残って働きたい、指導者になりたいという流れを生み出すことが、地域の継続的なスポーツ文化につながると信じています。
編集部:日々の練習や環境づくりについては、どのように工夫されていますか?
早瀬代表:練習は週3回、火曜・木曜・土曜が基本です。仕事の都合で全員が揃わないこともありますが、集中力と意識を大切にしています。弟が以前在籍していたチームでは、短い時間でも密度の濃い練習をしていました。うちのチームは仕事をしながらの選手ばかりで練習時間の確保が難しい現状ですが、限られた時間でも集中し質を高めることに注力しています。
また、トレーナー体制も整えつつあり、僕自身も整体師として体のケアに関わっています。ただ、あくまで“適度な距離感”を保ち、選手が自分たちでチームを作っていけるようにしています。これから先はトップダウンではなく、共に築くチームを目指しています。
編集部:最後に、どんな人にこのチームに関わってほしいですか?
早瀬代表:私たちは、単に勝つためだけのチームではなく、スポーツを通じて地域の未来を切り拓く挑戦をしているチームです。未完成な部分も多く、整っていないこともたくさんあります。だからこそ、ゼロから形をつくり上げていくワクワク感を楽しめる人に仲間になってほしいと思っています。
ここは、選手やスタッフだけでなく、地域の人々が一緒になって未来を動かしていく「仲間づくりの場」です。挑戦の中には悩みも葛藤もありますが、それを乗り越えた先に得られる喜びや成長は大きなものです。自分自身が変わり、まちが変わり、誰かの夢のきっかけになる——そんな手応えを実感できる環境です。
私たちの想いに共感し、ともに汗をかき、支え合いながら地域の未来を創っていきたい方。そして、まだ見ぬ挑戦を一緒に切り開いてくださる方との出会いを、心からお待ちしています。