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青果物の生産・流通・加工・販売を一貫して手がけ、若手生産者と農業の未来を支える 株式会社藤本物産の藤本社長

青果物の生産・流通・加工・販売を一貫して手がけ、若手生産者と農業の未来を支える 株式会社藤本物産の藤本社長

藤本泰弘(ふじもとやすひろ):株式会社藤本物産・代表取締役社長。熊本市出身。九州東海大学卒業後、京都のスーパーマーケットで1年間の勤務を経て、1999年に同社入社。営業三課(野菜部)課長、果実部部長、2008年常務、09年専務を経て、13年5月に社長就任。

沖縄進出、通信販売の強化など積極的な事業展開で九州TOPクラスの規模へ

ココクマ編集部(以下、編集部):今年で創業75周年おめでとうございます。

本泰弘社長(以下、藤本社長):ありがとうございます。当社は昭和23年、熊本駅前の小売店舗からスタートしました。現在は熊本地方卸売市場(通称:田崎市場)を拠点に、野菜や果物等の青果物の仲卸を展開。熊本のみならず全国の市場や生産地から青果物を仕入れ、全国の量販店・小売店に販売しています。直営店舗は、ドン・キホーテの福重店(福岡)が加わり、現在15店舗運営しています。

また農産物の商品開発や選果業務を行う株式会社フレッシュダイレクト、カット野菜・カットフルーツの製造や青果物の加工・パック詰め・袋詰め等を行う株式会社フレッシュ工房、商品の仕分け・配送を行う株式会社ケイ・エフ物流などのグループ会社と連携し、青果物の生産・流通・加工・販売を一貫して手がけている会社です。

編集部:青果物の生産から販売まで一貫して手がけていらっしゃる会社は少ないのでは?

藤本社長:そうですね、全国的に見てもほとんど無いと思います。農業・流通を取り巻く環境は厳しいですが、川上から川下までカバーできる独自のノウハウを武器として、毎年売上げを伸ばし続けています。藤本物産の売上げは約170億円、グループ売上は217億円(5年で50億円増収)になりますので、九州の仲卸ではトップクラスの規模です。また、生産から流通、小売り、カット野菜の製造まで手掛けている機能面でいうと恐らく日本一ではないかと思います。

2020年9月に開設した沖縄物流センターですが、沖縄は気候や土壌の関係もあって、作物が年中取れない地域です。そのため、本州や九州からの青果物を流通させる必要があり、その窓口としての役割を担っています。沖縄エリアの需要拡大が大きく売上げを伸ばしている要因の一つでもあります。

また、もう一つ新たな取り組みとしては2021年に通販分野の強化のために、株式会社中村屋を子会社化しました。元々は県産野菜や果物の通信販売を目的にしていましたが、仕入れ先とのご縁もあり、青果物の定期便やお米、馬刺し、あか牛なども販売しています。生産者の販路を広げるサポートおこない、地場産品を全国に展開していこうと力を入れています。

時代の流れとして、消費者のニーズが小売り・量販から通販へ変わりつつあります。通販の売上はまだ全体の3%と小さいですが、青果物や生鮮品に関しても通販市場が伸びてくる可能性が高いため、未来への布石として取り組んでいるところです。

生産者と消費者の橋渡し役

編集部:食料自給率の低下も問題視されていますが、熊本の農業の現状は?

藤本社長:全国的にもそうですが、県内の生産者も減っています。生産者が減ると、自然と生産量・出荷量が減少するため、農産物の価格が上がってしまいます。ここ数年は海外情勢の影響もあり、バナナも注文しても必要な数が輸入できなくなっています。このままでは将来、日本は食糧難に陥る日が来るのではないかと危惧しています。このような状況を少しでも改善するために、これからの農業を担う若手生産者とのつながりを大事にしています。私たちの仕事は生産者の方がいなければ成り立ちません。私たちが保有する生産・選果・加工・流通などの機能面やノウハウ・技術を活用してもらうことで、若手の生産者を支えていかなければと考えています。

 編集部:若手生産者の支援がカギですね

藤本社長:本当に頑張っている若手の生産者を応援したいと思っています。熊本市河内の30代の生産者は、土壌や栽培方法を研究し、とても美味しいオーガニックみかんを生産しています。さらには、周辺の耕作放棄地になるはずだった農地を引き受け、2-3年かけて土壌を改良しながら作付け面積を拡げるなど、その地域の農業を守ってくれています。また、熊本市の天明のメロン農家さんは、親子2代にわたってこだわりのメロンを生産しています。他にも一生懸命、こだわりや熱い想いを持って青果物を育てている若い生産者が沢山います。彼らは想いも強いし、馬力もあります。ただ、そういった生産者の想いを消費者に伝えるは難しいんですよ…。付加価値の高い商品なのに、市場内流通だとどうしても適正な価格では販売されないのです。ならば、私たちが生産者に寄り添い、私たちの機能やネットワークを上手に利用してもらえればよいかなって思ってます。付加価値を伝えることで、正しい生産価格が付き生産者の収入UPにもつながります。収入が得られる仕組みを作れば、若手生産者も増え、農業全体を支えることにもつながるんじゃないかと考えています。

編集部:青果物の仲卸しではなく、生産者と消費者をつなぐということですね

藤本社長:極端に言うと、これまでは誰が作ったか分からない青果物を市場から仕入れて、あとは値段勝負!みたいな商売でしたが、もう限界があると思うんですよね。私たちも手数料いただくための介在価値を発揮しないと、存在している意味がありません。生産者にいかに喜んでもらい、消費者にいかに生産者の想いを伝えるか!私たちが生産者と消費者の橋渡しをする役割を担っていかないといけないと考えています。それにより自然と売上・利益がついてくるのかなあと思っています。

そのための新たな取り組みとしては、中村屋でSNSや動画投稿、VRなどを活用し生産者の声や想いを届けるための企画を検討しています。また、若手の生産者向けの勉強会や交流会も積極的におこなっています。生産者同士がつながることで改善策を一緒に考えたり、お互いの収穫時期をサポートし合うことにもつながっています。

編集部:そのように考えるきっかけがあったのですか?

藤本社長:熊本地震で弊社も大きな被害を受けましたが、同業者や生産者など多くの方々も被災し、自分たちができることはなんだろうと考えました。正直それまでは、自社の業績さえ良ければいいと利己的な部分もありました。皆に喜んでもらえる会社になろう!業界全体の発展を考えよう!など、自社だけが発展するわけはないと、強く思うようになったのです。

また、地域への貢献では熊本地震後の2016年から熊本城の復興支援金として、皆様にお買い上げいただいた『熊本城復興バナナ』の売上の一部の寄付を毎年継続しています。

付加価値の高い仕事にこだわる

編集部:仲卸業界というと勤務時間が長そうなイメージがありますが・・・。

藤本社長:確かに、私が入社した当時は朝4時半に出勤して、終業が18~19時といったことが普通でした。休みも月に1~2回程度でしたね(笑)。でも今は働き方改革が叫ばれるようになりましたし、市場自体も人手不足で休みが増えるようになったので、少しずつ勤務環境も変化してきています。

例えば、仕入れ担当者や営業は6時~8時の間で時差出勤し、勤務時間が8時間以上にならないような仕組みづくりを進めています。休日も水曜、日曜、祝日は必ず取れるような仕組みを作っています。有給休暇も部門に限らず交替で取得できるようになりました。少しずつではありますが、改善されているのではないかと思います。

編集部:SDGsにも取り組まれているとか?

藤本社長:そうですね。2021年には熊本県のSDGs登録事業者に登録しました。些細な事ではありますが、消費電力の削減や、タブレットを導入し紙の削減などにも取り組んでいます。また年に1度は経営方針発表会で耕作放棄地の問題や若手生産者の育成、熊本への寄付など、今後さらに取り組んでいくべきことを伝えています。1円でもいいから前年は超えようという話はしますが、売上数字に関して細かくいうことはありません。

ただ、どうやったら生産者の所得があがるのか…、何かしら生産者の役に立つことを考えてやろうと。うちにしかできないような介在価値のある仕事をしよう。ということはしっかり伝えています。その結果、社員の意識も変化し主体的に取り組んでくれるようになったと思っています。

青果物の生産・流通・加工・販売を一貫して手がけ、若手生産者と農業の未来を支える 株式会社藤本物産の藤本社長

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