熊本の未来をつくる経営者
独自の技術で和菓子業界の常識を打ち破る 株式会社一休本舗の高木社長
高木功一(たかきこういち):株式会社一休本舗・代表取締役。熊本工業高校卒。高校卒業後に京セラ㈱に入社、その後婦人靴の販売を経て1991年に同社に入社。2010年から現職。
セントラル工場化と冷凍技術で他店舗展開を実現
ココクマ編集部(以下、編集部):個人的には揚げたての「黒糖かりんと万十」が大好きです。
高木功一社長(以下、高木社長):ありがとうございます。当社は1963年(昭和38年)に創業し、和菓子の製造・販売や甘味喫茶「甘味茶屋一休庵」の店舗経営を行っています。現在直販店は13店舗、「甘味茶屋一休庵」は3店舗です。
店頭での販売や通信販売のほか、最近では益城町のふるさと納税の返礼品としても商品を提供しています。入学・卒業シーズンなどは熊本県下の保育園や小・中学校へ「紅白万十」を納めていますし、敬老の日には長寿のお祝いとして老人ホームや介護施設に提供することもあります。そういったところで熊本の方には馴染み深いのかもしれませんね。
和菓子というのは長い歴史を持ち、中でも団子やお饅頭といったものは、神様へのお供えや人生の節目節目で食べられています。こういった和菓子の文化を継承することが我々の役目だとも思っています。世の中に必要とされ続けるために、いつでも身近にある存在として店舗や事業を展開していきたいと思っています。
編集部:団子・万十などを取り扱う和菓子屋さんの多店舗展開は珍しいですよね?
高木社長:全国的にも珍しいと思います。創業当時は、八百屋さんなどの個人商店に和菓子を置いてもらう卸売販売からスタートしました。熊本にスーパーマーケットの第1号店ができた時に、テナントとして入居したのが当社の1号店です。その後、スーパーマーケットや量販店のテナントとして出店を続け、ピーク時には34店舗を構えていました。
しかし、量販店の大型化やコンビニの台頭といった影響もあり、当社がテナントとして入居していたような小型店舗は淘汰されていくと先代社長が予測し、1995年頃からテナントショップから順次撤退し、ロードサイド型の店舗へとシフトしていきました。また、同じタイミングで先代の夢でもあった甘味喫茶を併設した店舗「甘味茶屋一休庵」を開業し、そこでは和菓子以外のお食事も提供しています。テナント時代で販売していたテイクアウトのたこ焼きを進化させた持ち帰り不可のたこ焼きは、現在でも人気メニューとなっています。こちらの店舗は遠方からもお客様が来てくださっています。
いずれにせよ、先代はアイデアマンで非常に型破りな人でしたね(笑)。創業時から「たくさんの店舗を持ちたい」と考えていましたから、1985年頃にはセントラル工場を建て、商品を冷凍して流通させる仕組みを構築し、多店舗展開を実現させ当社の礎を築いてきたのです。
編集部:和菓子のセントラル工場ですか…。
高木社長:はい、ほとんどないと思います。現在使用している機械導入も九州で2番目だったみたいですし、決断力があるんですよね、先代は。ましてや和菓子を冷凍するといったことは業界の常識では考えられなかったことですが、原料メーカー出身の社員と一緒になって冷凍できる商品の開発に力を入れてきました。
編集部:和菓子を冷凍するのは難しいのですね?
高木社長:そうですね。例えば砂糖を使うにしても保湿性に優れ、かつ体に吸収されにくい異性化糖を組み合わせて使用するなど、原料に着目して冷凍しても品質を保てるように開発しました。冷凍することによって保存期間を延ばしているだけなので、保存料をほとんど使用していないことも特徴です。
当社は朝生菓子といって、その日の内に食べていただくことを前提とした和菓子に拘っているため、お土産品と違って日持ちがしないのです。こういった和菓子を冷凍することで、保存期間を1ヶ月程度延ばすことができ在庫が可能になりますし、蒸し・揚げといった加工を施せば出来立てを提供することができます。また冷凍させた完成品も流通できるので、各店舗でも種類豊富に商品を取りそろえることができるようになりましたし、販路の可能性も大幅に拡げることができるようになりました。セントラル工場での製造方式と冷凍できる和菓子の開発力が当社の最大の強みと言えますね。
海外展開を視野に業務用・OEM生産にも着手
編集部:新しく挑戦されていることはありますか?
高木社長:7年ほど前から、業務用の和菓子の製造・販売に取り組んでいます。例えば、ホテルのビュッフェ、病院の売店、物産館など…実は店舗での販売だけでなく、多方面でご利用いただいています。熊本のみならず九州各県や遠いところでは関東・東北まで納品しているのです。完成品を冷凍で流通させていますが、店頭で揚げたり蒸したりするパフォーマンスを加えることで販売力も高まると喜ばれています。
直近でチャレンジしているのは海外への販路開拓です。先日も台湾のレストランと商談をしたところなのです。「黒糖かりんと万十」を、お客様の目の前で揚げ、デザートとして提供したいとのこと・・・。流通の問題さえ解決すれば、契約できると思っていますし、世界中のどこへでも商品を提供することができるのです。これまでも台湾の回転すしチェーン店に「冷凍のさくら餅」を提供するなどの実績はあります。香港やシンガポールで開催された「日本フェア」に出展し、大きな反響も得られました。これからも海外への挑戦は積極的に取り組んでいきたいと思います。
また、最近では同業者から経営相談を頂くことが増えてきました。高齢化や後継者・人手不足などの影響で、自力で商品を作れなくなったと…。そんなお店には当社の商品を供給させていただき店頭に並べていただいています。また昨年からは業務委託(OEM生産)の依頼を受け、オーダーメイドの和菓子製造にも取り組んでいます。
編集部:色々な相談があるのですね
高木社長:販売方法だけでなく、販売する商品そのものも試案しています。商品単体でなくライセンスを販売できないかといったことや、ユニット式のコンパクトな店舗としてパッケージにして、BtoBで展開していけないかといったこと…。また他業種とも上手くビジネスマッチングして新しい和菓子の形を生み出せないかといったことも考えていきたいですね。
BtoBを強化し、熊本の味を拡大させたい
編集部:商品づくりで拘っていることは?
高木社長:地域の材料・食材を使用して商品に付加価値を高めています。また地域の食材を扱う企業とコラボレーションでの商品開発にも拘っていています。らくのうマザーズ阿蘇ミルク牧場さんで作られた「フロマージュブラン」という種類の希少性の高いナチュラルチーズを使用して開発した「クリームチーズ万十」は人気商品になっています。また、七城メロンドームで販売されている「メロン饅頭」も当社が携わっています。
編集部:熊本地震の時も喜ばれたことがあったとか…。
高木社長:そうですね。当社も本社工場の機械はひっくり返ってしまい、すぐには動かせない状態だったのですが、幸い冷凍庫が無事だったので、本震の次の日からお団子とお饅頭の2種類を販売することができました。コンビニやスーパーもまだ開いておらず、本社工場のすぐ隣の小学校が避難所になっていたので、行列ができたほど多くの方が来られました。お客様には大変喜ばれましたし、協力してくれた従業員にも貴重な体験ができたと言われ嬉しかったことを覚えています。
編集部:求める人材像は?
高木社長:BtoBを強化していきたいと考えているので、法人営業ができる方がいいですね。これまでは展示商談会や以前からのお付き合いでお取引きいただくことが多かったので、仕組化して、戦略的に動ける方に加わっていただきたいですね。ホテルなどへの営業やOEMの委託先を開拓したり、商品を直接売り込むだけでなく様々な形で企業間の連携を強化していきたいと思います。また製造の分野でも委託先からの要望を満たす商品開発ができる方がいるといいですね。
そうでなくても、熊本は地震で疲弊している部分もまだありますし、熊本がふるさとで、和菓子に携わる仕事がしたいと考えられている方には、ぜひ地元の力になってほしいと思います。
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