熊本の未来をつくる経営者
完全地域密着により地域の雇用を創出する 人材業のプロフェッショナル 株式会社スープルの藤井社長
藤井淑人(ふじいよしと):株式会社スープル・代表取締役社長。熊本市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。キヤノンU.S.A.,Inc(ニューヨーク駐在)、株式会社レイメイ藤井なご数社を経て、2005年に株式会社パソナ中九州入社。経営企画室長、常務取締役、代表取締役副社長を経て、11年社長就任。
「派遣の無期化」で安心して働きながら続けられる環境づくり
ココクマ編集部(以下、編集部) 事業内容について教えてください。
藤井淑人社長(以下、藤井社長) 当社は熊本・大分・宮崎で人材派遣・請負事業、ならびに人材紹介事業など、完全地域密着型の人材サービスを展開しています。1985年に株式会社テンポラリーセンター中九州として設立、以後1996年に株式会社パソナ中九州、2011年に株式会社スープルと社名変更し、来年2020年に設立35周年を迎えます。
売上は2019年3月期で約13億円、この約8割を人材派遣事業が占めています。派遣スタッフの約90%が女性で、主に事務職の派遣を強みとしております。
編集部 人材派遣業界を取り巻く法律や制度が刻々と変化していますが、その影響は?
藤井社長 「派遣労働者の同一労働同一賃金」の考え方が示された労働者派遣法改正や、有期労働契約の更新により、契約期間が通算5年を超えた際は無期労働契約へと転換できる「無期転換ルール」の影響で、いま最も改革を迫られているのがこの人材派遣業界だと思います。
これに対し私たちは今後、派遣社員の方々に安心して長く働いていただける「派遣の無期化」を積極的に進めて参ります。派遣先に直接雇用されることを前提に派遣される「紹介予定派遣」と似たスタイルですが、年齢や経験がネックとなり正社員になるのが難しい方もいらっしゃいます。そのような方々には当社の「無期派遣社員」として登録していただき、当社の就業規則の年齢まで安心して働き続けられる環境を用意しています。仮に派遣先が決まるまで2週間~1ヵ月のブランクができても、その期間の給与もきちんと発生します。
編集部 正社員として働くのと変わらないような安心感がありますね。
藤井社長 当社独自の研修を受けていただくことで着実にスキルアップすることも可能ですし、同一労働同一賃金の流れで当社は時給制ですが、2年~3年と働き続ける中で時給もUPします。スタートが35歳や40歳でも同じです。「スープルで派遣社員になると、正社員のようにキャリアアップしながら働ける」と言って頂けるような仕組みづくりを進めています。
また派遣で働くスタッフも、受け入れる企業側も良好な関係が築けているのに、長く働けないのは非常に不自然ですよね。この不自然を解消するには派遣の無期化しかありません。その中でクライアントから直接雇用のオファーがあるかもしれませんが、どちらを選択するかは本人次第。一般の正社員が自分の意志で転職を決めるように、派遣社員の方々にも同じ選択の機会があるべきだと考えます。
私はスープルを通して、派遣社員のみなさんが一生働きたいと思える会社を見つけていただきたいと思っています。その中で私たちは様々な働き方の選択肢を提示できる、キャリア相談センターのような場所でありたいですね。
編集部 今後は何か新しい事業展開をお考えですか?
藤井社長 都市部への人口集中が止まらない中で、熊本・大分・宮崎の雇用については外国人抜きでは語れません。今後は外国人技能実習生や特定技能(1号)の在留資格を持つ外国人の人材紹介を展開しようと考えています。
職種によってスタート時期の問題があり思っている以上に簡単にはいきませんが、まずは再来年末、日本語と介護の勉強している中国・湖南省の大学生が30名程度来日できるよう、介護に関する新しい協同組合を作る準備を進めています。
そのほか、東京の優秀なシニア層と地方の企業のマッチング事業も展開できればと考えています。キャリアを積んだシニアの方々の中には、退職後もフルタイムとまでは行きませんが、少し働くことを希望する方も一定数いらっしゃいます。
一方地方では、そのような方々のノウハウが欲しい反面、シニアの方に多くのコストをかけることはできません。そこで雇用ではなく、コンサルティング契約や業務委託などの形態でマッチングが行えないかと考えたのです。数字に繋がるかどうかはまだわかりませんが、可能性を感じています。
キャリアデザインで離職を防ぐ
編集部 NPO法人での活動について教えていただけますか?
藤井社長 2014年に設立したNPO法人「えんキャリア」では、働く人の人間力アップや新たな雇用創出、地域社会や地域経済の活性化に寄与することを目的とし、人材育成やキャリア形成に関する事業を展開しています。
私が昨今、課題に感じていることの一つに、仕事が定着せず職場を転々とする人々の増加があります。彼らは時代の変化とともに価値観が変化する中で、企業側との勤労観の相違が原因で転職してしまったり、また実力評価型に企業が方向転換する中で結果を残すことができず、自己否定と転職を繰り返す中で疲弊するなどして、結果的に現在国内に約110万人いるとされる「引きこもり」となってしまったのではないかと考えます。
私はこの課題の解決にキャリアデザインが必要不可欠だと考えており、今後「えんキャリア」とスープルで連携しながらこの分野に注力していきたいと思っています。また「引きこもり」の方々に対しても、ボランティア活動や農家のお手伝い等の場を通してやりがいを感じていただき、社会復帰への繋ぎとなるような機会を設けていきたいと考えています。
時代や教育が生み出した結果であると、離職される企業側も他人事として考えてきた側面がありますが、その時代を作ってきた私たちがこの課題に向き合っていくべきではないでしょうか。
社員のスキルアップが結果に繋がる
編集部 社内ではキャリアコンサルタントの資格取得を進めていらっしゃるとか・・・。
藤井社長 当社では全社員でキャリアコンサルタントの資格取得を目指しており、大分・宮崎にそれぞれ3人、資格保有者がいます。資格取得に向けた勉強に取り組むことによって、面談能力・ヒアリング能力の向上に繋がり、メンタルやキャリアに問題を抱えた方々に寄り添ったカウンセラー的対応ができる能力が身に付きます。この2~3年、登録者は3割減っていますが成約率は2.5倍と増えており、社員のスキルアップが結果にも繋がる良いサイクルが生まれています。
利益だけを考えれば、本業の人材派遣と人材紹介に特化してこじんまり展開するやり方もあると思います。しかし、それで本当に地域の人や社会から評価される時代ではありません。当社は地域の雇用への貢献というところに大きな価値観を置いています。次の経営者も次の世代の従業員も、ここで働くことの意義を感じるような会社にしていきたいですね。
また、私の後継を探すことも今後の最大の仕事だと思っています。社内で出てくるのがベストだと考えていますが、5年以内にははっきり見つけたいですね。
編集部 休日の過ごし方を教えてください。
藤井社長 最近は日本人として改めて国の歴史や、熊本のことを学び直しています。外国人と関わることも多いのですが、彼らの方が日本の歴史や文化についてよく知っている場合もあります。日本人として「知らない」では済まされないと思いますし、正しく日本の文化や価値観を伝えるためにも、中国語など他国の言語も身に着けたいですね。
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