熊本の未来をつくる経営者
“南栄クオリティ”で熊本から九州へ。地域に根ざした総合不動産デベロッパー株式会社南栄開発の深野社長
深野政治(ふかのまさはる):株式会社南栄開発・代表取締役社長。熊本出身。中央大学経済学部を卒業後、1992年西日本銀行(現:西日本シティ銀行)に入行。2007年に福岡で創業した独立系不動産投資会社「玄海キャピタルマネジメント」に参画し、不動産投資や企業再生案件を手掛ける。13年同社執行役員、18年代表取締役副社長に就任し、24年まで同職。25年6月より株式会社南栄開発の代表取締役社長に就任。
「社会に必要とされる100年続く会社に成長させてほしい」創業オーナーの想いを受け継ぐ。
ココクマ編集部(以下、編集部):社長就任おめでとうございます。就任の経緯を教えていただけますか?
深野政治社長(以下、深野社長):私の経歴からお話ししますと、熊本(益城町)出身で大学卒業後に、新卒で西日本銀行に入行しました。2007年には福岡で創業した独立系不動産投資会社「玄海キャピタルマネジメント」の立上げに参画し、不動産ファンドの組成とアセットマネジメント、地域創生事業や企業再生案件を手掛けてきました。南栄開発とは、創業オーナーと銀行時代から面識があり、ダイエー熊本を建て替える「COCOSA」プロジェクトを支援する関係が始まるなど、2016年からは社外取締役として経営サポート役も引き受けてきました。創業オーナーからは予てより次世代の経営を担って欲しいとお声がけをいただいていたことと、いつか故郷熊本のために尽力したいと考えていた背景もあって、南栄開発の代表に就任する運びとなりました。
私自身、キャリアの最後は「熊本のために何かしたい」という想いをずっと持っていましたし、玄海キャピタルの役目もひと段落するなどのタイミングも重なり、世代交代のバトンを受け取ることにしました。創業オーナーから「社会に必要とされる100年続く会社をつくってくれ」という想いも受け継ぎましたので、社員と共に事業を成長・発展させていきたいと考えています。
編集部:南栄開発はどのような特徴がある企業だと考えていますか?
深野社長:一言でいうと、地域に根ざした総合不動産デベロッパーです。1984年に土木測量設計を行う個人事業からスタートし、その後、不動産に関するノウハウとネットワークを積み上げ、「市街地再開発」「事業用地開発」「戸建分譲用地開発」「不動産売買・賃貸・管理・仲介」へと事業の幅を拡げてきました。

転機は2017年4月にオープンした商業施設「COCOSA(ココサ)」の開発です。街中の魅力向上に繋がる複合商業施設を目指してオープンしました。これまで手掛けたことのない規模の投資案件を成功させ、会社のステージが一段上がったプロジェクトとなりました。開業後は「クリスマスマーケット」や「くまもと花博」などのイベントとも積極的に連携しながら、街の活性化と魅力度の向上にも力を入れています。直近で手掛けたのは、熊本電鉄御代志駅周辺での商業施設『SPring Garden MIYOSHI』の開発事業です。『人びとが「集い」「憩い」「愉しむ」居心地の良い、新たな生活創造拠点を創出する』というコンセプトとともに、25年3月にオープンしました。
現在、熊本では実績・知名度・信頼度はトップクラスの不動産デベロッパーだと自負しています。これからも地域の魅力を引き出し、活気あふれる街づくりに貢献していきたいと考えています。
編集部:企画力が強みなんですね?
深野社長:情報力や企画力もそうですが、技術力や遂行力が強みなのです。実は、お客様から「南栄クオリティ」と呼ばれる信頼の高さがあります。それを支えているのが、グループ会社であるアイ・ケイ・エス開発の存在です。同社の調査、企画、測量・設計、許認可、造成工事、登記まで一貫して手がける技術力と段取りの確かさが高く評価されています。これまでの戸建分譲用地開発で培った技術とノウハウを市街地の開発や事業用地の開発にも展開し、「南栄クオリティ」を磨き続けていきたいと考えています。
“まちの未来”を構想し、地域の価値を高めることが南栄開発の使命。
編集部:今後の事業展開を、どのような方向を描いていますか?
深野社長:大きくは、戸建分譲用地開発に軸足を置きながらも事業用地開発や自らも収益物件の開発を手掛けるなど幅広く不動産の価値創造にチャレンジしていきたいと考えています。これまでは年間200区画ほどの戸建分譲用地開発実績がありますが、人口減少や土地価格・建築費の高騰などの影響で、同規模の開発を続けていくのは難しいと思っています。技術を応用した展開を強化します。
産業用地については、TSMC関連の需要に対応する形で、工場用地や物流用地の造成を手がけています。大津、菊池、七城エリアでは、すでにいくつか成功事例もあり、こういった土地を安定供給できる希少な地場企業というと自負の下、課題も多い分野ですが、先行投資として準備を進めています。

編集部:中心市街地の再開発にも関わられていますよね。
深野社長:熊本市役所周辺では取り組んでいるプロジェクトも多く、跡地の再開発にも積極的に関わっていきたいと考えています。それ以外にも「COCOSA」をはじめとする中心市街地のプロジェクト、健軍商店街の再生などを通じて、“まちの未来”を再構築していきたい。単にビルを建てるのではなく、そのエリアや土地に何が必要なのかを考え、企画して提案する。そこに南栄開発の存在価値があると思っています。
編集部:熊本における街づくりの展望は?
深野社長:「コンパクトシティ化」と「地域の自立発展」という2つが柱です。人口が減る中で、都市は必然的に“濃縮”されていく。だったら、街の中心部にこそ資源を集中して、質の高いまちづくりを進める必要があると僕は思っていて、そこをどう活性化させるかが未来を決めるカギです。次世代に誇れるまちづくりを進めていきたいと考えています。
編集部:ホテル事業を中心に熊本県外でもご活躍と伺いました。
深野社長:ホテルニーズは増えており、九州各地で開発と投資をしています。たとえば、鹿児島県の霧島市では新規開発を進めていますし、鳥栖では古いホテルをリノベーションして、新しいオペレーターを投入する「バリューアップ型」のプロジェクトを進行中です。また福岡市内では、無人運営・多人数対応の町屋風の一棟貸ホテル「彩ホテル」シリーズを展開し、すでに20棟近くに拡がっています。これからの様々な宿泊ニーズに応えるアセットを生み出していきたいと考えています。
「街が好き。人が好き。」そんな情熱と主体性を持つ社員が主役の会社を創る。
編集部:25年6月からの新体制になり、組織としての変化はありますか?
深野社長:これまでは「属人的なナレッジやネットワーク」の企業文化でしたが、「チームで結果を出す」ことを重視するようにしました。チーム制を導入し部署横断で知恵を出し合える体制をつくりました。これまでも「会社全体の知恵を活かしたい」という想いはありましたが、制度としてはまだ整っていませんでした。評価制度も見直し、「結果だけじゃなくてプロセスや役割を評価しよう」というスタンスにしています。バックオフィスやミドルの人たちの貢献も、しっかり評価する文化を根づかせたい。
社員一人ひとりが主役でいてほしい。全員が自分の持ち場でプロフェッショナルとしての意識を持ち、輝いてほしいと本気で願っています。

編集部:どんな人物に仲間として加わってほしいですか?
深野社長:やっぱり「街が好き」「人が好き」、そういう人ですね。特別なスキルよりも、やる気とコミュニケーション力、そして人としての素直さを重視しています。うちは“田舎商売”とも言われますけど、地道に土地を見て、関係者や不動産屋さんを一軒一軒まわるような泥臭さがある。そこに価値を感じてくれる人に来てほしいです。
中途の方で言えば、例えば銀行やハウスメーカーでうちの業務に関わっていたような方、つまり“カウンター側”にいた経験のある方は即戦力ですね。法務や契約、金融の基礎知識を持っていると、営業だけでなくアセットマネジメントにも関わってもらえます。南栄クオリティを成長させてくれる技術者人材の参加も大歓迎です。
編集部:若手や未経験者への期待はどうですか?
深野社長:若い人に「最初から完璧であれ」とは思っていません。でも、少なくとも「この会社で何かを成し遂げたい」「学びたい」という意欲を持ってほしい。それがあれば、僕らが育てます。
あとは考える力と素直さ。たとえ不動産の経験がなくても、研修や現場で必ず伸びていきます。会社としても100年続く組織を目指す以上、次の世代を担う人材を育てることは大きな使命なんです。
「自分の力で、地域の未来を変えてみたい」。そんな想いを持つ人に、ぜひ門を叩いてほしいですね。








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