熊本の未来をつくる経営者
WEBマーケティングを強みに熊本から上場を目指す RITAグループホールディングス株式会社の倉崎社長
倉崎好太郎(くらさきこうたろう):RITAグループホールディングス株式会社代表取締役社長。熊本学園大学卒業後、大手警備会社を経て、2007年11月設立、2020年7月より現職へ。
「馬肉」を使った新しいアイデア
ココクマ編集部(以下、編集部)事業内容を教えて頂けますか?
倉崎好太郎会長(以下、倉崎会長)熊本の特産品である馬刺しを、自社サイト(熊本馬刺しドットコム)・楽天市場・yahoo!ショッピング・ポンパレモール・Amazon・Mマートのほか、アナログ媒体(ラジオ・雑誌・新聞・FAXDM)を活用した通信販売が事業のメインです。またJR熊本駅や城彩苑、高速道路サービスエリアでのお土産品や熊本県高森町の「ふるさと納税返礼品」へも当社の馬刺しを出品させて頂いています。そのほか最近では「馬肉ペットフード事業」もスタートさせました。「健康いぬ生活」という屋号で、商品にならない馬肉をドッグフードとして加工販売しています。
関連会社として、短期集中ダイエットジム「RITASTYLE」、剣道防具の通信販売を手掛ける「利他の藏」も展開。現在、グループ全体の売上が約7億5000万円となっています。
我々の特色は「WEBマーケティングに強い会社」であるということ。2014年7月には楽天市場の総合リアルタイムランキングで2位になりました。これは、馬刺し自体の人気の向上や品質の良さはもちろん、なにより当社がWEBマーケティングに強い会社だから残せた結果だと自負しています。
編集部 「馬肉ペットフード」というのは面白いですね。
倉崎会長 「プレミアムドッグフード市場」は急成長していて注目していました。ほとんどの商品が鶏肉を使っているため、「馬肉」という希少性を強みとして切り込んで行けないかと思ったのが参入のきっかけです。ほかの業者も馬肉には興味を示していたようですが、なかなか手に入れにくくコストもかかります。反面、当社は独自の入手ルートを持っていますし、仕入れ先も捨てるはずだった馬肉に値段が付くので提案した際は喜んで頂けました。
今期は「馬刺し事業」「馬肉ペットフード事業」合わせて昨年対比130%成長を目標にしています。
編集部 「RITASTYLE」も急成長されているとか・・・。
倉崎会長 2015年に設立した「RITASTYLE」も、現在は熊本・福岡・鹿児島・長崎・岡山に計8店舗を展開しています。売り上げも人員も2倍に増え業績は順調です。2022~23年には上場を考えており、CFOや財務関係の人材も採用して管理部門を強化しています。上場のために最低でも50店舗を目標に、今後は関東圏にも進出していきたいですね。
以前、私も某大手ダイエットジムに通っていたことがあるのですが、費用が高い割にマンションの一室で、綺麗に掃除もされていなくて・・・。東京はちゃんとした施設があるのに、熊本だとほこりの溜まったマンション。自分ならもっと良いクオリティのサービスを熊本で作れるなと思ったのがスタートのきっかけです。「RITASTYLE」は「お客様の人生を変える」という事業理念を掲げています。理念とトレーナーの質で他社との差別化を図っていきたいですね。
社員にとって働きやすい環境とは
編集部 急成長の中で苦労されたことなどはありますか?
倉崎会長 急に人員が増えたので、社員教育には苦労しました。我々の理念や想いが全社員に伝えきれなくて・・・。最近は創業期から会社の成長を見ている私の奥さんが、理念や創業の精神を社員に伝えてくれています。自分たちはなんのために日々仕事に取り組むのか、日頃のコミュニケーションの中で丁寧に伝えるように心がけています。テレビ会議システムを常時オンラインにしたり、ちょっとしたミーティングもWEBを活用したり、ITツールも駆使しながら、コミュニケーションの機会を増やすようにしています。企業理念をしっかり語れる社員をたくさん育てたいですね。
「RITASTYLE」は労働集約型のビジネスですが、従業員は頑張りすぎずに、8割くらいの平常運転で長く働き続けて欲しいなと思っています。自分自身が起業家で中途半端になんでもできたので、以前は「なんでできないの?」と社員に求めすぎて負担をかけていました。今は適材適所、きちんと分業していますし、個々の専門家になってもらえたらいいと思っています。「RITASTYLE」に限らず、最近は全社で社員が働きやすい環境づくりに積極的に取り組んでいますよ。
編集部 具体的にどのようなことに取り組まれていますか?
倉崎会長 計画的な有休取得を推進したり、みなし残業を廃止して働いた分をきちんと残業代として支給するようにしました。オフィスの近くに住むと家賃を補助する制度もあります。通勤時間は短いことに越したことはないですよね。朝から1時間かけて通勤して疲れてしまったらポジティブな発想も湧きません。できるだけ会社の近くに住んで欲しいというメッセージです(笑)。
また以前は「社長がルール」だったのを、細かくルールを作って不条理なことがなくなるようにしました。グループ共通の「姿勢のルール」というもので、例えば「帰るときにはデスクに何も置かない」「PCでスマホを充電しない」など、50以上のルールがあります。ルールがあることで無駄な諍いや悩みが無くなって、教育する方も楽になりますし、教育される方も納得しやすくなったのではないかと思います。
編集部 どのような人材を求めていらっしゃいますか?
倉崎会長 一つは、「RITASTYLE」の事業運営を任せられる人。現在「RITASTYLE」は私ひとりでやっているので、一緒に上を目指すマネージャークラスの人材が欲しいですね。あとは当社のWEBマーケティングをより強化してくれる人。県外から来てくれた社員もいて、WEBマーケティングでは宮崎出身、WEB運用では福岡出身の社員が働いてくれています。縁もゆかりもない熊本の会社に就職してくれて有難いです。
ベースは人間性があって、うちの理念に共感してくれることが大切ですが、最近はスキルも重視します。なるべく早く仕事を任せたいし、自分で考えてどんどん動いて欲しいですからね。人間性は「ココクマを読んで共感しました」と言ってくれる人なら大丈夫です(笑)。
新しい「利他」への気づき
編集部 企業家のネットワークに参加していらっしゃるとか・・・。
倉崎会長 「一般社団法人熊本創生企業家ネットワーク」という団体を、一部上場企業・スターティアホールディングス株式会社の本郷社長(熊本出身)が9月に設立されました。そちらで私も勉強させて頂いています。先日もスターティアの役員の方々とシアトルに行かせて頂く機会があり、マイクロソフト・コストコ・スターバックス・タブロー等のアメリカ企業がどのような哲学で、どのように社会貢献に取り組んでいるか学ばせて頂きました。
その中で衝撃的だったのが、コストコの女性店員さんが「社会貢献は当たり前」と言っていたこと。アメリカには「社会貢献は当たり前」という風潮があり、企業の事業計画の中にも社会貢献が組み込まれています。私個人としては日本の子供の貧困問題に関心があったので、シアトルから帰ってきてNPO団体への寄付など、できるところから取り組み始めました。自ら発信することが問題の周知にもつながりますし、「うちの会社でもやろう!」と周りを巻き込んでいけたら良いなと思います。
編集者 まさに「利他」ですね。
倉崎会長 いえ、これまで「利他」を謳い、「雇用と納税」こそ社会貢献だと思い実行してきましたが、実は全然「利他」ではなかったと今回アメリカに行って気づきました。これからはもっと社会問題に直接働きかけていきたいです。
東京では私と同じ世代で上場している社長がたくさんいます。熊本の上場企業の少なさは有名ですが、何が違うかというと「身近に上場している社長がいるかいないか」だと思います。「あいつも上場できるなら俺もできる」って思える環境を、熊本にも作っていきたいですね。