熊本の未来をつくる経営者

地域密着型のデジタルソリューションを提供し、新たな価値を創造する、九州デジタルソリューションズの徳村社長
徳村昌司(とくむら まさし):九州デジタルソリューションズ株式会社・代表取締役社長。熊本学園大学卒。1982年、株式会社肥後銀行に入行。2009年世安支店長、14年業務統括部長などを歴任。17年肥後銀行を退職後、肥銀ビジネス開発株式会社社長、18年肥銀オフィスビジネス株式会社社長を経て、25年4月より九州デジタルソリューションズ代表取締役社長に就任。
社員の主体性を育み企業価値を向上させる
ココクマ編集部(以下、編集部):ご就任おめでとうございます。九州デジタルソリューションズ(以下:KDS)の印象はいかがでしょうか?
徳村昌司社長(以下、徳村社長):以前いた会社と比べると、若い社員が多いですね(笑)。4年前から新卒採用にも力を入れていることもあり、直近で約80名増員していますので勢いがありますね。
編集部:新社長としての抱負は?
徳村社長:今年の4月に就任したばかりですので、まだこれからということもありますが、経営者としては社員一人ひとりが「なぜこの業務が必要なのか」「どのような価値を提供しているのか」を理解し、主体的に行動できるような、職場環境づくりに力を入れていきたいと考えています。社員の主体性が、顧客に対する提案力や課題解決力の向上につながり、結果として企業価値の向上にも寄与すると感じているからです。
編集部:あらためて事業内容から教えてください。
徳村社長:KDSは九州フィナンシャルグループ(以下:KFG)の子会社として2022年に誕生した会社です。肥後銀行の情報システム部門から独立した「肥銀コンピュータサービス」が前身で、金融業務に特化したシステム開発や運用を得意としてきました。現在は、DX・デジタル化支援やシステム開発などを提供しています。
主に4つの事業を展開しています。1つ目は銀行からの受託業務です。基幹システムの保守・運用、システム開発など、金融機関に欠かせないITインフラを支えています。2つ目が収納代行業務。これはプロパンガスや介護施設、学校給食費など、地域の生活インフラに関わる集金業務を代行するサービスで、KDSならではの地域密着型ビジネスとして、地域住民の生活を支える重要な役割を担っています。3つ目がITソリューション事業です。ここは特に力を入れている領域で、自治体や民間企業向けにDX推進を支援するコンサルティングやクラウド型システムの導入支援、サイバーセキュリティ対策など、幅広いニーズに対応しています。また、学校徴収金管理システム「KDS学校会計クラウド」や内航海運向け船員勤怠管理サービス「Crewlog」、酒造会社向け受発注管理システム「くらモール」など、特定業種向けのパッケージソフトを自社開発し、全国へ展開し始めています。
新たに取り組み始めたのがSES(システムエンジニアリングサービス)事業です。昨年8月に派遣事業の認可を取得し、クライアント先での常駐支援を開始。これは、若手社員が実務経験を積む“武者修行”の場としても位置づけており、人材育成と事業拡大を両立する戦略的な取り組みです。まだ規模は大きくありませんが、将来的には事業の柱の一本として育てていく方針です。
編集部:KDSならではの強みは何でしょうか?
徳村社長:やはり同じKFGの肥後銀行や鹿児島銀行との連携です。企業開拓という面では、両行の取引先である地元企業が私たちのアプローチ先となります。両行の行員が日々経営者とお会いし、様々な経営相談を頂く中には、ITを導入することで売上拡大や業務の効率化に貢献できる事案が多くあるわけです。地元企業や自治体のニーズを的確に把握し、きめ細やかなソリューションを提案する「地域密着型」のサービスが最大の強みであり、多くの顧客から厚い信頼を得ていると感じています。特に、DX支援では、単なるシステム導入にとどまらず、業務プロセスの見直しや業務改革まで踏み込んだコンサルティングを行っており、現在約5,000社とお取引をいただいております。
DX推進と全国展開で描く、2030年ビジョンと新たな成長戦略
編集部:今後の事業展開についてお聞かせください。
徳村社長:私たちが目指すのはKFGが掲げる2030年ビジョン「地域価値共創グループ」としての役割を果たし、地域密着型のデジタルソリューションカンパニーとして成長していくことです。
銀行時代からの強みを活かし、システム保守や収納代行サービスといった安定した収益基盤を維持しつつ、ITソリューションをさらに伸ばしていきたいと考えています。まずは熊本・鹿児島に加え、九州全域への事業拡大を進め、地域ごとの課題に即したソリューション提供を行っていきます。特に、「KDS学校会計クラウド」や「Crewlog」、「くらモール」などの自社開発したプロダクトは、九州全域さらには全国に展開することで、新たな市場を開拓していけるのではと考えています。これらの取り組みを通じて、従来の銀行関連業務を維持しつつ、新たな収益源の確立を目指しており、地域の中小企業や自治体との連携強化も進めていきます。
編集部:そのために必要なものとは?
徳村社長:まず人材の育成です。DX推進人材の育成や、KFGが定める資格取得プログラムを通じて、専門性の高い人材を育てています。SES事業においては若手社員を中心に、外部企業での実務経験を積ませることで、技術力と対応力の向上を図っています。この経験が、将来的に自社内でのソリューション提案力や開発力の強化につながると考えているからです。
社員教育では、ひとり1資格運動やDX高度人材育成プログラム、Eラーニングの導入や外部研修機関との連携も強化しています。新卒社員に対しては、入社後3か月間のプログラミング集中研修を行い、基礎から実践までをしっかりと身につけさせています。また、DX推進に向けたデジタルイノベーション委員会をはじめ営業推進委員会、経費管理委員会、投資委員会といった委員会を社内に設置し、部門横断的な連携強化と迅速な意思決定体制の構築にも注力しています。社員の当事者意識を醸成し、自ら考え行動できる人材に育ってくれると信じています。
フラットな組織で生まれる成長力、社員と共に創造する未来の会社像
編集部:社風について教えてください。
徳村社長:冒頭にも申し上げましたが、当社は、若い社員が多く勢いがあります。この勢いを継続的な成長につなげるためには、やはり人材の成長が不可欠です。社員には「自ら考え、自ら行動する力」を持って欲しいと伝えています。具体的には「テクノロジーの理解・情報収集力」「自らの頭で考える力」そしてポータブルスキルでもある「プレゼン力や営業力、コミュニケーション力」です。この3つの力は、特にIT業界では、お客様のニーズを正確に把握するためにとても大事になってきます。
また、社内コミュニケーションの活性化を目的に、飲み会やランチミーティングなど、カジュアルな場での交流も積極的に行っています。上下関係にとらわれず、自由に意見を交換できる風土を醸成することで、ボトムアップ型の組織を目指しています。
編集部:その他に社内で取り組まれていることはありますか?
徳村社長:同時に社内のデジタル化も加速させており、業務の可視化や効率化を目的とした管理会計システムの導入も進行中です。RPAの導入やAI活用も推進しています。既にチャットGPTを活用した社内業務効率化の取り組みも進めており、今後はプログラミング自動化など、より高度な分野にも挑戦していく予定です。
働き方改革にも積極的に取り組んでおり、「ライトダウンDAY」などの施策を通じて、社員のワークライフバランス向上を図っています。また、リモートワークの柔軟な導入や、多様な働き方を支援する人事制度の整備も進めています。
評価制度や人事制度についても、時代の変化に合わせてブラッシュアップを重ねており、社員のモチベーション向上とキャリア形成を支援する仕組みづくりを推進しているところです。
編集部:これから求める人物について教えてください。
徳村社長:ITエンジニアの即戦力採用は継続して力を入れていきます。ここ数年、新卒採用を続けてきましたので、若手の教育担当としても力を発揮いただきたいと考えています。
指示されたことをこなしていくだけでなく、自分で新しいことを考えて、実際に自分でやってみる、そんな人材が欲しいですね。これまでは、決まったことを如何に正確・迅速にやるかみたいなことが求められましたし、もちろんそういう仕事も中にはありますけれども、それだけでは将来は描けません。自分で発想できるような、ちょっと変わったことを言うくらいの人材も面白いかなと思います。
まだまだ、技術力を高めていくためにも、これから採用にも力を入れ、社員の育成に力を入れていきたいと考えています。