熊本の未来をつくる経営者
アトラクション数日本一。社員の自主性を育み、従業員満足度の高い会社づくりに取り組む、 グリーンランドリゾート株式会社の松野社長
松野隆徳(まつのたかのり):グリーンランドリゾート株式会社 代表取締役社長。福岡県出身、佐賀大学卒。大学卒業後、1987年に新卒1期生として株式会社グリーンランド(現:グリーンランドリゾート株式会社)に入社、2011年取締役総務部長兼ゴルフ事業部総支配人、15年常務取締役遊園地事業部長、19年取締役副社長などを歴任し、2023年に代表取締役社長に就任。
地元にも愛される 九州を代表する一大レジャー施設。
ココクマ編集部(以下、編集部):九州を代表するレジャー施設ですよね。
松野隆徳社長(以下、松野社長):グリーンランドリゾートとは、総面積300万平方メートルの広大な敷地に建てられた、遊園地・ゴルフ場・ホテル・温泉・ショッピングモール・アミューズメント施設などの総称となります。その中心となるのが、やはり遊園地ですよね。シンボルでもある国内最大級の大観覧車「レインボー」など約80 種類のアトラクションがあり、アトラクションの数では日本一なのです。ちなみに、吊り下げ式の「NIO」、九州最長の「GAO」、立ち乗り座り乗り並走の「ミルキーウェイ彦星・織姫」など、稼働中のジェットコースターだけで も9機種あります。ゴルフ事業では3ゴルフ場72ホール、ホテル事業では、グループ会社(連結子会社)が、グリーンランドリゾートオフィシャルホテルとしてホテルヴェルデとホテルブランカを運営しています。不動産事業では広大な土地を活かすために、既存施設の拡充を含め、周辺施設の企業・店舗誘致を行っています。
また北海道にもグループ会社(連結子会社)を置き、「北海道グリーンランド遊園地」や遊園地に隣接するスキー場「ホワイトパーク」ならびに2つのホテルなど の運営も行っております。
編集部:アトラクションの数では日本一なのですね。
松野社長:実は「グリーンランド」のアトラクションはテナント制をとっており、常に変化し続けられる体制ができています。一部だけテナントを入れている遊園地は他にもあるかもしれませんが、全アトラクションがテナントというのは遊園地では他には無いのではないでしょうか。ありがたいことに「グリーンランド」ではテナント事業者同士が日々切磋琢磨している環境が作れているのです。ある時はライバルとして・・・またある時は同志として・・・、お客様に選ばれるために、絶えずお客様の動向を見ながら変化していかなければという意識になりますよね。中には全国で様々な遊園地で運営されているテナント事業者もありますので、評判の良いアトラクションを提案して下さる事もありますし、気づいた事があればこちらからアドバイスする事もあります。
編集部:テナント制はいつ頃から導入されているのですか?
松野社長:グリーンランドリゾートの土地は元々三井鉱山社が所有していた土地なのですが、石炭から石油へのエネルギー移行が進む中で、1966年に観光果樹園として「三井グリーンランド遊園地」を開業しました。果樹園だけでは天候に左右され経営が安定しないという事で、テナント誘致を開始しました。そこにアトラクションを設置したところ人が集まるようになったのです。そうして徐々に参加企業が増えていき、現在の「グリーンランド」の形となりました 。広大な土地をどう活かしていくかというところからスタートしていますので、結果的にテナント制になったというのが正直なところですが、メリットは大きいと感じています。
隣接するゴルフ場やホテルは「三井グリーンランド遊園地」とほぼ同時期に開業しましたが、グリーンランドリゾートエリアではまだまだ広大な土地を有しています。周辺施設の拡充も含め、サービスにおいても、これからの時代に求められるものを積極的に探究し、実現させていきたいですね。
社員の意識が変わり、利益も大幅改善
編集部:コロナも収束に向かっていますが、来場者数はいかがですか?
松野社長:閉園期間もありましたので、何より寂しかったですね。日々、歓声が響き渡り、お客様の笑顔を目の当たりにできる、臨場感のある職場ですが、それがなくなったわけですからね。少しずつですがお客様が戻ってきて、本当にうれしく思っています。春休み中は全国旅行支援事業の後押し効果もあり、遊園地ならびにホテルなど各施設への来場も回復傾向です。九州の遊園地は、人気のキャラクターショーならびに話題性の高いイベントを適時開催、3月にはHANABIファンタジア~花火新時代の幕明け~と題し、当園史上最大12,000発の花火や西日本初となる360度全方位型花火タワーによる演出、5月には「昭和・平成ライダー集合イベント」などを開催しました。また、新たな飲食テナントの出店やアトラクション・飲食店舗の改修など施設の魅力拡充に取り組みました。北海道の遊園地も、春の遊園地オープンより、キャラクターショーのほか、ご当地アイドルフェスティバルなど、バラエティに富んだイベント開催で集客を図りました。ゴルフ事業も施設の拡充を行うとともに、コース改良ならびにコース整備にも鋭意取り組み、インバウンド客のご利用に大きな回復傾向が見られました。
編集部:大変な局面での社長就任ですが・・・
松野社長:代表取締役と言う責任は感じていますが、気持ちとしては「急がず、気負わず」です。私は1987年に新卒一期生として入社し36年目を迎えました。スタッフとも長い付き合いですから、社長になったからと言って急に何かを変えようとは思っていません。これまで通り現場の声を聞き、社員の自主性を育んでいきたいと考えています。
コロナ禍は経営的に大きなダメージを受けましたが、私自身としては大きな収穫もあったと感じています。それは、社員の意識が変わり、会社が強くなったことです。通常営業だと日々の仕事追われ気づかなかった事にも、時間的にも気持ち的にも余裕ができたことで、いろんなところに気が回るようになりました。この仕事って本当に必要なの?もっと工夫できるんじゃないか?など、業務の効率化や経費削減など、この3年間で100項目くらい改善してきました。社員の意識改革や経営体質が強化された機会だったと思えば必要な期間だったと思えます。社員一人ひとりが売上や原価率を意識し数字で語れるようになったことで、経費削減も進み、利益に関してはかなり改善できています。
若手の意見をとりいれる社風だから、思い切ってチャレンジして欲しい
編集部:どんな会社にしていきたいですか?
松野社長: 最終的にはこの会社に入社して良かった!と思ってもらえるような会社にしたいですね。働きやすさと働き甲斐、社員が成長する機会を提供するのが私の仕事だと考えています。風通し良い社風と厳しさの中での達成感。若手の意見を積極的に取り入れ、失敗を恐れずチャレンジして欲しいと考えています。社内にはDXプロジェクト・女子プロジェクトなど4つのプロジェクトが組織を横断して編成されています。若手主要メンバーにはプロジェクトリーダーを任せ、毎月経営会議の場で発表してもらっています。経営陣に対して直接意見を言える場があるっていうのが良いみたいですね。もちろんすべての意見や提案が通るわけではありませんが、否決されても次回はどんなふうに提案しようか?など、考えることが成長にもつながると思います。新入社員からも「もっとこんなことやればいいのに」「こんな事したい」と言った前向きな意見もでてきて頼もしく思っています。社員一人ひとりが自主的に考え、いろんなことに挑戦できる会社になったらすごいですよね。
編集部:求める人材像を教えて下さい。
松野社長:新卒の定期採用はこれからも続けていきたいと考えています。多様性の時代ですので、こんな人と言うよりは、いろんなタイプ・価値観の方を迎え入れたいと考えています。ただ、この事業が好きだと言う人でなければ勤まらないと思います。世の中が休日の時に働かなければならないし、お客さんに楽しんで欲しいというホスピタリティは必要ですね。子供の歓声やお客さんの笑顔など、ダイレクトに反応を目の当たりにすることができるので、やりがいを感じやすい仕事だと思います。また、社員の適性を活かすためにも、ジョブローテーションは比較的多い方だと思いますし、本人の希望も極力叶えたいと思います。
編集部:研修ではどのようなことをしていますか?
松野社長:入社後3カ月間は研修期間となります。まず熊本で年間でも最大規模の春のイベントを経験し、続いて九州のゴルフ場やホテルなど各事業所での研修、その後北海道の「北海道グリーンランド遊園地」やホテルなどでの研修を経て、総仕上げとして国内各地にあるレジャー施設やホテルを約1週間かけて巡り、熊本に帰って来てもらいます。他施設の優れたサービスや施設づくりを視察し、配属後に活かしてもらっています。また、これまでは年に1回海外研修も実施していました。他の施設を視察していて学ぶ事も多いですが、弊社も負けていませんよ。弊社が行動指針に掲げるCSCS(清潔・公正、迅速、対話・報告、安全)に則って安全・安心にお楽しみいただくことはもちろん、お客様に感動のサービスやおもてなしを心掛けています。