熊本の未来をつくる経営者

創業78年、菓子卸の枠を超えて新たな挑戦をつづける、アングルトライホールディングス株式会社の宮尾社長
宮尾寿彦(みやおとしひこ):アングルトライホールディングス株式会社 代表取締役。1976年熊本市生まれ。熊本学園大学附属高等学校卒業後、単身豪州へ。国立ウーロンゴン大学商学部卒業後、株式会社サンエス(現 三菱食品株式会社)へ就職。2003年まるや商事株式会社に入社。2006年に3代目代表取締役社長に就任。22年アングルトライホールディングス株式会社代表取締役に就任、現在に至る。
地域を支える“食”のプロデューサー
ココクマ編集部(以下、編集部):事業内容を教えてください。
宮尾寿彦社長(以下、宮尾社長):アングルトライホールディングス(株)は、「まるや商事(株)」「かくやフーズ(株)」「アングルトライ(株)」などグループ計6社の持ち株会社として2022年に設立しました。アングルトライグループは、”食”を通じて、全国各地のメーカー・販売店・消費者の架け橋として事業を展開しています。「日々の喜びの創造と健やかな暮らしに貢献する」という創業理念をベースに、仕入れ先のおかげで商い、お得意先のおかげで繁盛、従業員のおかげで盤石という「おかげ三訓」をグループ全体の柱に据え、持続可能で幸せな暮らしを支える存在となるべく努力しています。
編集部:グループ各社の役割を教えてください。
宮尾社長:中核企業である「まるや商事(株)」は、単なる菓子の卸売業ではなく、「お菓子の卸プロデュース力」を強みに全国の小売店に向けた提案型の営業活動を行ってます。「今、何が求められているか」「どんなお菓子だと手にとりたくなるか」などの消費者ニーズを基に、魅力的な商品を提案するだけでなく、買い場(売り場)づくりも含めてプロデュースしています。
※当社では「売る」よりも「買っていただく」というスタンスを大切にしてきましたので、売上合計も、「自分たちが売った分」ではなくて、「お客様が買ってくださった合計」と考えています。
また、かくやフーズ(株)は地域資源を生かした商品開発・製造・販売を行っています。九州産のゆず皮を使った砂糖漬け「ゆずのまんま」や九州産のショウガを使った「しょうがのまんま」など、新たな食品ブランドの創出に力を入れています。アングルトライ(株)は、飲食小売をはじめとしたラボ機能を持ち、最終消費者と直接つながる場を運営することで、現場の声をリアルタイムで反映した商品企画や改善を実現しています。
このように、企画、開発、流通、販売までをグループ内で完結できる体制を整えることで、より高い付加価値を提供するビジネスモデルを構築しています。また、各社の強みを活かしながら連携を深めることで、変化の激しい市場環境にも柔軟に対応し続けています。
編集部:業績好調の要因は?
宮尾社長:卸の立ち位置だからこそ、お客様の声を間近で聞ける点が大きな強みです。メーカーさん、小売さん双方の課題やニーズをキャッチし、スピーディーかつ柔軟に対応しています。
また、弊社は常に「変化を恐れず、挑戦を続ける」ことを大切にしています。過去の延長ではなく、未来を自らの手で切り拓く姿勢が必要だと考えています。実際に、卸業の枠にとらわれず、商品のブランディングやマーケティングにも積極的に取り組んでいます。
例えば、地域の食材を活かした新商品開発では、生産者の想いを丁寧にヒアリングし、それを消費者に伝えるストーリーを設計します。この“物語”のある商品づくりこそが、まるや商事の強みでもあります。熊本・九州の豊かな自然や文化と結びついた商品は、国内外のマーケットでも高い評価を得ています。
「九州ブランド」を世界で通用するものに育てていきたい
編集部:どのようなビジョンを描かれていますか?
宮尾社長:「九州・熊本の価値を世界へ発信する」ことです。特に一次産業の可能性に強く注目しています。熊本の自然が育んだ農産物や食材にはまだまだ多くの可能性が眠っています。これらを活かして、加工品や冷凍食品、調味料など多様な商品をプロデュースし、国内外へと展開していきたいと考えています。実は以前、台湾で仕事をしていた経験があるのですが、「北海道」とつくだけで商品の反響が大きく変わるのを目の当たりにしました。これと同じように「九州ブランド」を世界で通用するものに育てていきたいと思っています。
編集部:実現のために、今どのような取り組みをされていますか?
宮尾社長:商品の開発体制を強化しています。東京をはじめとした都市部から複業プロ人材を登用し、現場の企画会議などにも参加してもらっています。外部の視点が入ることで、社内では気づけなかった課題や可能性が見えてきます。これまでは現場の感覚や経験に頼っていた部分が大きかったのですが、今ではデータ分析やマーケティングをベースにした戦略へと変わりつつあります。卸業という枠を越えて、“食”を軸とした総合プロデュース企業へと進化していくことが、私たちの次なるビジョンです。
編集部:複業プロ人材の活用は熊本では珍しいですね・・・
宮尾社長:「チイキズカン」というサービスを導入し、複業プロ人材との接点を持つことができるようになりました。単なる外部委託ではなく、社内メンバーの一員として関わっていただき、私たちのビジョンや価値観を共有した上で、一緒に走ってもっています。例えば、デジタルマーケティングのプロとは月に2回ほどの定例会を実施し、マーケ戦略やブランド設計の改善に取り組んでいます。また、小売のプロや商品企画のプロとも連携し、現場のスタッフが直接アドバイスを受けられる環境を整えました。彼らの経験や視点は、まさに“外部の知見”そのもので、これまで見えていなかった課題や新たな価値に気づくきっかけとなっています。
さらに、今後はDXによる業務効率化やデータ活用にも力を入れていく予定です。デジタルの力を活かして、より効果的な商品提案やマーケティング活動を展開していくことで、企業としての競争力を一層高めていきたいと考えています。
最終的には、「まるやがプロデュースした商品なら間違いない」と思っていただけるような信頼あるブランドを確立することが目標です。そのためにも、これからの30年を見据えて、しっかりと足元を固めつつ、新しい挑戦を続けていきたいと考えています。
編集部:「純米大吟醸を使ったマルヤの梅酒」も面白いですね。
宮尾社長:熊本の地場の酒造メーカーさんと共同開発しました。最上級ランク「純米大吟醸」の日本酒に九州産の梅をじっくり漬け込んだ自信作です。これからは九州のメーカーとタイアップをして、お菓子はもちろんのこと、地域の冷凍食品やお酒を新しい形で広めていくことに注力していきたいと思います。もう少し先の未来では、店舗を持つグループ会社とも連携して、お客様の声を活かした商品開発&展開にチャレンジしたいと思っています。
「素直さ」と「感謝の気持ち」をもち自分らしく働いてほしい
編集部:オフィスもきれいになりましたね。
宮尾社長:25年4月に本社オフィスをフルリノベーションしました。何とかしたいと常々考えていましたので、やっと着手できましたし、社員の評判も良いですね。デスク間の距離を広めにとり、リラックスできる空間づくりを意識しています。また、集中して業務に取り組めるよう、ミーティングも必要最低限にし、時間を有効活用できる環境を整えています。決まった時間に集まるのではなく、必要に応じて自発的に集まる、そんなスタイルが自然と根づいています。社員一人ひとりが主体的に動くことで、より柔軟でスピーディーな対応ができる体制になっていると感じています。DX推進や年間休日130日の導入(数年後)などにも取り組んでおり、ライフスタイルに合わせて効率よく働けるよう配慮しています。
編集部:組織づくりの点で意識されていることはありますか?
宮尾社長:社員の自主性とフラットな関係性を大切にしています。役職や年齢にとらわれず、誰でも自由に意見を言える雰囲気づくりを心がけています。個別面談などでも、社員が本音を語ってくれることが多く、それが組織としての強さにもつながっていると感じます。
また、弊社では「守破離」の精神も大切にしています。まずは既存のやり方を守り、しっかりと基本を学んだ上で、新たな発想や方法を取り入れ、自分なりのスタイルを築いていく。そうした段階を経て、一人ひとりがプロフェッショナルとして活躍できる環境づくりを目指しています。
だからこそ、受け身ではなく、自ら動いて考え、行動に移す「主体性」が求められます。弊社の価値観である「とにかく早く動く」も、その一環です。動くことで新たな経験が得られ、次の成長につながります。
編集部:求める人物像は?
宮尾社長:私たちが最も大切にしているのは、「素直さ」と「感謝の気持ち」です。学歴や年齢、性別は問いません。社内には多様なバックグラウンドを持つ社員がいますが、共通して言えるのは、みな一生懸命に自分らしく働いているということ。そんな中で、他人の意見を素直に聞き入れられる姿勢と、支えてくれている周囲への感謝を忘れない心を持った方と一緒に働きたいと思っています。また、弊社では「失敗を恐れない」文化を大切にしています。成功体験よりも、失敗の中に価値があると考えており、失敗したとしても、そこから何を学び、どう活かしていくかが大事なんです。失敗を責めるのではなく、むしろ歓迎する風土があるので、安心して挑戦してもらいたいです。何かを成し遂げたい、自分を試したいという熱い想いを持った方であれば、きっと環境は合うはずです。私たちも、そんな方との出会いを楽しみにしています。
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