熊本の未来をつくる経営者
企業合併で資金調達、積極採用で熊本への貢献を目指す、アルサーガパートナーズ株式会社 フロンティアビジョンスタジオの渡邉取締役
渡邉直登(わたなべなおと):アルサーガパートナーズフロンティアビジョンスタジオ 取締役。熊本電波工業高等専門学校卒。2003年(有)フロンティア・ビジョン・システムズを設立、08年フロンティアビジョン(株)に組織変更。21年にアルサーガパートナーズ(株)と合併し取締役に就任。趣味はゴルフ、釣り。
2025年の株式上場を目指し、21年に東京渋谷のアルサーガパートナーズ㈱と合併
ココクマ編集部(以下、編集部):合併され約2年が経過しますがご状況はいかがでしょうか?
渡邉直登取締役(以下、渡邉取締役):2021年に東京のITシステム開発・アルサーガパートナーズ(株)と合併し、同時にアルサーガパートナーズ・フロンティアビジョンスタジオとして再始動しました。
合併を機に、WEBマーケティングとシステム開発の部署を新設、これまでのWEB制作会社だったところからシステム開発、運用とWEBに関してワンストップでソリューションを提供出来る会社に進化したように思います。社員は倍の70人以上にまで増えましたし、ナショナルクライアントとの取引も増えており、売上も倍増と順調に推移しています。
編集部:合併されたのは衝撃でした。
渡邉取締役:私もこれまで合併することなど全く考えていませんでした(笑)。2003年に会社を設立し、熊本のNO1のホームページの納入実績まで育ててきました会社ですからね。
実は、アルサーガパートナーズ(株)の社長は私の従兄弟なんです。互いに経営者として切磋琢磨してきた関係です。アルサーガパートナーズ(株)は急成長を遂げ、株式上場も視野に入ってきました。そのタイミングで「一緒に強い会社を作ろう」と誘われ、悩みましたが合併を選択しました。
編集部:決断された決め手は何だったのでしょうか?
渡邉取締役:一言でいえば上場を経験できることです。我々は、DXやITの力で日本の経済をよくしていきたい、僕らの仕事で日経平均を上げていきたいというビジョンがあります。日本の社会課題であり、熊本の課題として地方の衰退という問題がありますので、地元で雇用の受け皿になるような会社として存在感を大きくできるのでは?と考えています。
実際に合併したことで資金調達もでき、人材採用にも積極的に投資ができるようになりました。東京の案件など大型受注ができてきていますので、その意味で首都圏に出ていた人材が戻ってきやすい環境づくりも進んでいると思います。
編集部:上場への想いも強いのですね?
渡邉取締役:起業した当時から、私は死ぬ時のことを考えることがあります。人生を振り返ったときに、個人としての会社ではなく、上場しパブリックな存在となった会社が、自分の死後も残って社会に貢献していくことができるとしたら、私自身が生まれてきた意味があるなあと・・・。
編集部:社内も変化が大きいかと思います。
渡邉取締役:そうですね、順調に成長して、人員も増えてきたのでクレドやミッション・ビジョン・バリューの共有を改めて意識する取り組みをしています。勉強会で議論をした後は、デリバリーを頼んで懇親会を開催、社員同士が対話の時間を取れるようにしています。また、リモートワークなどの環境を確保しつつ、ぬるい職場になっても成長につながりませんので、ルールや規律を設け、バランスをとりながら経営を行っています。
編集部:合併することに対して社内の反応はいかがだったでしょうか?
渡邉取締役:10年以上働いてくれている社員もいるので、会社の体制が変わることにはもちろん不安もあったかもしれません。ですが、幹部社員にはアルサーガパートナーズの小俣社長自らが合併の目的や意義について丁寧に話をする機会をつくり、最終的には全会一致で賛成という状態になって合併を進めるという手順を踏んできました。上場に向けて日々のマネジメントに変化もありますが、大きな混乱なく進められているかと思います。
低コストで高品質なオーダーメイドのワンストップソリューションが強み
編集部:新たな事業体制について詳しく教えていただけますか。
渡邉取締役:インタフェースとしてのホームページの制作から、その裏側に構築される受注管理や顧客管理のシステム、またマーケティングの機能まで一括して受託開発できるのが我々のサービスの特徴です。一括して請け負えるということで、開発のスピードとコストの面で競争優位性があります。これまで実績を積んできた熊本の案件において、生産性の高い開発ノウハウを蓄積しており、それが今強みとして活きています。
編集部:東京と熊本の役割分担はどうなりますか?
渡邉取締役:東京はシステム開発の受託が主です。大手コンサルファーム出身者を積極採用したことで、新規事業としてITコンサルティングも行っていますね。熊本ではWEB制作とWEBマーケティングを中心に、東京と同じくシステム開発の受託もやっていています。おそらくここが今後伸びていくと考えています。東京や九州の中規模以上の案件をニアショア開発していくイメージを持っています。
2022年9月に新オフィスへ移転。積極的に人材に投資をしていく。
編集部:22年熊本オフィスを移転されました。新しいオフィスはいかがですか?
渡邉取締役:社員からの評判はとても良いですよ。だいぶ働きやすい環境が整ったと思います。コミュニケーションの取りやすいフリースペースや卓球台、ゲームなどをする場所、あとは写真スタジオなどの設備があります。広いオフィスなので今はまだ空席もありますが、今後の採用計画を見越すと早々に今のオフィスも人員がいっぱいになります。そのため、すでに天神に福岡支社を立ち上げる予定で動いており、今後は東京・福岡・熊本と3拠点体制を見据えています。
一方でホームページの制作実績は900件を超え、今年中に1000件も射程に入ってきました。出光興産さんの「カーナレッジ」など、大手企業WEBサイトも手掛けはじめていますので面白いフェーズになってきていると思っています。
編集部:素晴らしいですね。とはいえ優秀な人材の採用にはどの会社も苦労されています。貴社で順調に採用が進んでいる秘訣は何でしょうか?
渡邉取締役:採用媒体への広告出稿に関して、東京の採用チームが運用を担当しています。たとえば求人媒体のWantedlyのアカウントは全国何万社の中で200位と高い順位を獲得しています。求人のスカウトも打っていますし、人材紹介会社も10社以上お付き合いをして、東京、熊本案件を掲載しています。手数をかけて圧倒的に露出を増やしたというのが一番大きいのではないでしょうか。これまでは、熊本にこんな会社があるんだよというのが認知されていなかった部分があると思います。
編集部:応募者はUターンが多いなど傾向はありますか?
渡邉取締役:以前は熊本在住の方からしか応募がありませんでしたが、最近は半分以上県外の方になります。熊本出身者でUターンの方が多いのですが、大阪、静岡、茨城など、九州にも全く関係ない方からの応募があり、わざわざ引っ越して入社してくれる人も増えました。
編集部:すごいですね!なぜか聞かれてますか?
渡邉取締役:そういう人は大体、東京より地方で働くことに魅力を感じていることが1点。もう1つはWEB系が未経験だったり経験が浅かったりする人が、この分野にチャレンジしたいという動機が多いです。WEB系に特化した開発会社は全国的にも中々なくて、若い人の中で「この分野でやりたい」、「やれるなら熊本だってかまわない」という気持ちで選んでくれていると思います。
編集部:首都圏から来た人からすると給与面で難しさもあるのではないでしょうか。
渡邉取締役:未経験の方に関しては、前職と比べて下がったとしてもやりますと言ってくれる人もいますし、福岡にいる方などは前職の年収を提示すると問題なく来てくださいます。もちろん人にもよりますが、既存社員も含め、報酬のベースは積極的に引き上げてきていますので、一旦給与が下がっても、入社後に追いついてくるということもあります。当社は年4回昇給を行っているので、活躍された方は1年間に15~20%報酬が上がるという人も実際に出てきます。
編集部:なるほど、活躍次第ですぐに昇給のチャンスがあるわけですね。
渡邉取締役:東京を中心に収益性の高い大型の仕事が増える中で、社員に還元しやすくなってきているという背景があります。20-30代が中心の会社なので、給与はしっかり上げていきたいと思っています。