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【特集/熊本×UIターン】~熊本と東京の暮らしの違いとは~

【特集/熊本×UIターン】~熊本と東京の暮らしの違いとは~

都会への執着って何だったのか?熊本にUIターン転職したことで、何を得られた(または失った)のか?
株式会社パーソナル・マネジメント フェローの新改氏と株式会社再春館安心安全研究所の長崎氏に、東京と熊本での暮らしや仕事について語っていただきました。

■長崎望さん/株式会社再春館安心安全研究所 経営管理本部 本部長
1984年生まれ、大阪府出身。大学を卒業後、シャープ株式会社に入社し太陽光発電システムの営業職として約5年半従事。その後、ソフトバンクグループであるSBエナジー株式会社へ転職し、自然エネルギー発電所の開発業務や、新規事業である電力小売り事業の立ち上げに従事。約3年間勤めた後に、2016年に熊本へのIターンを決意。

■新改敬英さん/熊本学園大学大学院会計専門職研究科准教授、博士(経済学)、米国公認会計士
株式会社パーソナル・マネジメント フェロー
1974年生まれ、熊本県出身。大学卒業後、国際会計事務所で経理や財務、経営分析等の経験を積んだ後、上場企業の経営戦略タスクフォースメンバー、外資系企業の経営企画部部長として、全社的な経営戦略の策定や業務改善、社内調整や社長特命案件など経営に近いポジションで幅広く業務を遂行。その後、2009年に熊本へのUターンを決意。

-都会での子育てがイメージできなかった

編集部:長崎さんは熊本に移住してもう5年ですね?

長崎さん:そうですね、首都圏を離れたときの感覚はもう忘れてきてしまっていますね。執着が離れてきたというか…。先週末に、子供3人と「あそビバ(※阿蘇内牧ファミリーパーク)」に行ってきたんですよ、帰りに家族湯(1,600円)入って…。首都圏ではまず無理でしたね、物理的にも気持ちの余裕的にも、気軽に子供たちと出かけるなんて…。毎回、思うんですが「豊かさ」の基準が明らかに違うことを実感しています。

編集部:もともと地方移住は考えていたんですか?

長崎さん:熊本に移住した理由は「妻の実家」があったからです。私自身は大阪出身で、昔から田舎の暮らしに興味があったのは確かです。ただ単なる田舎への憧れではなくて、首都圏における子育ての仕方が当時はイメージできなかったのです。

実は、新卒で就職した会社の初任地は熊本だったのですが、当時は独身だったこともあり熊本に配属されたことには不満があり、早く東京拠点に呼ばれるために仕事を頑張っていました。結果として、東京へ異動が出来たのですが、結婚して、子供が生まれ、妻の実家に帰省するたびに、熊本の良さを感じていましたし、子供を育てるなら自然の中でのびのび育てたいと思うようになったのです。東京なら東京で楽しくやれたと思うんですが、熊本の良さを知っちゃいましたからね(笑)。

新改さん:数年前に、ある学会が滋賀大学の彦根キャンパスであったんですよ。彦根は城下町ですごく良いところでした。でも住むかといわれたらどうかなあ?僕は出身が熊本でいわゆるUターン組なんですが、熊本以外の地方で働く選択肢はないかもですね。

僕みたいなUターンのケースは、「もともと地元」っていう理由があるので、あまりリスクはないと思うんですよ。でもIターンやJターンはある意味リスクがありますよね。完全移住が上手くいかないケースも良く聞きますし。長崎さんはどう思いますか?

長崎さん:地縁がないところへの移住というのはなかなか難しいかもしれませんね。何か理由やルーツがないと…。この4月に当社に転職された方がいますが、やはり転職(移住)の理由は家族でした。

新改さん:「最初から熊本に行きたい」というのと「行きたい会社がたまたま熊本だった」という2つのパターンがあると思いますが、長崎さんはどちらでしたか?

長崎さん:僕は「最初から熊本に行きたい」でしたね。

-熊本への転職を決断できた理由

編集部:長崎さんは、東京にいた時から比べると給料も下がったわけですよね。奥さまの出身地だったとはいえ、どうして熊本に転職することを決断できたのですか?

長崎さん:自分の好きなように生きたかった、というのが大きいですね。僕は新卒でシャープに入社したのですが、全国転勤が前提でしたので住む場所を自分では決められませんでした。2社目のソフトバンクも、ずっと頑張ろうと思ったら「東京ありき」になってしまうので、やっぱり好きなところに住めません。

「住みたい場所に住む」という選択肢がある生活を手に入れるためには、どこでも通用する人間になる、という強い気持ちを持ってチャレンジすることが必要なんだと思いました。要は自分が出せる付加価値次第かなと…。すぐには無理かもしれないけれども、自分がやっていることに価値がついていけば、働く場所がどこであっても給料はついてくると思っていました。

新改さん:とはいえ、同じ価値を提供したとしても、東京と地方ではそれに対する「値付け」が違うというのは事実ですよね。そこは気にしなかったんですか?

長崎さん:給料は「貰うものではなくて稼ぐもの」という感覚ですし、早く自分が提供できるものに価値が付くようにしたかった、というのはありましたので、あまり不安はなかったですね。自分が貢献出来るものを、ちゃんと見つけて発揮が出来れば、報酬面については後からついてくるでしょと漠然と思っていたところもあります。その頃から、副業みたいな話題も多くありましたし、本当に困ったらどうにでも方法はあるでしょとも思ってましたね。


-社会の変化や価値観にあった理想の働き方とは

編集部:最近、東京の企業に所属しながら熊本でリモートワーク、という選択肢も出てきています。「熊本で働く=転職」だけではなく、副業やジョブケーションなど多様な働き方が出てきていますが、お2人はどういう印象を持っていますか。

長崎さん:リモートワークは仕事によるのかもしれませんね。リアルでのコミュニティを必要としない仕事であればよいのでしょうが…。熊本へ転居するという目的は達成することができるとは思いますが、一時的な満足にしかならないのではないかと感じます。私自身、体を熊本に置くことが目的ではなく、折角ならば、地方の企業をストレッチさせたいと考えていましたので、皆で場を共有して同じ目標に向かう、という組織的な働き方を選びました。というか当時はリモートワークなんてなかったですし…。

新改さん:いま企業が取り組んでいるリモートワークが上手くいっているかどうかわからないし、これからも上手くいくかどうかはわからないというのが僕の考えです。どうしてもカルチャーは分断されると思うんですよ。あと、リモートワークだと業務が個人ベースになって、誰かのアウトプットを引き継いで自分のアウトプットを誰かに渡して…という社内「納品」ラインができますよね、そうなると、低品質の仕事や遅延が発生したり、あるいはその納品ラインに参加できていない社員がいたりと、言葉は悪いのですが、チームでカバーできていた分、個人のクオリティの低さが露呈しちゃう可能性がありそうです。だから、実はリモートワークで継続して価値を出し続けるのって、結構難しいんじゃないかとさえ思っています。

長崎さん:先日東京のベンチャー企業の方と話した時に、「PCとネットがあればなんとかなると思ってやってきたが、そうではなかった。だから基本的に理由をつけて出社させる、というマネジメントに変えている。」とおっしゃっていました。そういう会社もあるんですよね。とは言え、いまのコロナ禍みたいに満員電車にも乗れない状況になったら、出社すること自体がすごいハードルになります。それがアウトプットにどう影響するか。

新改さん:リモートワークって、少人数でやる分には何とかなるような気もするのですが、働き方としてサスティナブル(※持続可能)かどうかは別の話だと思うんですよ。リモートワークにしても副業にしても、継続して成功するためにはかなり高い能力が必要じゃないかなと思っています。

-地方だからこそ実現できる自分だけのキャリアを求めて

編集部:若い頃は、とにかく東京に行きたかった2人が地方に転職するに至ったのはなぜですか?ある程度やりたいことを達成できたという事なのか、それとも何か価値観が変わるような事があったのか…。私の感覚としては、何かの執着から解放された時に一歩踏み出せるのではないかと感じていますが…。

新改さん:僕は通勤にかなり疲れていました。横浜から秋葉原の近くまで、片道1時間半くらいかかっていましたね。35歳で経営企画部の部長で、仕事で相当疲弊していました。熊本に帰省した時にときに、ここが転職の最後のタイミングだと思ったのを覚えています。

通勤時間を短縮のために引っ越す選択肢もあったのですが、平日東京で働いて週末横浜で遊ぶ、という生活を当時は最重視していました。地元の友人も多かったですし。それがとうとう限界になった、というパターンですね。横浜という場所に執着がありました。

でもいま思えば大したことない執着ですね。熊本に帰ってきても別に出張で行けるし、今では「まあいいか」って思えるようになっています。熊本にいても、東京の企業さんと仕事したり、日本中の研究者と共同研究したりできます。あと、完全に熊本から出ないわけでもないです。いつでも自分の意思で出張に行けますし、実はまだ横浜の家は残してあるんですよ。

長崎さん:ソフトバンク時代に「自分の意思や熱量では周囲に勝てない、ついていけない。」と感じた時がありました。自分にとってのベストは何だろうと考えたときに、地方の企業でできることにトライして貢献したいなと。だから、今いる会社で場所を移して頑張る、ということではなくて、地方の企業がその地域で発展していくためにそこに居る人としてやるべきことをやりたいと思いました。これは東京に居ながらすると言うこととは、明確に違います。

東京から熊本に仕事の場を移すと決めたときの周囲の反応は様々でした。東京の第一線というフィールドの魅力もあり、本当にいいの?隠居生活をするには早いんじゃないの?(笑)と、サボりに行くみたいなリアクションもありましたね。たしかに、これまでのコミュニティが無くなったとしても、ちゃんと成長できるかと言う点に心細さはあったので、このあたりについては、悩んだ部分もありました。

新改さん:今はFacebookなどのSNSで、緩いつながりを維持できるので、その点は解消できそうですよね。僕は、熊本に住むことによる情報の遅れに対する危機感はかなりありました。「Udemy」や「MOOC」、「グロービス学び放題」などのオンライン学習コンテンツの充実はかなり大きいです。

こういったテクノロジーの進化で、東京に無理して住む必要性は下がってきていると思います。今はまだリアルの方が価値は高いかもしれませんが、これから徐々にその価値観も変わってくると思います。拠点や地域に依存しなくても成果を出していく文化ができていけばいいなと思っているところです。

-地方移住による機会損失と実現した利益とは・・・

編集部:実際、熊本での生活はいかがでしょうか

長崎さん:自分自身では満足していますが、地方での生活が持つポテンシャルという観点からすると、まだ想像の域は超えていないですね。とはいえ、自分がまだ尖ったことをできていないので、それをどんどんやっていきたいと思っています。

新改さん:Uターンで帰ってきても、結局1年で東京赴任になりましたし、研究者になった今でも東京とは繋がっています。だから「熊本に帰ってきた」と言えるのか分からないんです。ただ、もともと目標を決めてプランを作って、着実に実行するタイプだと自覚していますが、結果的に熊本に居たからといって達成できなかったことはありません。やりたいことをやるための場所が東京や横浜だと思っていましたが、そうでもなかったのは間違いないです。

あともう一つ、振り返ってみると、僕が最初にUターンした10年前の熊本には、経営の勉強をする機会はそれほど多くなかったかもしれません。最近いろいろな企業の経営者の方と議論する機会をいただいているのですが、認知度は低くても経営的に独自の取り組みをしている、面白い企業が熊本にもかなりあるということが分かりました。表に出てこないことが多いだけですね。素晴らしい取り組みが外に出る機会がないのは、本当にもったいないと思っています。

長崎さん:僕は熊本の生活には満足していますね。やっぱり、生活の質は首都圏と格段に違います。歩いて5分のところに昆虫が採れる雑木林があるなんていうのは、首都圏だと新幹線通勤ができるトップ層のみしか経験できないことですよ。会社での拘束時間が多少長くても、バランスが取れているので苦痛になりません。

新改さん:僕は大学の教員なのでちょっと事情が違うかもしれませんが、平日に加えて土日に仕事があったとしても、基本的に自由な時間に好きな仕事ができる環境があります。地方移住による機会損失と実現した利益を比較してみると、利益の方が大きいのは間違いないです。東京じゃないとできないことというのは、意外と少なかったですね。

長崎さん:熊本に移住して数年が経って、既に前職の給与額は超えました。もともと移住で固定費は減っていたので、さらに可処分所得が増えました。地方移住に伴う経済的な不安は、ある程度コントロールできていると感じます。確かに移住には不安がありますよ。例えば、大手企業の人が同じ処遇で地方移住、というのはまず無理でしょう。だから諦める人が多いのも事実だと思います。

新改さん:長崎さんのように、地方で中小企業のマネジメントポジションを経験できるのは確かに魅力ですね。でも勘違いしてはいけないのは、能力が低くて良いということではない、ということですね。視点が変わるだけで、仕事自体のレベルは、超大手以外とはさほど違いはないでしょう。大都市圏で上手くいかない人は、地方でも上手くいかないと思います。長崎さんはきっと大都市圏でも成功できたと思いますよ。

最後に一言

長崎さん:熊本に来てからの5年間の中で良かったのは、「熊本だからこれは無理でしょう」という先入観を変えていく人が周りにいて、自分が創りたかったことや考えたかったことが実現できていることです。成し遂げたいと思って実行してきたことが着実に実を結んできているので、より一層努力していきたいです。

新改さん:熊本に2度目のUターンをしてまだ3年目ですが、多くの面白い試みや魅力的な会社、そして優れた経営者が存在していることを知りました。いまでは、最初にUターンした12年前に自分が欲しかった、社会人が学ぶことのできる場所を自分で創れるようになりました。

移住&転職を取り巻く環境は、12年前と比べて確実に良くなっています。優秀な人材に参加してもらうチャンスは広がっているということです。なので、熊本の企業さんの側からどんどんその魅力を発信していただければと思っています。

【インタビュー】
・長崎望さん/株式会社再春館安心安全研究所 経営管理本部 本部長
・新改敬英さん/熊本学園大学大学院会計専門職研究科准教授、博士(経済学)、米国公認会計士
株式会社パーソナル・マネジメント フェロー

※写真撮影時のみマスクを外しています。

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