熊本の未来をつくる経営者
攻めの経営で「強い産交」を取りもどす。4期連続増収、5年後に売上倍増を目指す九州産業交通ホールディングス株式会社の織田社長
織田 正幸(おだ まさゆき):九州産業交通ホールディングス株式会社 代表取締役社長。広島県出身。大学卒業後、株式会社東京クマヒラに入社。1996年に株式会社エイチ・アイ・エス(HIS)入社後、関西営業本部長、HIS JAPAN VP、国内旅行営業本部長、常務取締役などを歴任。2025年12月より現職に就任。
4期連続増収の勢いに乗り、「攻めの経営」へ舵を切る
ココクマ編集部(以下 編集部):グループの事業内容や現在の状況についてお聞かせください。
織田正幸社長(以下 織田社長):九州産交グループは、自動車運送事業(路線バス・高速バス・貸切バス)・食堂売店事業・旅行業・不動産賃貸業・整備事業・航空代理店業・海上運送事業・シェアードサービス事業・コンサルティング事業など、9つの事業グループ、10社の事業会社があります。主要グループ会社としては、九州産交バス(路線・高速・貸切)、九州産交ツーリズム(旅行・航空)、九州産交ランドマーク(不動産管理)、九州産交リテール(飲食・売店)などがあります。各社ともに業績は好調で、2019年9月に開業した「SAKURA MACHI Kumamoto(サクラマチクマモト)」は、月間約120万人のご来場をいただき、キャッシュベースのEBITDAでもプラスに転じました。グループの連結売上高は約253億円で4期連続増収を達成しています。
各事業のノウハウや強みを横断的に連携させる「産交オンリーワンプロジェクト」を推進しており、バス事業と観光事業の連携、路線バスを活用した貨客混載、SAKURA MACHI Kumamotoとの協働など様々なシナジー施策が進行中です。また、HISグループの傘下にあるため、インバウンド誘客においてグローバルなネットワークも活用できる点が強みです。
編集部:このタイミングでの社長就任ですが、どのようなことを期待されているのでしょうか?
織田社長:前の経営陣が事業をしっかりと立て直し、基盤を固めてくれました。コストを削減しながら売上を着実に伸ばすという、守りと攻めの両輪を高いレベルで機能させてきた結果が、この4期連続増収につながっていると思っています。私が着任したのは、まさにその土台をいかし、次の成長フェーズへと移行するタイミングです。かつての九州産交は熊本でも非常に強い会社でした。ホテル経営、グアムへの店舗展開など多角的に事業を展開し、コングロマリット的な存在感を誇っていた時代がありました。つまり、あの「強い九州産交」を取り戻す!これが私の大きな目標であり、使命だと思っています。今は種がまかれて芽が出てきたフェーズ。ここから水をやり、大きく花を咲かせる段階に入ってきたという思いで、積極的に攻めの経営にシフトしていきたいと考えています。投資も含め、新しいチャレンジを仕掛けていくことが、今の私の最大の役割です。

編集部:グループの中で、特に成長が期待できる事業や分野はどこでしょうか。
織田社長:やはりインバウンドツーリズムですね。熊本への訪日外国人の伸び率は全国トップクラスで、阿蘇・天草・熊本城、そしてワンピースなどのアニメコンテンツへの人気が強力な集客力となっています。台湾は台北・台中・高雄・台南の全主要都市から熊本への路線があり、TSMCの進出による国際的な注目度の高まりも大きな追い風です。インバウンドが伸びれば、バス事業もリテール事業も旅行事業も伸び、グループ全体が引っ張られていく。まさにインバウンドこそがグループ成長の中核エンジンです。
「選ばれる存在」へ─産交経済圏の構築と九州・全国への拡大
編集部:今後の事業展開や中期的な数値目標についてお聞かせください。
織田社長:数値目標としては、グループ90周年を迎える2032年に売上500億円・営業利益20億円超を目指しています。そのためのキーワードが「産交経済圏」の構築です。熊本に来るインバウンド客が必ずどこかで九州産交にタッチしている─そういう状況をつくりたいのです。SAKURA MACHI Kumamotoを中心に、バス、リテール、ツーリズムと連携したシームレスな体験を提供しつつ、阿蘇や天草などの観光地にはキラーコンテンツとなる大型投資も検討しています。台湾・韓国にはセールス拠点を設けて現地から直接誘客する仕組みも構築していきます。親会社であるHISは世界に136拠点を展開していますので、グループシナジーを最大限に活かして、海外から熊本への送客をさらに強化していきたいと考えています。
また、SAKURA MACHI Kumamotoの独自カラーを磨き上げることも急務です。熊本城に隣接するこの類まれな立地の強みを、まだ十分に活かしきれていない。ファミリーもインバウンドも、SAKURA MACHI Kumamotoに来れば楽しいと言っていただけるような体験型施設へと進化させる。そうすればテナント側からも出店を希望するような好循環が生まれる。「選ばれる存在」になるためには、まず熊本に来る人の体験そのものを根本から変えていくことが出発点だと考えています。

編集部:「熊本貢献企業への推進」というスローガンも掲げていらっしゃいますね。
織田社長:ビジネスとしてしっかり伸びなければ地域への貢献もできません。地域の皆さんに貢献するためには、県外から人を連れてくることが、私たちにできる最大の貢献だと考えています。東京・大阪からの国内観光客、そして台湾・韓国など海外からのインバウンドを確実に取り込んでこそ、大きな飛躍が生まれます。そこに必要なコンテンツはM&Aで取得するかもしれないし、自社で新たに生み出すかもしれない。行政との連携、他社との協業も積極的に進めていき、オール熊本という意識で、観光資源を最大限に活かす仕掛けを一緒につくっていきたいと考えています。鹿児島・宮崎の素晴らしい観光商材はまだ海外のお客様に届いていないと思っています。阿蘇や湯布院だけでなく、南九州を縦断するルートをご提案できれば、熊本を起点とした周遊がさらに拡がります。
自分さえ良ければという発想では絶対にうまくいきません。お客様、地域、そして我々自身がハッピーになれる形を追求し、みんなで熊本・九州を盛り上げる姿勢こそが「選ばれる存在」への本質的な道だと確信しています。最終的には、熊本・九州という枠を超えて、日本全国に名を知られる交通・観光インフラ企業としてのプレゼンスを確立したいと考えています。HISとの人事交流も積極的に推進し、熊本に居ながら全国・世界を相手に仕事ができる機会を増やすことで、グループ全体のポテンシャルを最大限に引き出していきたいと考えています。熊本だけにとどまらず、九州全域を一つの経済圏として捉え、そのすべてのお客様に九州産交の価値を届けることができる体制をつくる。それこそが私の描く「選ばれる存在」の姿です。
「入りたい会社」をつくる─若さと挑戦が組織を変える
編集部:組織づくりや人材育成について、どのような会社にしていきたいとお考えですか。
織田社長:目指しているのは、熊本の学生が「就職するなら九州産交」と迷わず言ってくれるような会社です。熊本を代表する優良企業と並んで、優秀な人たちが真っ先に志望してくれる存在になりたい。そのためには、若くして責任あるポジションに就ける環境を作ることが欠かせません。現在の幹部は50〜60代が中心ですが、40代の社長が誕生しても全く問題ない。それどころか、どんどん実現させていきたいと思っています。頑張れば認められてポジションがつく──そういう事実を目に見える形で示していかないと、若い人のやる気は育ちませんし、会社自体が若返らない。抜擢人事も積極的に進めていきます。

組織面では、各事業会社がそれぞれの競争力を高めながら、同時にグループ全体でシナジーを発揮できる体制づくりが課題です。各社の社長が自社の最適だけを追うのではなく、グループ全体の最大化を意識してマネジメントしてほしい。サッカーにたとえると、個人技の高い選手がチームワークで動くから強いチームになれる。個の能力と組織の連携という両輪を同時に高めていくことが、私の経営の核心にあります。バスの運転士や整備士の不足は深刻で、会社全体の若返りと人材の底上げは今すぐ取り組まなければならない最重要課題の一つです。外国籍の特定技能者の採用にも積極的に取り組んでいく方針で、真面目で能力の高い方であれば管理職になっていただくことも大いにあると思っています。
編集部:人事制度の改革について教えてください。
織田社長:人事制度は今まさに抜本的な改革に取り組んでいます。年功序列的な評価から脱却して、成果をきちんと評価して報いる制度に切り替えていく。頑張った人が正当に評価され、それが給与やポジションに直結するという、シンプルで公正な仕組みを整えていきたいと思っています。事業会社の社長には権限と責任をしっかり持ってもらい、自分の裁量でやり切ってもらう。その代わり、結果が出なければ交代してもらう。組織というのは、甘くなったらダメなんです。それが組織を強くするための一番シンプルな原則だと考えています。働き方の面でも、「この会社で働いて良かった」と心から思えるような環境づくりを続けていきます。賃上げも着実に進め、待遇面でも魅力ある会社にしていかなければなりません。
編集部:求める人物像は?
織田社長:明るく元気で、スピード感を持って仕事に取り組める方であれば、新卒・中途を問いません。Uターンを考えている方や、九州で面白そうな会社を探している方にはぜひ声を大にしてお伝えしたい。九州産交は今まさに攻めの経営フェーズです。インバウンド戦略、M&A、新たな観光コンテンツの創出、デジタル化と、やれることが山積みしています。海外誘客ができる語学力とコネクション、コンサル経験を活かしたプランニング力、広報・マーケティングのスペシャリスト、こういった新しい風を吹き込んでくれる人材を特に歓迎します。「今までと違う何かをやってくれそう」と感じさせてくれる人が来てくれたら、会社はもっと変わっていけると思っています。企業は人なりという言葉は月並みに聞こえますが、まさにその通りで、人材こそが最大の事業リスクであり、同時に最大の成長エンジンです。九州産交の未来を一緒に描きましょう。そんな志の高い仲間が来てくれたら、こんなに嬉しいことはありません。山は高いですが、一緒に登れば必ず頂上が見えてくると信じています。














