熊本の熱量を届ける
これからのキャリアマガジン

永木 海(ながきかい)：合同会社Evoliv（エボリブ）・CEO。上天草市出身。熊本県立大学総合管理学部総合管理学科3年時(2018年)に、学生によるHP制作会社を創業。卒業後も事業を継続し、2021年10月に合同会社Evolivを設立。

熊本・九州の地場企業・官公庁を中心に取引が拡大。熊本・九州だからこその独自のサービスを展開して急成長。

ココクマ編集部（以下、編集部）：事業内容を教えてください。

永木海社長(以下、永木社長)：学生時代に立ち上げたホームページ制作・グラフィックデザイン、映像制作・編集事業を継続しつつ、最近はSNSを活用したマーケティング・コンサルティング・インフルエンサー事業へと事業内容を拡大しています。本格的にインフルエンサーを活用した事業をスタートして約2年、今では九州唯一のインフルエンサー事務所として、熊本・九州在住110名が所属しています。現在進行形で、ご相談・ご依頼を多数いただいており、急拡大しているところです。

編集部：地域特化型SNSマーケテイングとは?

永木社長：東京・大阪・名古屋など都市圏では、企業がインフルエンサーと提携して、SNSによる情報発信や販促活動をするのが当たり前になっていますが、熊本や九州では浸透していませんでした。ただ、興味はあるし、活用してみたいと思ってもどこに相談したらいいのかわからない…という声を聞いていました。ならばと思い、熊本・九州に特化したグルメ・ファッション・観光などをSNSで発信し、活躍しているクリエイターたちと契約し、地域特化型SNSマーケテイング／インフルエンサー事業を立ち上げました。クライアントからのオーダーに対して「エリア×分野」に強い最適なクリエイターをキャスティングできることが当社の強みですね。

編集部：地域にフォーカスするのは面白いですね。

永木社長：「熊本の企業が地元の人たちにPRしたい」はもちろん、「首都圏の企業が熊本に進出するので熊本でのPRをお願いしたい」もできます。逆に「熊本から全国に・首都圏にPRしたい」というご要望の時には、首都圏の提携している大手インフルエンサー事務所をご紹介することも可能です。

また、当社では付加価値のある提案を大切にしています。例えば飲食店のPRの際も、ただ飲食店のPRで終わるのではなく、季節ごとのメニューの発信やイベント告知など、インフルエンサーとのコラボメニューを企画して販売しましょう、といった提案も行います。企業にとって継続的に認知度・集客・売上UPにつながって欲しいですし、クリエイターにとっても活躍の場・フォロワーの拡大につながって欲しい。関わる全ての人々で熊本・九州を盛り上げていければと考えています。

編集部：官公庁や大手企業からの依頼も多いとか…

永木社長：熊本県の公式SNSは弊社が運営させていただいています。菊池市、八代市、山鹿市、津奈木町、上益城郡をはじめ各市町村や地域の観光協会などからもご依頼を頂いています。民間企業ではユナイテッドトヨタ熊本様や鈴木電設様、熊本ホテルキャッスル様などの熊本地場企業を中心に、パナソニック様やヴィレッジヴァンガードコーポレーション様など県外の大手企業からもご依頼を頂いています。

編集部：地方でもSNSが主流なんですね。

永木社長：インフルエンサー事業を始めた時は、地方は高齢者も多いし、SNSよりもマス媒体の方が圧倒的に強いのかなあ？とも思いましたが、逆にテレビ局や新聞社さんからもご相談をいただくことも多いのです。視聴率を上げたい！新聞を購読して欲しい！など、若い人たちへのアプローチとしてSNSを活用できないかとご相談を頂きました。そこでは、フォロワーを多く持っているインフルエンサーたちと一緒に、番組や新聞の企画に入れてもらうなど露出を増やす取り組みを一緒にさせていただいています。

「自分の力で人のために何かできたら」。熊本地震でのボランティア活動が原点。

編集部：学生時代に起業されたきっかけは?

永木社長：私は、上天草出身で生まれ育ち、熊本市内の高校に進学しました。その高校でとてもお世話になった恩師がいて、「こんな教師になりたい」と思い、教員を目指して熊本県立大学に進学しました。入学したのは2016年4月、熊本地震の年です。地震の時には、住んでいたアパートも被災、自室のドアが開かなくなってしまったんですが、同じ大学の先輩が、ひと部屋ひと部屋「大丈夫か?」と見回ってくれて、自室も外からドアを開けてもらってほっとしたのを覚えています。そこから大学も休講なってしまったのですが、先輩たちから「大学に一緒にいってみよう」と声をかけられ行ってみると、そこには避難してきた人で溢れかえっていました。そんな中、率先して毛布や水を配る先輩たちの姿に強烈なインパクトを受けたんです。それから2～3日、私もボランティア活動を行い、瓦礫の撤去や炊き出しも行いました。その時、「自分の力で誰かのために何かをする、人の役に立つこと」に大きな意義を感じたたんです。これが起業のきっかけであり、原点なのです。

編集部：学生起業家としてどんな事業を手がけたのですか?

永木社長：大学2年生の時には、子どもの支援のためのNPO法人を立ち上げたり、文化財復興プロジェクト遂行のためにクラウドファンディングを活用して資金集めなどを行いました。いろんなプロジェクトを立ち上げ、活動を行う中で、熊本市など行政の方や大学関係者、地場企業の社長さんたちと出会い、交流を持てたことは大きな刺激になりました。

そして大学3年時に、今の会社の前身となるWEB・グラフィックデザイン事業を立ち上げました。元々ものづくりが好きだったのですが、高い技術などはありません。ただ周りを見渡すと、イラストレーターやフォトショップがめちゃくちゃ上手な友人、コーディングやプログラミングが得意な友人がいる！人の力を掛け合わせたら何かできるのでは?…と考えホームページ制作にたどり着きました。やるからには質の高いものを制作していこうと、ノーコードWeb制作プラットフォーム「STUDIO(スタジオ)」を運営しているSTUDIO株式会社さんに即アポイントを取り､社長さんやプロジェクトマネージャーさんにノウハウを教えて頂き、事業を開始しました。当時、ホームページ制作には100万～300万円くらいの費用がかかっていました。「クオリティの高いものを、学生が安く制作します。」をコンセプトに20～30万円でできるパッケージを作成したところ、思いのほか企業からの依頼があり、少しずつですが事業は軌道に乗っていきました。

熊本～九州～全国、そして視野は世界へ。

編集部：今後の事業展開を教えてください。

永木社長：SNSコンサルティングとインフルエンサーのPR事業を柱に進めていきます。創業以来約2,000社とお取引させて頂いていますが、直近1年間では500社くらいの企業様とお取引をさせて頂き、売上でいうと前年比倍増と好調です。

地元熊本・九州では知名度も浸透してきたので、今後は九州各県に営業所を展開したいと考えていますが、同時に海外への展開も視野に入れています。今、中国でも「このインフルエンサーが商品を売ると即完売・売上何億円」など注目されていますが、SNSマーケティング市場は今後ますます伸びていくと予想されています。先日、弊社インフルエンサーにご依頼をいただき、台湾に行ってきたのですが、ニーズと手応えを実感して帰ってきました。
現在、私と営業を担当する社員4名、あとは事務スタッフ、クリエイティブマネジメントスタッフ、デザインやコーディング・編集などは外注スタッフと少数精鋭で進めていますが、案件に対して人材リソースは足りていません。質を高めながら、お客様により満足して頂ける提案をしていくためにも、事業を拡大していくためにも優秀な人材を採用していきたいと考えています。

編集部：事業拡大以外にもビジョンがありますか？

永木社長：それから学生起業家支援などもしていきたいですね。私が熊本で起業した当時、周りに学生起業家なんてほとんどいなかったのですが、東京の友人は「スタートアップサークル50人、起業し全員社員にして何億集めて上場するぞ！」なんて話をしていて、東京との温度感の差を感じていました。若手の経営者だけでなく、タレントになりたいから東京へ…、インフルエンサーになりたいから東京へ…、って流れがあると思うのですが、お金や親の問題などで、東京行きを、そして夢を断念する人もいる。これって日本にとっての損失だよなって思うんです。だから地域に関係なく、学生や若者がチャレンジできる環境・活躍の場をつくりたい。自分が走り続けていたらそれもできるかなって思っています。

編集部：何事にもアグレッシブに挑戦されていますが、その原動力は?

永木社長：この質問、よく聞かれます(笑)。「自分の力で人のために何かできたら」と思い、プロジェクトを立ち上げたり起業に至ったわけですが、思いついたり興味があると即、動いていると思います。
それと、経営者の話を聞くのが好きだし勉強になるんです。大学生時代も1-2年生の頃から先輩たちの就活についていって企業説明会や交流会に参加して社長の話を聞いたりしてました。若いからか、今もいろんな業界の社長さんが声をかけてくれて、ごはんに連れて行ってくださいます。いろんな考え方やノウハウを伺うことで刺激を受け、勉強になります。
それを自分のビジネスにどう落とし込んでいくか？常に考えることで自分もワクワクできるのです。やりたいことはたくさんありますし、どんどんチャレンジしていきたいと考えています。