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400年以上の歴史を持つ「球磨焼酎」ブランドを背負い 人吉・球磨地域を支える高橋酒造株式会社の高橋社長

400年以上の歴史を持つ「球磨焼酎」ブランドを背負い 人吉・球磨地域を支える高橋酒造株式会社の高橋社長

高橋光宏(たかはしみつひろ):高橋酒造株式会社・代表取締役社長。熊本県多良木町生まれ。北九州市立大学卒業後、1978年、高橋酒造株式会社へ入社。製造職・営業職を経て、1997年、5代目代表取締役社長に就任。

日本一の本格米焼酎会社の責任

ココクマ編集部(以下、編集部)熊本の焼酎と言えば「しろ」ですよね。

高橋光宏社長(以下、高橋社長)ありがとうございます。当社は1900年(明治33年)の創業以来、熊本の最南端に位置する人吉・球磨地域で本格米焼酎づくりを行って参りました。伝統の球磨焼酎文化を守りつつイノベーションを推進する。私たちはこの2つを上手に組み合わせることで、伝統的な味わいのなかに個性が光る、数々の製品を誕生させました。本格米焼酎「白岳」「しろ」「金しろ(謹醸しろ)」「銀しろ(吟麗しろ)」、プレミアム米焼酎「待宵」、白岳「あの頃の梅酒」、デコポンストレート果汁入り梅酒 白岳「うめぽん」、日本の蒸留酒「想伝」など、限定商品を含め現在は約10種類の焼酎を展開しています。

また、人吉市内に『球磨焼酎ミュージアム白岳伝承蔵』を開館。本格米焼酎「白岳」「しろ」の魅力とともに、世界に誇れる「球磨焼酎」の歴史的・文化的価値を紹介することを目的とした焼酎見学蔵で、観光客にも人気のスポットとなっています。

編集部 球磨焼酎は400年以上の歴史があると伺いましたが・・・。

高橋社長 球磨焼酎は、人吉・球磨だけで飲まれているお酒でした。その昔、人吉・球磨地域には相良藩の隠し田があり、お米が豊富に取れていたので加工品として焼酎を作っていたのです。以前の球磨焼酎は個性が強く、一般的には受け入れにくい味でした。どちらかというとお土産品としての需要が高く、今日のように日常的に飲まれる焼酎ではありませんでしたね。売上を伸ばすのも難しい品物でした。

昭和49年に業界に先駆けて導入した減圧蒸留技術は業界に革命をもたらしました。自家培養酵母を使った「白岳しろ」は、それまでの球磨焼酎のイメージを変える革新的な商品となり、大幅にマーケット層を広げる事に繋がったのです。

編集部 飲みやすい球磨焼酎はすぐに受け入れられたのですか?

高橋社長 「これは球磨焼酎じゃないね」とよく言われました。ですから当初は「球磨焼酎」ではなく「米焼酎」として世に出しましたが、そこまで売れませんでしたね(笑)。昭和52年に焼酎ブームが起こり、県産酒を飲もうという流れのおかげで当社の米焼酎も売上を伸ばし、結果「球磨焼酎」として広く認められ、親しまれるようになりました。この当時の売上は約2~3億円。焼酎ブームのピークを迎えた平成15年には売上約133億円にまで達しました。

地域の文化を守るために新たなチャレンジも!

編集部 地域からの期待も大きいのでは?

高橋社長 球磨焼酎はスコッチウィスキーやボルドーワインと同じように、世界貿易機関(WTO)から産地呼称を認められたブランドで、国内には4つしかありません。この文化を伝承していくという使命も当社が担っていると思いますし、地元の誇るべき文化をさらに世の中に発信したいと思っています。

球磨焼酎の分野ではトップシェアを誇っていますが、強い危機感は感じています。酒造会社はどんどん減少しています。何も工夫しなければ例外なく潰れる。時代に合わせた飲み方を提案しなければ、生き残れないと感じています。

また、人吉・球磨地域の主産業は建設業と農林業。域外に出荷して外貨を稼ぐ産業は球磨焼酎しかありません。地場経済を支える産業として、背負っているものは違うと思います。

編集部 具体的にどのような取り組みをされていますか?

高橋社長 営業、広報はもちろん、一番力を入れているのはマーケティングです。今はモノを作ることより売ることの方が難しいですからね。マーケティングの動向を見ながら、同じ商品でも品質を変えて行く必要があります。健康志向ブームになれば薄味にしたり、消費者の嗜好に合わせて変化させて行かないとブランドは続きません。「しろ」も当初の「しろ」とは味が全く違いますよ。

日本の飲酒対象も変わってきています。若い人のお酒離れが進んでいますし、最近は健康志向の人が多いので、売る対象についても考えないといけません。そのために熊本市内にブランド戦略室を作って、今後どのように売り出していくか、外部と連携しながらマーケティングを行っています。

今夏、福岡市内に「海の家」を開き、焼酎を炭酸水で割った「焼酎ハイボール」を提案するイベントを実施しました。インバウンド(訪日旅行)客が多く大きな可能性を持つ福岡市で、米焼酎の今までにない味わい方を提案したいという想いからスタートしました。常に海外も意識していて、現在約30か国に輸出しています。焼酎では芋や麦が先行していますが、それでも2番手・3番手に甘んじるわけにはいきません。日本の米で作るスピリッツ(蒸留酒)の文化を、世界に広げたいと本気で考えています。

「酒」について考える、「酒」を飲んで考える。

編集部 求める人物像を教えてください。

高橋社長 これからの時代は自創性・・・自分で創造する・造る・考える力が必要です。誰でもできることは今後AIがやっていくでしょう。お酒を作るにしても、人吉・球磨をPRするにしても、クリエイティブな思考ができれば活躍のフィールドは大いにあると思います。

自創性を磨くためには、とことん考えることが大切。考えた人だけが成功します。「人は考えているようで考えていない」というゲーテの言葉がありますが、実は考えることが一番難しいのです。若い人はたくさん本を読んで、様々な考え方を知った方がいいですね。そして時には飛び込む勇気も必要だと思いますよ。これからの若い人たちがどのように未来を創っていくのか、期待しています。

編集部 高橋社長の考える「酒」とは・・・。

高橋社長 酒は酔っぱらうためのものではなく、人生を考えるためのツールだと思っています。特に私は一升瓶を抱いて寝ていたくらい、物心ついた頃から酒が身近にあったので、なんとなく自分を見直すための一つの手段になっていますね。

今後、社会環境の変化でお祝いだとか何かの節目節目で、お酒を飲むということがなくなるかもしれない。仮にそうなった場合、「じゃあなんで酒を飲むんだ?」という疑問が生まれますね。私は、自分について考えるときや、物思いに耽るときに、横に酒があってくれたらいいなと思います。

だから、「その時に何を飲むか」と考えられるよう、酒のブランドが必要だと思うんですよね。どの酒を飲むかは自分のステータス。日常は日常のものでいいと思うし、「親父が飲んでいたから、これにしよう」という理由で選んでも・・・。私も若いときは、お洒落だと思ってバーボンを飲んでいたけど、全く美味しくなくて(笑)。でもいまはバーボンのハイボールをすすんで飲んでいますからね。「年を重ねたな」とまたしみじみ物思いに耽るわけです。

酒って奥深い・・・。だから何千年も存在し続けているのではないでしょうか。

400年以上の歴史を持つ「球磨焼酎」ブランドを背負い 人吉・球磨地域を支える高橋酒造株式会社の高橋社長

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