月田求仁敬(つきだくにたか):熊本大同青果株式会社・代表取締役社長。熊本市出身。明治大学農学部卒業後、東京中央青果㈱に入社。1984年に同社入社、95年に専務取締役、98年に代表取締役社長就任。
1961年に4つの青果会社が合併し誕生した熊本大同青果。熊本地方卸売市場(田崎市場)の開設事業者として、熊本の「食」と「農」を支え続けてきた。「今は我々が青果物を集めに行かないと、なかなか出荷をしてもらえない。県内市場との競争にも勝たないといけない」と月田氏。市場の役割や競争環境の変化を感じている。農産物は基本的にプロダクトアウトの商材。「作ったものをいかに売っていくかが我々の仕事。普通の農家さんが作った物を一生懸命売る販売代理人だ」と力強く語る。
全国の生産者・JAから青果物の委託を受け、仲卸・小売業者に卸売販売している同社。卸売市場として、1日の取扱量は約450トンと県内最大規模を誇り、青果物の安定供給と適正価格の維持を担っている。委託形式ではあるが、同社社員が生産者・JAへの訪問を通して委託の依頼活動に従事、市場業務の他にも相対販売(仲卸・小売業者への直接販売)を手掛ける。会社内では最新のコンピュータを導入し、セリの入力作業もタブレット端末を用いるなど先進的な取り組みが進む。2013年には、「日本経営品質賞(JQA) 経営革新奨励賞」を受賞。経営全体の品質を評価する表彰制度で、「今までやってきた人づくりのベースができてきた。社員のベクトルがすごく揃っていることを評価いただいた」と月田氏。今後は、全国に販路を広げていき、生産者から見た顧客価値を高めていく方針だ。
付加価値を高めたブランド野菜「お野菜百科」(化学合成資材の使用を半分以下に抑えた特別栽培農産物)は、「大同青果といえばお野菜百科」と同社の代名詞になりつつある。生産者と協力しながら安心・安全でおいしい野菜の生産を進めていく。2013年には別会社を設立し「お野菜百科」を原料にした乾燥・粉末野菜「野彩八巻」の製造・販売を開始。農産物のさらなる消費拡大と生産者の所得向上を目指し、販売先は大都市圏を中心に約100店舗まで拡大している。
社内では懇親会やクラブ活動が活発に行われ、コミュニケーション強化につながっている。菊池市のマラソン大会には社長とともに100名近くの社員が参加。「『社長に勝った』『社長も走ったから私も走った』というのがいい」と、社員と積極的に関わりの場をもっている。社員主導による各種の委員会活動も盛んで、CS調査委員会(お客様満足度を測る)やES向上委員会(社員の満足度を測る)などさまざまな委員会が運営されている。リクルート委員会が中心となり運営する採用活動では、会社説明会に社員が参加。仕事内容ややりがいを語る中で、会社のよい部分を再認識する場につながっている。


根菜2部 柿本 亮さん
新卒で入社し4年目の柿本さん。土物関係の野菜(玉ねぎ・じゃがいも・人参など)を扱う根菜2部に所属、しょうがと蓮根を担当している。取扱量のアップを目指し、県内全域のみならず長崎、宮崎に足を運ぶことも。担当先は約100件。既存取引が中心ではあるが、「新規の農家さんにも大同青果に青果物を出してもらえるように、何回も訪問してメリットの説明や熱意をぶつける。訪問できない日はこまめに電話をして、信頼関係を作るようにしています」と頼もしい。既存の農家には、市場状況の説明や出荷時期のアドバイスを通して、良好な関係を築く。「ミッションは取扱髙を増やすと同時に売上高を増やすこと。売り先(仲卸業者や加工業者)も自分で開拓していかないといけない」という状況の中で、自分のアイデアを営業活動に活かし、入社2年目には新規獲得件数が評価されて年間の「優秀社員賞」を受賞した。
入社前は「市場」や「セリ」のイメージが強く、「営業」のイメージがつかなかったという。「入社してみると、人と人とのコミュニケーションが大事だと思った。日頃から生産者の所や農協さんに行き、担当者と話をしたり、仲卸さんとも普段からこまめにやりとりをしています」。仕事のやりがいは、「野菜が高く売れたときに、生産者や農協さんから『柿本さん、頼りにしとるけん、あとは任せたよ』と信頼していただいたときです。安く売れたときは厳しいことも言われるが、その分きつい状況で売れたときは喜ばれます」。社内の雰囲気は、「社長がけっこう話しかけてくれて距離感が近いです。人柄がよい人が多く、支え合える職場です。社員同士のレクレーションも多いですよ」。今後の目標は、「大同青果を背負っていける人材になれるようにがんばりたい」と語ってくれた。
JQAへの取り組みを通して、売上・利益を上げつつ「お客様への顧客価値の提供」「社員をどうしてあげたいか」「会社独自の能力」「社会との関わり」という4つのビジョンを具体化していく。そのために力を入れているのが採用や人づくり。「社員がちょっとだけ損をして、犠牲を払ってお客様にいい思いをしてもらう。そうすると『ありがとう』が返ってきて、社員のやる気が上がる」と、“小さな自己犠牲”の意識を基本に顧客・社員双方の満足度を高めていく。「次の社長、その次の社長とずっと成長していくことができる基礎を私が作る」と今後に向けた抱負を語る。
トマト・ナス・きゅうり・ピーマンなど果菜類が多く採れる熊本。「採れない野菜がないくらい、いろんな野菜ができる」と熊本の魅力を語る。夏場も高冷地・阿蘇を控え、年中野菜が採れる野菜栽培に適した地域だ。規模の小さな野菜生産者を中心に取り引きを行う中で、「生産者の方々の所得アップを図ることが我々の使命」と月田氏。生産・販売現場との関わりを密に取りながら、生産者が生産活動に専念できる環境づくりを進めていく。
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